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『バンズ・ヴィジット』北米ツアー観劇メモ
「トニー賞10冠の快挙!」「抒情的で優しい中東音楽!」「華々しく踊るわけでも、派手に歌い上げるわけでもないけれど、心に染み入るミュージカル!」「ほとんど歌っていない(らしい)のにトニー賞主演男優賞獲得!」「静かで目立たないけれど非常におしゃれな秀作!」「不思議な異国感!」「他に類を見ない唯一無二感!」
そうした評判で語られるミュージカル『バンズ・ヴィジット』、実際はどんな空気をまとった作品なのか?担当プロデューサーが北米ツアー中のTHE BAND’S VISIT を観に行きました。
久々の出国
6月、パンデミック以降止まっていたTHE BAND‘S VISIT 北米ツアーが再開進行中との情報が。奇跡的にスケジュールの調整がつきそうな兆しが見え、7月最終週に突然の奮起。北米ツアー最終地・米国バージニア州リッチモンドのAltria Theater へ向かうことにした。
パンデミック以降初めて海外へ出ることもあり、飛行機や宿泊先の手配をするのも久しぶり。加えて、ワクチン接種証明や帰国のための検査手配等、旅の準備に想像以上の時間と手間がかかり、ほんとうに予定通り行けるのだろうか…と早くも不安が広がるもなんとか手続きは完了、7月30日(土)朝、羽田空港を出発した。
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向かう先のAltria Theater は、米国バージニア州リッチモンドにある劇場。
ウェブサイトを見ると、厳かな佇まいの外観に、内装も何やらエキゾチックな趣を感じさせる。それもそのはず、元はモスクと寺院神社として建てられた建造物だったとのこと、この上なく THE BAND‘S VISIT の世界観と一致する劇場である。
到着前に作品についての情報をいくつか。
★トニー賞10部門受賞作品、待望の日本初上演
2018年トニー賞の他候補である『アナと雪の女王』『ミーン・ガールズ』『スポンジ・ボブ/スクエアパンツ』を抑えてなんと10部門を独占する快挙!いわゆるBWな派手さのある作品ではないものの、時勢も後押しして誰もが納得する受賞となったのではないでしょうか。
【受賞歴】
2018年 第72回トニー賞10部門受賞
<ミュージカル部門>
ミュージカル作品賞:「バンズ・ヴィジット(The Band’s Visit)」
ミュージカル主演男優賞:トニー・シャルーブ(バンズ・ヴィジット)
ミュージカル主演女優賞:カトリーナ・レンク(バンズ・ヴィジット)
ミュージカル助演男優賞:アリエル・スタッチェル(バンズ・ヴィジット)
ミュージカル演出賞:デヴィッド・クローマー(バンズ・ヴィジット)
ミュージカル脚本賞:イタマール・モーゼス(バンズ・ヴィジット)
ミュージカル照明デザイン賞:タイラー・マイコロウ(バンズ・ヴィジット)
ミュージカル音響デザイン賞:カイ・ハラダ(バンズ・ヴィジット)
<ミュージカル・演劇 共通部門>
オリジナル楽曲賞:デヴィッド・ヤズベック(バンズ・ヴィジット/作詞作曲)
編曲賞:ジャムシールド・シャリフィ(バンズ・ヴィジット)
<映画「迷子の警察音楽隊」(2007年公開)受賞歴>
*フランス・カンヌ国際映画祭
ある視点部門”一目惚れ”賞/ジュネス賞 /国際批評家連盟賞
*第20回東京国際映画祭 東京サクラグランプリ
*ウクライナ・キエフ国際映画祭 グランプリ/エキュメニック賞
*ドイツ・ミュンヘン映画祭 観客賞/シネヴィジョン賞
*イスラエル・エルサレム映画祭 作品賞/主演男優賞/主演女優賞/新人男優賞
*イスラエル・アカデミー賞
作品賞/監督賞/男優賞/女優賞/助演男優賞/脚本賞/音楽賞/衣装賞
*チェコ・カルロヴィヴァリ映画祭 最優秀アジア映画賞
↓原作映画「迷子の警察音楽隊」はamazon prime videoなどで見れます!
