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【火事体験者対談インタビュー】火事になった時に読む本ってあると思ってた

2022年3月25日、長野県のご自宅が火事に遭った小池祥悟さん。

その日から、noteでリアルタイム発信を30日間続けられました。

私の実家が燃えた時に情報収集する中で小池さんのnoteに出会い、日々の記録から復興までの具体的な手続きやお金の話など、たくさん参考にさせていただきました。

いても立ってもいられなくなり、連絡を取り始め、火事の復興中もアドバイスをいただきました。

今回のインタビューで見えてきたのは、同じ火事という経験を持つ者同士でも、環境や状況によって火事の後始末はケースバイケースということ。

例えば、消防の方に火災後の手続きのことを聞いても、一概には言えず、案内する書類やアドバイスを持ち合わせていないということがわかりました。

ICS-net株式会社 代表取締役 小池 祥悟さん
同じ経験を持つ者同士、初対面とは思えないほどのパッションでお話しくださいました

noteで発信を始めたのは夜眠れなかったから

――noteを書こうと思ったきっかけについて教えてください。

いつかnoteデビューをしたいなと思っていたんですよ。あれがデビュー作です。

火事になったその日の夜って、眠れないんですよ。

せつないしこれからの不安もあるし、これからどうなっていくんだろうと思って。

興奮もしてるし、眠れないから書いたんです。

火事になった日に何をしなきゃいけないかって調べたんですけれど、 あんまり情報が出てこないんですよ。

じゃあ記録に残そうと思って、パソコンも焼けちゃったからスマホで書き始めました。

――更新日が火事発生の翌朝6:30。まさに時系列。臨場感のある記録です。

火事になった時に読む本ってあると思ってた

火事の日、お昼の12時15分くらいにうちの娘から「パパお家なくなっちゃう」って泣きながら電話がかかってきて、すぐ帰ったんですよ。

帰ったら家がもくもくと燃えていました。

そしたらもうそこからずっと夕方の5時か6時くらいまで、入れ替わり立ち替わり、警察と消防署に事情聴取されるわけですよ。

「原因は?」「どこにいましたか?」とかそういうことですよね。

放火のの可能性もあるから「最近の近所のお付き合いどうだったの? 」とかもすごく聞かれるんですよ。

うちの娘が第一発見者なので、娘もずっと泣きながら、ずっと対応してたんです。

警察と消防の方に「火事になった時に読む本ないんですか。僕明日から何やればいいんですかね?」って聞いたら、「いや、そういうものは用意してないんすよ」と。

そうなんだ。用意しないんだ。

だからそれも含めてnoteに書こうって。

僕が一番やりたかったのは、教科書的な火事になった時に読む本を作りたかったんですよね。

そして、長野市の消防局に本にして欲しかったんです。

ふたりとも「消防署に火事後の本を置いて欲しい」の気持ちは同じだったと知る

――そこから30日間書き続けたんですね。火事の発生直後って今後のことが何も見えないから「本日の買い物」など、日々の具体的なお金の話も大変参考になりました。火災保険に入っていたとはいえ、お金がかかったものは何でしたか?

まずは解体費用ですね。

一番最初に地元の処理業者さんにお願いしようとしたら見積もりが600万円近くて。でも違う業者に見積もりを頼んだら300万ぐらいでした。

費用の差は、広さと量と鉄らしいです。

鉄は売れるらしいんですよ、だから鉄筋だと少し安くなるみたくて。

地方だと火事の解体が出来る業者が数社しかなくて、結局は言い値なので最後は安い方にしました。

あとは、日用品がすべて燃えてしまったのでまず服。そして身の回りで必要なものですね。

最低限の生活ができるように、服、布団、歯ブラシ、コンタクトレンズ、眼鏡などを揃えました。

事細かに記録が残されています
(小池さんのnoteより抜粋)

――火事後の手続きで大変だったことはありましたか?

一番苦労したのは電気、水道、インターネット回線ですね。

特にうちは実家と二分してるものがいくつもあったんです。実家が同じ敷地内なので、水道や電気、灯油も二分してたんですよね。

それを片方を止めるなど、整理していくのがすごく苦労しました。

特に行政関係というと水道ですかね。

家を建て直して、水道を復活させる時、長野市の水道局から新しく引くから新規改設扱いにされそうになりました。いやいやいや前まであったじゃんって。

あと、電気を止めないと家を壊せないんですよ。うちはまだ電線が繋がっちゃっていて、電線とNTTの電話線を取らないと家を壊せなかったんですよ。

その手続きを先にしないといけないんですが、結局間に合わなくて解体屋さんがやっておいてくれたのかな?

