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『チネチッタで会いましょう』映画感想文・映画愛あふれる素敵なコメディ


ナンニ・モレッティ監督の作品は初めて見ました。主演のジャンニが監督ご本人だと、後から知って驚きました。さすがにご自身だけあって、いい味が出ていました。


かなり面白かったですね、映画通好みの映画だと思います。


けっこうイケオジですね

あらすじ

イタリアの映画監督ジャンニは、これまで40年間、プロデューサーの妻に支えられながら映画を制作してきた。チネチッタ撮影所での新作撮影を目前に控え、頭の中はアイデアでいっぱいのジャンニだったが、順調だと思っていたのは本人だけだった。女優は演出に口を出すばかりか政治映画をラブストーリーだと言い出し、娘に紹介されたボーイフレンドは自分ほどの年齢だという。誰にも理解されず、ひとり帰宅して目を覚ますと、今度は妻から別れを切り出されてしまう。さらにプロデューサーが詐欺師であることが発覚し、資金不足で撮影が止まってしまう。 2023年製作/96分/G/イタリア・フランス合作原題または英題:Il sol dell'avvenire配給:チャイルド・フィルム劇場公開日:2024年11月22日 (『映画.com』より引用)

感想(ネタバレ含む)

自分のスタイルに固執する、考え方の古い映画監督をモレッティ監督本人が演じています。


おそらく、ご自身とジャンニを重ね合わせて演じておられるのでしょう。


それはなかなかキツイ作業なのではないかと想像するのですが、イタリアらしい陽気さと軽やかさで、とてもハッピーで楽しい作品に仕上がっています。


冒頭から暴走気味で人の意見に耳も傾けない、前時代的な映画監督ジャンニ。


いちいち面倒くさい性格で、妻から嫌われるのも非常に理解できます。


別の映画監督の現場に来て、演出に口を出すとか、非常識にも程があるというか、最悪ですよね。


あちこちでトラブルが噴出し、何もかもがうまくいかないのは、本人の頑なさに問題があるせいですが、裏を返せばそれだけ映画に対する思いが強いともいえます。


それが理解されない苦悩というのは、コミカルに描いているものの、非常に辛いものに違いありません。


唯一の理解者であると信じていた妻からも別れを切り出され、ありていですがそこでようやく自分の頑なさに気がつきます。


中高年になってから、自分の過ちに気づき、考え方を変えていくのはとても難しいこと。


他者への理解、分かち合いを、皆で歌を歌うことで表現していて、それがとてもユニークで楽しかったです。


なんで歌うの? この場面なに? と思いかけましたが、ジャンニなりの理解の形なのだろうと解釈しました。


全体的にコメディ色にあふれていて、どのキャラクターも個性的でした。


私が一番気になったのは、プロデューサーのピエールです。


妙に調子がいいと思ったら、最初からお金などなく、撮影現場で寝泊まり。


1950年代のセットに私物の電動歯ブラシや充電器が置いてあったのは彼のものだったのか…と笑ってしまいました。


それでスタッフがジャンニからこっぴどく叱られたのは、本当にとばっちりで可哀想です。


また、資金がなくて撮影を中断させたのに、最後にはちゃっかり皆に混じって笑顔で行進しているという適当さがとても面白かったです。


最後の行進ではひとりずつ満面の笑みでアップになり、「こんな人出てたっけ?」という方も多数。


監督の映画に対する深い愛情とリスペクトが感じられて、多幸感にあふれるエンディングでした。


見ようかどうしようか迷った作品でしたが、見て本当に良かったです。


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