★上演歴
2016年
米国オフブロードウェイ/Atlantic Theatre Company
11月11日~2017年1月8日
2017年
米国ブロードウェイ/Ethel Barrymore Theatre
10月7日~2019年4月7日
2019年
米国ツアー
Providence Performing Arts Center 他
6月25日~
2020年
フィリピン/Carlos P. Romulo Auditorium
3月10日~3月13日
※コロナ禍によりプレビュー期間中に終了
そうこうしているうちに間もなく離陸。さあ乗継だと思った矢先に。
ハプニングだらけの乗り継ぎ
リッチモンド国際空港に到着したのは、現地時間の7月30日(土)深夜。もう少し早い時間に着くはずが、乗継のジョン・F・ケネディ空港での入国審査に時間が掛かり、予定していた乗継便に間に合わないハプニングが起きた。しかも乗るはずだった14時発便の次が、まさかの22時を過ぎる便だったため、当初の予定よりも8時間以上遅れての現地着。
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あれ、これどこかで見たシチュエーション。(バンズヴィジット既視感)
なんとか入国…劇場へ
乗り継ぎハプニングのため、実はチケットを買っていた土曜の夜公演を見逃すも、漸く目的地まで来られた安堵感で、その日はあっという間に寝落ちる。
翌7月31日(日)、THE BAND‘S VISITは北米ツアー大千穐楽、自分にとっては初の生 THE BAND’S VISIT 観劇ということで、気合十分に起床。朝食をもりもり食し、昼公演に向けてホテルを勢いよく出発。劇場から徒歩10分の宿泊先だったため、そこまで早く出る必要もなかったが、散歩気分を味わいながら、だんだんと近づいてくる最終目的地への期待が高まる。
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緑豊かな公園の脇を通りながら、次第に見えてくる豪奢な建物。さらに青い看板が目に入ったとき、気づくと半泣きになっていた。いつのまにこんなにも観たい気持ちが膨らんでいたのかと感慨深くなりながら、ゆっくりゆっくり劇場入り口に近づく。昼12時、遂に劇場到着。
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涙に潤みながら、しばらくひたすら劇場の周りの写真を撮影、漸く落ち着いてきて中へ入る気持ちになる。
当初、土曜の夜公演と日曜の夜公演を観る予定でいたため、今から始まる日曜昼公演のチケットは購入しておらず。劇場周辺の下見&資料写真を撮りつつ当日券があれば・・と思って来場したところ、劇場のチケットボックス前で係の女性が大声を出していた。「Free Ticket!Anyone want Free Ticket!(無料チケット!誰か無料チケット欲しい人!)」。恐る恐る近づくと、「You want ticket!I have a good seat for you. Here you go!(あなたチケット欲しいのね!いい席あるわよ、ほら!)」となんと来場できなくなったお客様のチケットを公式にタダでもらえる棚ぼた展開。「サンキュー!サンキュー!」とお辞儀をしながら、劇場に足を踏み入れた。
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日曜の昼間、地元の人たちが観劇を楽しみにやってきた雰囲気が感じられ、思わず笑みがこぼれる。客層は、若い層もいるけれど、どちらかというと年配の方の顔が多くみられる気がする。元々は2020年に予定されていたツアー公演でAltria Theaterにも来るはずだったが、パンデミックで中止となり、二年越しに叶った上演だ。観客の期待値も大きいのだろう、前に座るおしゃべりに余念のない年配男性達を眺めながら、しみじみ目を細める。
開演5分前、気づくといつのまにか流れている砂のような海のような音。あの「何もない町」へ誘われる気持ちになる。
その砂のような海のような、風のような音が次第に楽器の音か?と感じられるようになったとき、オーバーチュアが流れた。開演である!
↓BW版 舞台映像はこちら
観劇を終えて
作品は、これまで資料や観劇した人たちの劇評に違わぬ内容だった。
「抒情的で優しい中東音楽!」「華々しく踊るわけでも、派手に歌い上げるわけでもないけれど、心に染み入るミュージカル!」「静かで目立たないけれど非常におしゃれ!」「不思議な異国感!」「他に類を見ない唯一無二感!」
その通りであり、本当にその通りだった。エジプトからやってきた警察音楽隊が自力で異国の目的地へ行こうとしたら、全く違う辺境の町にたどり着いてしまう。その町の人たちと一晩過ごすことになるが、言葉も片言でしか通じないし、活発なコミュニケーションもいまいち進まない。しかし音楽と、朴訥とした口調で語りだすそれぞれの等身大の物語が静かに紡がれていき、最後は温かい気持ちで泣けてくる。ただ、しみじみ泣けるだけでもなく、途中は割とシュールな面白さにあふれているので、クスクスげらげら笑える。感情表現豊かなアメリカの観客は、度々大爆笑していた。
終演後、カンパニーに拍手を送りながら、自分もあの「何もない町」ベト・ハティクヴァを旅してきたような気持ちでいることに気がつく。観ていたのはミュージカルで、訪れたのは劇場で、100分間客席に座っていたはずだが、確実にあの土地へ行ってきた感覚が残る。
それが THE BAND’S VISIT=音楽隊の訪問、最大の特徴であり魅力なのではないかと思った。
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弾丸で訪れた、THE BAND’S VISIT 米国Altria Theatre 公演。当初の不安をよそに、結果としては確実にこの作品の魅力を掴むことが出来た旅となった。今度はこの体験を、日本のお客様に届ける番。楽しくて可笑しくて温かい劇場旅行へ皆様をお連れできるか、是非その目で確かめに来ていただきたい。
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https://horipro-stage.jp/stage/bandsvisit2023/