インターネットの光回線もややこしかったですよ。

NTTに電話したらNTTがうちじゃないですって言われてたらい回しにされました。結局、その回線を壊しに来たのはNTTですけどね。

あとは、住む場所が変わって、子どもの転校手続きができるできないとか、転校手続きに時間かかるとかいろいろと言われて、奥さんは悔しい思いをしていたようです。

焼けた紙幣を新札にする審査や焼けた小銭の両替にも何度も銀行に行って、手間が掛かりました。

時には真剣な面持ちで語ってくださる小池さん

罹災証明書が発行されるまで1週間

――noteでは罹災証明書が発行されるまで1週間ほどかかってましたよね。私の場合、火事翌日に消防署に行って10分ちょっとで出たのでこんなに違うんだなと思っていました。

罹災証明書はすごい時間かかりましたよ。

堀池さんのもらい火と違って、うちの場合は火事の明確な原因が分からなかったのと火事が金曜日だったので現場検証が月曜日になっちゃって。

そうなると、火災の原因を特定するのに時間がかかって、火事から1週間もかかったんですよ。

あとは、罹災証明書を発行する場所も地区によって違うみたいです。

例えば、火事のあった自宅を管轄している消防局では罹災証明書が出せず、別の消防署からしか罹災証明書が出せなかったんです。

調べていくと県や市でフォーマットが違っていて、仕組みが統一されていないこともわかりました。

行き着く先は「行政の仕組み化」が課題

滅多に起こらない × ケースバイケース = 仕組み化されない

家を取り壊した時に建物滅失証明書を法務局に提出するんですが、僕はたまたま長野市在住で法務局も長野市内にあるからいいんですけど、これ違う遠方の市町村だったらどうすんだろうなと思って。

また、法務局に提出する建物滅失証明書とは別に、長野市に提出する滅失届や減税免税処理など提出先が違う書類がたくさんあるんです。

県と市のそれぞれに申請するんですが、たまにしかないからか県では職員が知らなかったり、市で聞き直したり、あまり整理されていない感じなんですよね。

たまにしかないから行政方も慣れてないみたいで、それをもう一個ずつどこでするべきなのか調べて、自分で足を運んでやりました。

だからみんなそれぞれで何をやったかっていうのを、記録して残していくといいんだと思いますよ。

一人一人ケースバイケースだからいろんなケースの記録が残るといい。

――30日目のまとめとして、結局どこで何の手続きが必要だったのかについても、詳しく解説してくださっています。

火事の体験を赤裸々に話せるのは誰も死んでいないから

――火事の経験から、当時の自分にアドバイスをするとしたら?

火元には気をつけてほしいですね。

原因は電気なんですよ。恐らくコンセントの部分から漏電して、火花が散って農業資材に燃え移っていったのかなと思うんですよね。

これでもこうやって、赤裸々に話ができるのも誰も死んでいないからなんですよ。

僕はちょうど会社を作った時期で、火事に遭ったのは初めて大型の資金調達をした3ヶ月後だったんですよ。

だからもし誰かが死んでたら会社は売っていました。

誰も死んでないから、ちゃんとnoteにも残せたし、会社も残ってるし、そして今も苦労はしているんですけれど、これは神様がまだ会社を売るなと、まだ苦労しろと言っている気がしました。

大きな経験をご家族で乗り越えてきたからこその今を感じました

インタビュー編集後記

小池さんのお話を聞いて、自分の経験からしか見えていなかった火事の後始末には、思っている以上に複雑な事情が絡み合っていることを知ることができました。

火事後の後始末ガイドブックは単純な流れだけではなく、さまざまなシチュエーションや事情への配慮が必要そうです。

また、手続きや申請など、自治体や企業によって流れが統一されていないことが多いことも改めて理解できました。

小池さんにお会いする前は、「火事の体験を毎日リアルタイムで更新するモチベーションはなんだろうか?」と私にはできなかった疑問を持っていました。

その答えが、ネットで探しても火事の対応の情報が少なく、警察や消防署に聞いても用意していないと言われたという実体験からだと知れたことがとても大きかったです。

小池さんの行動力のお陰で、私はずいぶん救われましたし、こうやって今の活動に繋がっていると感じています。

もしかすると、火事の体験をした者同士の初対談になったかもしれません。

個人災害のその後は、情報が表に出ることも出せることも少ないジャンルだと思います。

それでも、個々人の体験をこうして記録し、発信することで火事に遭った誰かの役に立てるのではないかと信じています。

今回のインタビューを皮切りに、今後も火事経験者にインタビューを行い、火事に遭った誰かへの力になりたいと願っています。

インタビュー・構成:堀池真希
撮影:表ロビー純平

最後までご覧いただき、ありがとうございます。

何か一緒にできるかもしれないと感じられた方は、ぜひご連絡ください。

horiikemaki@gmail.com


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火事の当事者となり、火事後の行動や手続きについて情報が少ないことを実感しました。

火事に遭ったときに手に取れるガイドブックにしたいです。

そのために、この記事を出版社に持ち込みたいと考えています。

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堀池真希
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