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模擬授業2「複素数の極形式」を一字読解で授業する」

2002年3月28日、JHH東京第2回例会での、模擬授業5分。

「複素数の極形式」を1字読解での導入。高校数学には、教科書1ページ以上の説明文がある。数学の説明文を一字読解で指導する。


模擬試験



教材 東京書籍 数学B

指示1 93ページを開きます。

指示2 私の後について読みます。「2 複素数の極形式」はい。

声がそろってないときは、「声がそろっていません。もう一度。」「3人読んでいません。もう一度。」とやり直しをさせる。10行目まで読む。

指示3 今読んだところを一回読んで座ります。座った後も、小さな声で読んでいます。全員起立。

指示4 ノートに日付を書きます。

指示5 1行づつ1から6まで番号を書きなさい。

書けた人は「書けました。」と言います。

指示6 これから私が問題を出します。番号の横に答えだけ書きます。

発問1 1問目。本文1行目を指で押さえます。zイコール何ですか。ノートに書きなさい。

全員で言います。さん、はい。「(z=)x+yiです。」

できた人は、赤鉛筆で丸。間違えた人はばつをつけて、赤鉛筆で正解を書きます。

指示7 図を見ます。

発問2 zが表す点は何ですか。アルファベットの大文字1文字で書きなさい。

全員で言います。さん、はい。「P(z)です。」

発問3 2問目。本文2行目を指で押さえます。Pと原点Oとの距離は何ですか。アルファベットの小文字1文字で表しなさい。

全員で言います。さん、はい。「(OP=)rです。」

指示8 3問目。図の動径OPを指でなぞりなさい。x軸の正の部分をなぞりなさい。

発問4 動径OPがx軸の正の部分となす角は何ですか。ギリシャ文字1文字で表しなさい。

全員で言います。はい。「(角)θです。」

発問5 4問目。Pのx座標は何ですか。rとθで表しなさい。

x=何ですか?3名指名。「はい。」「なるほど。」と受ける。「x=rcosθです。」

説明1 cosθの定義から導けます。

発問6 cosθの定義は、x/rかy/rのどちらかです。どちらかを書きなさい。

手を挙げてください。cosθ=x/rと書いた人。cosθ=y/rと書いた人。正解は、x/rです。

説明2 両辺にrをかけます。左辺は、rcosθになります。

指示9 右辺を計算しなさい。

右辺は何になりましたか。全員で言います、さん、はい。「xです。」

発問7 5問目。Pのy座標は何ですか。rとθで表しなさい。

y=何ですか?3名指名。「(y=)rsinθです。」

説明3 sinθの定義から導けます。

発問8 sinθの定義はx/rかy/rのどちらかです。どちらかをノートに書きなさい。

手を挙げてください。sinθ=x/rと書いた人。sinθ=y/rと書いた人。sin=y/rです。

説明4 両辺にrをかけます。左辺は、rsinθになります。

指示10 右辺を計算しなさい。

右辺は何になりましたか。全員で言います。さん、はい。「yです。」

説明5 6問目。z=x+yi=x+iyと書けます。4番x=rcosθ、5番y=rsinθより、rcosθ+irsinθと書けます。

発問9 共通因数rでくくります。カッコの中を書きなさい。

イコールのあとは何ですか。3名指名。r(cosθ+isinθ)です。

発問10 このような表し方を複素数zの何と言いますか?漢字3文字で書きなさい。

全員で言います。さん、はい。「(zの)極形式です。」

板書
3/28 
1.z=x+yi  P(z)
2.OP=r
3.角θ
4.x=rcosθ(∵ cosθ=x/r⇔r×cosθ=r×x/r⇔rcosθ=x)
5.y=rsinθ(∵ sinθ=y/r⇔r×sinθ=r×y/r⇔rsinθ=y)
6.z=x+yi=x+iy=rcosθ+irsinθ=r(cosθ+isinθ)←zの極形式

模擬授業「複素数の極形式」の検討。


教材「複素数の極形式」

酒井恭子氏

1.向山型の典型的な授業と感じました。
2.1行目というとき「本文1行目」というほうがわかりやすいです。
3.“Z=”とか“OP=”もノートにはじめからかくのかいってくれると親切だと思いました。
4.これでむずかしく複雑な高校数学ができるようになるのでしょうか?

