火事後の生活再建に向けて(火事の後始末 Part4)
そろそろ折り返しが見えてきた実家全焼からの後始末シリーズ。
前回は、火災発生直後から避難所での生活の様子でした。
今回は、生活再建に向けて動いたことをまとめました。
住居の方針を決める
まず、今後の住居の方針を決めることが最優先でした。
今回燃えた家は親族所有の家だったので、またそこに帰ることはありません。
検討に上がった選択肢としては、以下3つ。
1.市営住宅
罹災証明書があれば、1年間は家賃免除。ただし人数的に2箇所に分かれる
2.賃貸住宅
家賃は発生するが一緒に住める
3.私たち夫婦で空き家を購入して、家族に貸す
お互いが安心して暮らせるが、住めるまでに時間が掛かる
家族7名の構成は、父・母・弟・妹・妹の子供3名です。
妹とその子供たちは世帯を分けていたので、今回の場合は母子家庭が入居案内に優先されるとのことでした。
ただし、同じ市営住宅に入れる保証はなく、近くに住めるかどうかも空き次第とのこと。
内見も妹世帯だけが可能とのことで、役所相談の翌日に4箇所の内見をさせてもらいました。
最終的に、2箇所に分かれて住まざるを得ないことがネックで、市営住宅は断念します。
そうなると、これまで家賃不要の実家生活から、家賃を支払うという生活となります。
長年実家を離れていた私にとって、実家の経済状況が全くわかりません。
そして、そんなに裕福ではないことも何となくわかっていました。
本当に家賃を支払って生活していけるのか心配だったので、親、妹、弟の収入や出費、貯金や借金の有無などを個別にヒアリングしました。
結果、みんなで家賃を出し合って生活はできそうだとわかったので、賃貸を選ぶことができました。
そしてこの機会にスマホを格安SIMに変更したり、要らない保険を解約したりと生活費の見直しもしてもらいました。
火災保険と家財保険
今回のようなもらい火は、火元へは補償を請求できないため、当事者の火災保険を使うしかありません。
しかし、私の実家はその火災保険に未加入だったため、何の補償も得られませんでした。
新築の家を建てられる方や購入される方、賃貸の方は火災保険が必須なので、同じような心配はないかと思います。
ただ調べてみたところ、内閣府が公表しているデータによると、火災保険の加入率は82%らしく、高い数値に見えますが、火災保険に加入していない世帯が5組に1組はいるということです。
(内閣府試算による「持家世帯の保険・共済の加入件数・割合(建物のみ)2015年度末時点 引用:内閣府「保険・共済による災害への備えの促進に関する検討会(参考資料)平成29年3月」)
また、火災保険の詳細を調べる中で、何を以って全焼と定義するのかは火災保険会社によることを知りました。
全体が真っ黒に焦げていても、柱が倒壊していなければ全焼と呼ばない、などあるそうです。
そして、火災保険と家財保険は別物だということも知りました。
家財保険は建物の中にある電化製品、家具、衣類、食器などの生活での「動かすことができるもの」すべてを指すそうです。
とある体験談noteでは、マンガや同人誌(自作)も申請したら全額保険が降りたそうです。
自宅にコレクションが多い方や、新たな家具家電を購入される方など、記録を残しておくと役に立つと思います。
役所の支援制度を申請する
火災保険の補償が無い代わりに、役所で申請できるものはすべて申請しました。
もちろん、火災保険の補償がある人は両方の制度が利用できます。
実際に申請した一覧ですが、いずれも申請しないともらえないものばかりです。
・市の災害見舞金制度 3万円
・県の赤い羽根 災害見舞金 2万円
・国民健康保険 1年間免除
・介護保険 1年間免除
他にも所得税や市税の免除や減免があるようです。
何が該当するかは世帯や状況によると思うので、お住まいの自治体ホームページで確認すると良いかと思います。
このように手続きすべき手順の案内があるはずです。
どういう仕組みかわかりませんが、県の赤い羽根災害見舞金の申請で役所に行ったら「消防署から伺ってます」と自動連携されていたのはありがたかったです。
ライフラインを止める
電気・ガス・水道・インターネット・電話・郵便の全てを一時的に止める手続きをしないといけません。
余談ですが、消火活動に使用した水道料金は、火事の当事者には請求されません。
こちらは、明治23年に公布された水道条例で定められたと知りました。
現在は「水道法」第24条の中で「水道事業者は、公共の消防用として使用された水の料金を徴収することができない」と定めているそうです。
手続きで一番苦労したのが、インターネット回線の停止でした。
火災によるルータの消失や次の転居先が決まっていない状態のマニュアルがないのか、いろんな部署をたらい回しにされました。
最終的に、「インターネット回線を一時停止するという選択肢がないので、月内に解約するか引っ越し先で継続利用するかのどちらかを選ぶしかない」との案内でした。
引っ越し先が決まっていないタイミングで判断するのは難しく、大変ストレスを感じました。
結局月内に賃貸の審査が通り、引っ越しの目処が付いたことで、回線を継続して使用することにしました。
火災直後の優先して判断せねばならないことが多い中で、ネット回線を「どっちにしたらいいの?」と考えることに頭のリソースを使いたくないのが本音です。
次の家が決まるまで回線を一時停止できるなどの、災害時特例のような仕組みがあればなと思いました。
学校・職場への復帰
最終的に、家族が職場や保育園へ復帰できたのは火災から1ヶ月半ほど経った頃でした。
家が決まり引っ越しをして、ライフラインが開通、家電や家具も購入、衣類や物資も整って…と物理的にも精神的にも正常に日常生活を送れるようになるまでは、そのくらいかかるということです。
火災に遭われた方のブログでは「短くても2〜3週間ほど仕事を休んだ」という事例を見かけしました。
もし周りの人が火災に遭われた際は、職場復帰、学校復帰ができるまで暖かい目で見守ってあげて欲しいなと思います。
火事場の後始末
消防の方は火を消してくれても、後片付けはしてくれません。
燃えた家を更地に戻す解体作業はこちらで行わなくてはいけません。
火災が起きた現場には、健康被害の原因になるダイオキシンなどの有害な物質があるため、一般的な解体費用より高額(相場の1.3〜1.5倍ほど)になるそうです。
いわゆる、特殊清掃扱いだそうです。
親戚が解体作業の手配を進めてくれていましたが、見積りを聞いた時に驚愕しました。
具体的な額は掲載できませんが、イメージ的には私立大学の4〜5年間の学費を優に超えるほどでした。
火災現場には、火災から3日目に初めて行きました。
数十分滞在しただけですが、見学だと思われる車が何台も家の前を通りました。
また、解体作業をやらせてくれないかと直接営業してくる業者もいました。
火災現場には金属が残っていたりするとお金にもなるらしいです。
それだけでも持って帰っていいか?と聞いてくるので断りました。
なにも盗むものはないくらいの全焼でしたので、火事泥棒はいなさそうでしたが、火事後の不審者には気をつけようと思いました。
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新しい生活に必要なものを選んでいます。
ご支援いただけるととてもありがたいです。
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実際に火災の当事者になり、火災に遭ったあとの行動や手続きについてまとまった本やブログはとても少ないことに気がつきました。
火事に遭ったときに手に取れるガイドブックにしたいです。
書籍化して、書店や消防署に置かれるようなものを作れたら良いなと思っているので、書籍化の手段をお持ちの方がいらっしゃいましたら、是非お力を貸してください。
【取材歓迎】
火事の実体験についてお役にたてそうなことがあれば、horiikemaki<at>gmail.comまでご連絡ください。