今年のM-1グランプリ2018は、いわゆるフルブラッドンの音楽性を感じた

※ネタバレ注意※
※敬称略※

土曜日に東神奈川駅の駅ビル「CIAL PLAT」に立ち寄った。
以前僕は横浜市神奈川区に住んでおり、横浜に来たついでに、駅前のニュータンタンメンで遅めの夕飯をとるためだった。何となく本屋に行ったときに雑誌「Myojo」が売られていて、出版不況と言われる昨今、ジャニーズ強しと感心していたのが、思えばネタフリだったのかもしれない。

そう、M-1グランプリ2018年の話だ。
Yahoo!ニュースなどでも取り上げられている通り、今年は霜降り明星という若手漫才コンビが優勝した。和牛、ジャルジャル、かまいたち、スーパーマラドーナ、ミキ(敗者復活組)といった決勝常連のコンビを抑えて、2013年結成の25歳前後の漫才師が優勝を獲得したことに、新しい時代の予感を覚えずにはいられなかった。僕の中でも、霜降り明星はダントツで優勝すべきコンビだったと感じている

結成年数が「ハンデ」にならなかった

もともとM-1グランプリは、芸歴10年以内のコンビに出場機会が与えられていた。
しかし2010年に一度M-1グランプリが放送中止になり、2015年に再開されたときに、中止期間の5年分が加味され、「結成15年以内」というルール変更が為された。

僕にとって、この5年間というのはかなり大きいと思っていて。
10年以内は、いわゆる成長真っ盛りのコンビが登場するけれど、15年以内になると円熟味を帯びたコンビも登場しうる。2014年のTHE MANZAIでは博多華丸・大吉が優勝したが、彼らは当時芸歴24年目。ナインティナインとも同期なわけで、その漫才の実力は他コンビを圧倒していた。スキルそのものだけでなく、博多華丸・大吉の人間味も現れていて、最初から最後までウェルカム感のある雰囲気で、安心して笑えたという側面が強かったように思う。翌年のM-1グランプリで優勝するトレンディエンジェルも面白かったけれど、審査員10票中9票を集めるほどで、圧勝と言えるだろう。

僕はもちろん、博多華丸・大吉の優勝にケチをつけるわけではない。
でも、それほどに芸歴や知名度というのは、芸人にとって有利に働くだろうと思う。M-1グランプリで優勝を獲得したコンビで、前年までに出場経験がなかったのは、ブラックマヨネーズ、サンドウィッチマン、NON STYLE、とろサーモンとかなり限定される(ただしNON STYLEは爆笑オンエアバトルでチャンピオンになるなど、お笑いファンの知名度はもともと高かった)。
笑い飯や南海キャンディーズ、オードリーのように知名度が低くも、驚きをもって歓迎されることはあるかもしれないけれど、当日の突破力 / 爆発力をもって優勝に辿りつけたコンビは、過去にサンドウィッチマンだけだったと僕は思っている。

霜降り明星も、ABCお笑いグランプリで優勝したり、ピンとしてR-1ぐらんぷりに出場していたりと、お笑いファンにとっては決して馴染みが薄い存在ではない。
ただ、事前の優勝予想にも霜降り明星を挙げた人はそれほど多くなかったことから、今回の彼らの優勝はサプライズだったはずだ。結成年数5年という「短さ」が何のハンデにも感じられないほどに、素晴らしい漫才だったと思う。

M-1グランプリは「リアル」な「ドラマ」が面白い

サンドウィッチマン『復活力』でこんなエピソードが語られている。
「ピザ屋のデリバリー」のネタの最中、ツッコミの伊達がネタを忘れてしまったというのだ。(もちろん僕は全く気付かなかった)

「腹たつなぁ、お前。……ムカつくなぁ」
と、伊達がツッコミを、2回繰り返した。
ん!?
2回目の「ムカつくなぁ」は台本にない。
意識的に伊達の視線をずっと避けていたけど、その時パッと目が合った。
伊達が、目でSOSサインを送っている!
ヤバい!こいつ飛んでる!次のネタが思い出せてない!!
(中略)
どうしたらいい!?
何か思いつけ!!
すると--伊達が。
「ふざけてんだろ、お前!」
と、フッとネタを思い出してくれた!
ホッとした……そこからは僕も気持ちを立て直して、「ピザのデリバリー」を順調に進めることができた。
焦った。本当に、ヤバかった。
このトラブルの間は、コンマ1秒、あるかないかだ。
たぶん観ている人は、僕と伊達がパニックになっているなんて、気づかなかっただろう。
でも僕は、本気で「あっ、死んだ…… !!」と思った。(太字:著書による)

noteで偉そうにお笑いを寸評していたけれど、僕にはそんな資格もないし、それを専門的に語ろうとも思わない。
でも、サンドウィッチマンのようなエピソードが、きっと今年のM-1グランプリでも多発したのではないだろうか。ネタ前、笑神籤が引かれたとき、本番中、ネタが終わった後、点数開示後、最終決戦の結果発表…。本当にゾクゾクするようなドラマが起こっていて、それがリアルに視聴者に伝わってくるというのが、M-1グランプリのコンテンツパワーなんじゃないか。

「そんなの知ってるよ!」という声が飛んできそうだが。
期間限定かもしれない、M-1グランプリ後の打ち上げの様子も、そういう意味では必見です。本音!

蛇足:これまでの賞レースでインパクトがあったコンビ

面白い / 面白くないでなく、「たまげた!」「素晴らしかった!」「まさにフルブラッドンの音楽みたいやな!」というインパクトレベルで五組挙げるとすれば、

・笑い飯(2003年、M-1グランプリ)
・サンドウィッチマン(2007年、M-1グランプリ)
・あべこうじ(2010年、R-1ぐらんぷり)
・バイキング(2012年、キングオブコント)
・オジンオズボーン(2013年、THE MANZAI)
・トム・ブラウン(2018年、M-1グランプリ)

を推したい。あれ、6組になっちゃいましたね。
というか、フルブラッドンって誰〜!?

もうええわ!

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ほりそう / 堀 聡太
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