中川とも子氏

65点
1.音読自体は明せきなのですが、声のトーンが沈んでいるのが気になりました。もっと明るくテンポ良くて大丈夫です。
2.一字読解という意図を理解しました。「Pとする」で一旦切った方がよいかも?

前川孝志氏

1.「1行目を指でおさへなさい」で題名おさへてしまった。
2.Pと原点Oと言ふところをrと言ってしまったのでとまどった。

野口昌彦氏

1.θの読み方がわからない。
2.どこで切るか。もっと細かく切った方が読みやすいです。
3.1~6の「一字読解」的な小問はとってもわかりやすいです。(まちがった自分の状態が確認でき、とても良いと思います。)
4.「極形式」ということを板書した方が、よいのではないでしょうか。
5.見て下さい 生徒の方を。

浅尾慎一氏

1..集中させるためにも、読ませることは効果的だとは思う。だが、数学の授業で2度の音読は、くどい気がする。

池田千早氏

1..なぜ「もう一度言います。」ではなく「そろってない、やりなおし」ときっぱり言った方がよいと思います。
2.あとに続いては時間がかかる。もっとまとめて読んだあとに読ませた方がいいと思いました。
3.問題の指示がわかりにくかったです。数学のできない生徒はついていけません。例えば、2番の「答えをアルファベットで」などの指示はよくわからなかったです。
4.読んだのだからそれをもっとスモールステップで発問していただきたかったです。例えば、教科書にかいてあることそのままとか。

鈴木良治氏

1.2問目の指示の前に「2行目をおさえます」が欲しい。対案として井上好文先生の追試をした方がよい。読ませてストップ。
例えば「複素数の極形式」において0でない…Z=x+yiが表す点、ストップ、「Zは何ですか」など。

岡崎伸一氏

1.読んでいる最中に図を目で確認したくなるのですが、生徒はどうしているのですか?
2.読むスピードはもう少し速めでもいいと感じました。
3.生徒に1回読ませましたが、「どのような速さ」での指示があるといいかもしれません。

鈴木太郎氏

1.数学でも一字読解ができると分かった。
2.声が落ちついていて良いのですが、やや恐い感じがしました。「たいへんよく読めています。」などはニッコリ笑っておっしゃると良いと思います。

金子史氏

1.表情と声 40
  授業のくみ立て 90
さいしょはむずかしかったので、頭がまっ白になりました。「1字どっかい」のネタはおもしろいです。これなら、どんな子も分かりますね。表情が固くて少しこわいです。先生の笑顔を大切にして下さい!

山本雅博氏

1.話すスピードを上げる。
2.全員起立の前に指示を出す。
3.6つと限定することで安定感が生まれる。

模擬授業「複素数の極形式」の分析・自評。

教材「複素数の極形式」

数学の教科書で追い読みしました。
理由は、生徒が読めないところ(sinθ、cosθなど)があると判断したからです。
追い読みの区切り方の基準は、次の3点にしました。

1.読点
2.句点
3.数式

検討では、「もっとまとめて読んだほうがいい」、「もっと細かく切ったほうがいい」という正反対の意見がありました。
生徒によって、区切り方の工夫をしなくてはいけない。
もっとまとめて読める生徒に対しては、「みんなで読みます。さん、はい。」と斉読をさせます。
生徒の状況によっては、もっと細かく区切ったほうがいいと思います。

国語の一字読解を追試しました。
今回の教材は、式や言葉の説明だけで1ページ書かれている説明文です。
一字読解で教科書の文章を理解できることを目的としました。
まず、指示をもっと正確に出すべきでした。
たとえば、「本文1行目。」、「2行目を指で押さえなさい。」、全員起立の前に指示を出すなど。
また、発問で本文から分かること、図から分かること、本文と図のどちらかでも分かることがあります。
本文と図のどちらかでも分かることには、教師がどちらを見るのかはっきり指示を出したほうがよいです。
発問ももっと細かく、正確に出すべきでした。
たとえば、「アルファベット小文字1文字で表しなさい。」など。

授業の改善点


・もっと明るくテンポよく
・笑顔を大切に
・背筋を伸ばす、肩の力を抜く
・生徒をよく見る
・緊張していることを生徒に気付かれないように、堂々とやる

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