政治や選挙、そして新聞報道についての雑感。
時折、政治のことをポストしている。
わざわざこんなマガジンを作っているのは、ひとりでも多くの人が政治参加する未来を期待しているからだ。
だけどまあ、こういった話題は敬遠されがちだ。
「政治・宗教・野球の話はするな」なんてことが広く伝聞されている社会において、政治に関するポストは好まれない。好き嫌いの問題ではない。「触れてはいけないのでは?」という薄味の恐怖。薄味でも、恐怖は恐怖だから近寄らない方が良い。そもそも知識がないから、迂闊なことを言うと馬鹿にされるリスクがある。本当に「馬鹿」なのは、そんな些細な恥を恐れて、政治のことを学ばない態度だと思うのだけど。
と毒を吐きつつも、見てくれている人はいるようで。
先日飲み会に参加したときに、7月に開催された都知事選の話題になった。「今回ほどフィルターバブルを感じたことはなかった」という雑感であれやこれや話が進む中、友人からわざわざ私が意見を述べるよう求められたのだ。こういった話を飲み会の席で開陳することはないのだが、きっとSNSの発信を読んでくれていたのだろう。
私が感じたのは、冷静に選挙を振り返ることの難しさだ。
例えばある人は安野貴博さんの「伸び」が素晴らしいと話した。実際、そういう評価を下している人もいるだろう。彼をあたかも「ヒーロー」のように持ち上げる。(彼に「ヒーロー」の自覚はないのに、だ)
だが、得票数に注目すれば、彼の影響力など僅かだということが分かる。当選した小池さんは291万票で、安野さんは15万票に過ぎない。失速したことを冷笑される蓮舫さんでさえ128万票を獲得している。
だからといって、「安野さんは大したことなかった」と結論づけるのは安直だ。しかし、全体の得票数における得票率が2.3%だったというのは紛れもない事実である。「大健闘」だと私は言うことはできない。
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自民党総裁選の行方について、メディア報道は過熱の一途をたどる。
毎日新聞では、岸田さんが退陣を発表した直後の1週間、ほぼ毎日総裁選について一面で報じている。
16日(金):「ポスト岸田」熱い夏(382.5cm2、アタマ)
17日(土):なし
18日(日):自民総裁選 乱立模様(189cm2、カタ)
20日(火):小林氏「脱派閥、徹底」(195.5cm2、カタ)
21日(水):小泉氏 総裁選出馬へ(464.5cm2、アタマ)
22日(木):コラム プレーバック自民党総裁選(290.25cm2、カタ)
アタマというのは一面トップのことで、カタというのは2番手記事のことだ。ちなみに一面は記事部分が960cm2。岸田さんの不出馬の記事はさすがに880cm2と大きかったが、さて他の記事はそれなりのニュースバリューはあっただろうか。
小泉進次郎さんの出馬見込みを報じた日、カタとして報じられたのは「辺野古護岸、本格着工 軟弱地盤側、代執行後で初」である。どちらの方がニュースバリューがあるのか。少なくとも毎日新聞は、小泉さんの出馬見込みに軍配を上げたのだ。
毎日新聞の批判をしたいわけではない。
いや、批判はしたい。否定ではない批判。そうじゃないだろうという意見表明。「そうじゃないだろうという意見表明」は否定ではない。そんなエクスキューズを並べる必要がある社会を私は息苦しいと思うが、ここまで説明しないと、「否定的なことばかり言う、面倒くさいやつ」だと認定されてしまう。
ちなみにそんな毎日新聞は、8月29日朝刊で、「開かれた新聞委員会」から、座談会の様子をまとめた記事を掲載している。
毎日新聞の「中の人」でない、外部の人間をして「6人『主要候補』よかった」、「全国紙各紙と比較して毎日新聞の読み解きは抑制的で好ましく、及第点以上だった」など言わしめる紙面に薄寒さを感じたものだが、何より懐疑的なのは、編集局長・坂口佳代が記す最後のまとめである。
これ、ただのガス抜きコンテンツじゃないのか。
YWTという振り返りのフレームワークがある。Y(やったこと)、W(わかったこと)、T(次にやること)というシンプルなものだが、毎日新聞の“えらい人たち”は、具体的なTを何ひとつ提示していない。
提示するつもりもないのだろう。
だって提示したら、「次にやること」として行動の有無を問われてしまうから。
期待は全然していないけれど、なんだかんだ毎日新聞の購読を続けているのは、毎日新聞に新聞メディアとしての光明を見出したいと思っているからだ。神様を信じるような、ほとんど宗教じみた面持ちだけど、良い報道に触れていたいと思っている。
毎日新聞の試行錯誤の結果は、案外すぐにやってくる。9月に新しい自民党総裁が決まったら、間もなく衆議院議員選挙がやってくる。そこで毎日新聞はどんな試行錯誤の跡を見せるだろうか。
期待というか、わずかな光明を見出したいというエセ宗教心。それこそ結果は、神のみぞ知るということか。