新人キャピタリストの動き方(続2・イベント苦闘編)
私の社内向けブログをnoteで公開する企画も第三回に突入しました。キャピタリストになりたての方に私が業界の先輩方から学んだこと、当時のもがき苦しんでいた頃のエピソードなどを中心にお届けしていきます。
過去noteはこちらから。
前回のnoteで若い時の苦労は買ってでもしろ、という諺を紹介しましたが、自分のこの20年間の社会人人生を振り返ると本当にそうだなとしみじみ感じます。ベトナム駐在時の経験は、今の私にとってどれもとても有り難い経験になっています。東京からお客様が来越する際、空港にお迎えに行って、予約したホテルに案内して、ミーティングを調整して、ランチやディナーも手配する。ミーティングの調整は二日間や三日間という滞在時間を有効に活用するために、車移動する際のルートを意識して時間を見積もらないといけません。また、お食事も美味しいものを食べたいからといって毎回同じところに案内するわけにもいかないですし、当日のお客様の気分によって急遽変更したりすることもあります。そういった調整、調整、調整といった仕事で鍛えられましたね。投資やコンサルティングする時間よりも、調整に費やした時間の方が多かったかもしれませんね。ぶっちゃけ、投資実務ってそこまで時間を必要としないんですよね。クライアントの満足度を高めることが最低限と考えていました。いずれにせよ、そういう経験って貴重だったな、と今めちゃくちゃ感じています。幹事、面倒臭がらずにどんどんやると良いですよ。何事にも成長の機会を得ることが出来ますから。
さて、ベトナムから日本に帰国したタイミングで私はDI(Dream Incubator)を退職して、ヤフーに転職します。ヤフーに転職して1ヶ月経つとYJキャピタルに配属されました。新人キャピタリストの私は小澤社長(当時)に紹介された会社を黙々とDDする仕事をしていました。自らのソーシング力を高めようと、あちこちのイベントに顔を出したりしていました。しかし、なかなか投資委員会に諮る会社に巡り会えない日々が続いていました。当時の同僚のキャピタリスト歴がながーい戸祭さんは毎日色々な起業家ともミーティングしています。私の予定表はスカスカ。誰も信じてくれないですが、そもそもアウトバウンド営業とかイベントで交流するのとか得意じゃないです。知らない人に声かけるのって苦痛ですものね。それなのに今だと偉そうに社内メンバーにはもっと動けって指示出してる典型的な駄目な上司です(笑)
そんなある日、オフィスで残業していた小澤さんに声をかけてもらい、「最近仕事はどう?」と質問され自分の状況を説明しました。すると、「まあまだ他人の褌で相撲を取っている状態だな。自分の基盤を作らないと駄目だな。イベントをもっとやってごらんよ。Skylandの木下さんは素晴らしい。彼を見習うと良いよ」とアドバイスをもらいました。それから一ヶ月後、また声をかけられます。「どう?イベント決まった?」(O)、「いえ、まだです」(私)。
まだイベントを企画していない私は当然叱られます(涙)。そこで、小澤さんが一緒にどういうイベントを企画したら良いのかブレストに付き合ってくれることになりました。
「どうせやるなら二番煎じは無しで、独自性を打ち出したイベントが良いな」というのが当時の小澤さんの考えでした。「堀、お前は元々コンサルだろう。こんなのはどうだ。題して無責任コンサル。スタートアップ1社の経営課題を、他のスタートアップの起業家が自分勝手に、無責任にコンサルをする。コンサルフィーをもらわないので、アドバイスは当然無責任。初回は俺も参加する」と破茶滅茶な企画が飛び出しました。
栄誉ある1社目の実験台には、YJ1号ファンドの支援先であるファストメディア(現ヤプリ)さんに来てもらいました。会議室に10名近くの無責任コンサルタントの方に来ていただきました。このイベントの目的は2つあります。一つは、支援先の経営課題について外部の方の力を借りて解決策の道筋を探ること。もう一つは、優秀な起業家の発掘です。投資検討先の起業家に無責任コンサルタントとして来てもらい、彼・彼女がどのようなアドバイスをするのか観察し、投資時の経営者見極めに役立てよう、というのが狙いでした。なので、オープンなイベントではなく、クローズドイベントでした。経営課題を話す起業家も、クローズドの方が本音を言いやすいからです。
投資検討中の起業家3名ほど、まだ投資検討に入っていない起業家を3名ほど、上場企業の社長や本物の戦略コンサルの方を4名ほど声がけして、みんなでゲスト起業家の経営課題と成長戦略について徹底討論します。無責任コンサルは最初、自己紹介からスタートです。そして、ゲスト起業家が会社概要を10分ほどプレゼンし、その後経営課題について5〜10分で説明します。次に無責任コンサルタントの面々が登壇企業に質問をします。質疑応答タイムから自然に「こうしたほうが良い」というような自分勝手なアドバイスやコンサルが繰り広げられるのです。
やってみて分かった点は、
今まで気づけなかった目から鱗のアイディアを得る、ということは思ったよりなかった
誰もが思いつくことは、すでに取り組まれている
コンサルされる側の企業が過去に取り組んだ施策について、失敗要因の分析が足りなかったり、途中で諦めずに最後までやりきる意思が欠如していた、ということに気付かされた
などが挙げられます。
このクローズドのイベントの効果は、参加起業家のビジネスパーソンとしての課題解決力の高低を見極めるにはとても良かったのですが、ソーシング企業数を増やす効果は得られませんでした。イベントの内容自体が公開できない機密性の高い情報を取り扱っていたため、バイラル係数が高くなく、新規の参加者が増えにくかったです。今ほどTwitterをアクティブに使えていなかった、という背景もあります。ただ、今振り返ると、外部の参加者が参加したいと思うように情報を抽出・加工し、露出させていくところを私自身がやりきっていなかった、と反省しています。結局5回しか開催しませんでした。上司からゴール前にスーパーなアシストをもらっておきながら、得点王になれなかったですね。書きながら、どんどん恥ずかしくなるのと、もっとやっておくべきだったと後悔の念が積もります。今より10kg痩せている当時の自分を見るとさらに残念な気持ちが増します。
サイバーエージェントキャピタルさんのMonthlyPitchや、野村證券さん&デロイトトーマツベンチャーサポートさんのモーニングピッチなどは何年も継続していて、本当に素晴らしいと思います。頭が上がりません。
このクローズドイベントの経験は、後にCode Republicというアクセラレータープログラムで実施した起業家交流会に役立ちます。Code Republicの採択企業の起業家を5〜6名集め、上場企業の先輩起業家にゲストに来てもらい、狭い部屋でピザを食べながらHard Thingsについて語り合うという会を開催しました。狭い部屋で、ご飯を食べながら語り合うという距離の近さが、ここでしか話せない内容を交換しあう密度の濃いコミュニケーションを実現しました。
ころんでもただでは起きないの精神ですね。
無責任コンサルからの学びは、
1.クローズドイベントとオープンイベントの違い
2.継続・持続可能なイベントフォーマット
3.独自色のあるイベントアイディアの重要性
4.クローズドイベントの盛り上げ方
5.総力を駆使した集客の重要性
といった感じでしょうか。
いずれも自分でイベントをやってみないとわからなかったことばかりですね。後悔の気持ちも大きいけど、やって良かった、と思えているので、やっぱり色々チャレンジした方がいいですね!
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