#11 「子育て」② 〜「叱る」ことと「伝える」こと〜

当時、児童養護施設で子供達と関われた時間は3年間でした。

その中で私が、学んだことを一つ書こうとと思います。

私は、子供を「叱る」ことが苦手でした。
正確に言うと、「怒る」ことが苦手でした。

私は、怒られるのが嫌いです。
というか、大声で捲し立てられるのが好きじゃありませんでした。

当初、私はそれが「叱る」ことなのだと思い、「怒る」ことを
していましたが、かなり自分自身、気合いを入れてスイッチを
入れないとできませんでした。
そして何よりストレスでした。

「本当に伝えたいことが伝わったのだろうか・・・」 

「怒る」だけでは、子供はただ、その「怒られたこと」に対して
恐怖や嫌悪感を抱き、「怒られないように」行動するだけでは
ないのか?
本当に大切なのは子供が、自身の行動に対して、振り返りと
自分で考え、何を感じたのかを学ぶことが必要なのではないか?

そんな風に思い、それ以降「怒る」ことを止めました。
もちろん、腹が立ち、感情的に声をあげることもありましたが・・・

 「怒る」のではなく、「伝える」ことをメインに考えました。
   
 そんなある時、一人の男の子が、いつも帰る時間になっても帰らず   
「友達と遊んでいるのかな・・・」と思いながらも、             「何かあったんじゃないのか?」
「事件や事故に巻き込まれていたら?」                  「携帯も出られない状況なんじゃないか?」と、他のことも手につかず、「警察に連絡・・・」などと考えているとひょっこり帰ってきました。
   

私は、安堵と怒りから涙が出ましたが、本人はケロっとしていました。

まぁ、私自身も彼と同じ頃を考えると「なんでそんなに・・・」と思っていたでしょう。

少し落ち着いてご飯を食べながら、私が彼が遅く帰ってきたことに対してどんな思いだったのか、どれだけ心配したのかを伝えました。
初めは、「そんな大袈裟だよ。」「他の友達だって・・・」と話半分に聞いていましたが、最後には「俺のこと、心配してたの・・・」と少し涙目になりながら、「遅くなるときは連絡する」と言ってくれました。

それから彼は、結構忘れますが、帰りが遅くなるときは連絡をくれるようになりました。


心理学では相手に思いを伝える時に使う「I(アイ)メッセージ」というものがあります。
もっと早くに知っておきたかったものでしたが。
これは普段のコミュニケーションでも重宝しますが、子育てにおいて、特に「褒める」際にも「叱る」時にも有効です。
   
   ①事実(相手の行動)
   ②影響(その行動によって生まれる影響)
   ③感情(自分の素直な感情)
   
を相手に非難がましくないように、伝えることでコミュニケーションは円滑になります。
ポイントは、主語は「自分」で、自身が何に対してどう思ったのかを伝えます。
逆に相手を主語にするものを「YOUメッセージ」と呼び、相手にどこか他人事のような冷たい印象を与えます。

例えば、子供が余所見をして転んだ時に・・・

 ♢YOUメッセージの場合                         「あなたはそんな余所見ばっかりしてるから転ぶのよ!        「ちゃんと 前見なさいってお母さんいつも言ってるでしょ。」       「言うこと聞かないと知らないからね!」

 と、どこか突き放すような言い方になってしまい、多分、お母さんの前で は気をつけるかもしれませんが、お母さんがいない場所では、忘れてしまうこともあるでしょう。
そして、YOUメッセージを使うと、その出来事というよりも対象の人そのものを否定するように聞こえます。

 ♢Iメッセージの場合
「お母さん〇〇が怪我をするのを見るのが本当に辛いのよ」         「〇〇が元気に遊んでくれることはお母さん本当に嬉しいんだけど、怪我をして痛い思いをするのは、すごく悲しいのよ。だから歩く時は余所見しないようにしようね。」

自身の行動で大切な人が悲しむこと、心配してくれていることに対して、気持ちを伝えられると子供はきちんと自分で考えようとします。これは、褒めてあげるときも一緒です。
   
   
このIメッセージでは相手に「自己開示」することができ、素直な気持ちを伝えることで、相手もそれに答えようとしてくれます。
これで全てのコミュニケーションが上手く行くわけではありませんが、相手に思いを伝えることは大切です。
相手に変化を求めるのではなく、自身の素直な感情を伝えることが、子供の学びになります。

Li(y)s 心理カウンセラー 北原正一郎

https://www.liys-mental.com/

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