軍手
10代の頃、軍手といえば「手袋」だった。
小遣いから捻出して手袋を買うこともあったが、手袋は紛失リスクが高く、私は何度も手袋を失っていた。
一方で軍手は、めちゃくちゃ安い。安いのに丈夫で、不恰好だがそれなりに暖をとることができる。高校は男子校&運動部に所属していたこともあり、冬はほとんど軍手で事足りていた。
今、私にとって軍手は「手を保護する」ものだ。
引っ越し時に家具を運ぶときや、家の網戸を閉めるとき。軍手があることで安心して作業することができる。
今日、牡蠣の殻をむいた。いただきものの立派な牡蠣は、立派な殻で覆われている。小ぶりのナイフを貝の隙間に忍び込ませて、実を取り出さなくてはならない。
実をいうと、ちょっとだけ指を傷つけてしまった。ナイフを持つ手が滑ったのだ。慌てて軍手をつけて殻むきに興じる。軍手をつけた安心感で、殻をスイスイ向くことができる。これが心理的安全性というやつか(違うか)。
軍手は安い。
5個198円なんてこともある。
ゆえに、ぞんざいに扱われる宿命でもあるのだろう。我が家にも、くたびれた軍手が行き場をなくしている。
だが、軍手があるからこそ、私の生活は成り立っているといっても過言ではない。大袈裟にいうならば、私の、私の家族の命を守っているのが軍手である。
私も、軍手のような存在になりたい。
いや、軍手ほど、ぞんざいに扱われるのは耐えきれないかもしれない。
軍手よ、いつも適当にあしらっていて申し訳ない。これからも、ガシガシ適当に使用するが許しておくれ。愛してるぞ!
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