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コーヒーコラムがはじまります

こんにちは、堀口珈琲です。

前回の投稿では「堀口珈琲がnoteを通じて伝えたいこと」についてお話しました。この投稿で初めましての方は、こちらにもお目通しいただければ幸いです。

記念すべき本編の第1回からは、2020年7月に当社の代表取締役社長に就任した若林による「社長・若林のコーヒーコラム」をお届けします。




わたしのこと

 はじめましてですので、私の話を少しさせてください。堀口珈琲への入社は 2005 年。まったく別の業界からの参入でした。それから早くも15 年が経ちましたが、その間に喫茶でのサービスや焙煎豆の販売、製造(焙煎・ブレンド)、生豆の調達・流通と、コーヒー業の川下から川上まで担当し、多様な観点でスペシャルティコーヒーと歩ませてもらえました。
 この度、代表取締役社長という新しい役割を担うことになりましたが、引き続き、堀口珈琲をよりおいしく楽しくし、そしてコーヒーを取り巻く世界がほんの少しでも良い方向に進む一助となれるよう、コーヒーと向き合っていきます。


スペシャルティコーヒーの登場と隆盛

 さて今回は、コーヒーにとっての素材である生豆(なままめ)の変遷を通して弊社の特性を紹介したいと思います。
 私が堀口珈琲に顧客として出入りしていた 2000 年代前半には、付加価値が極めて高いコーヒーを指す言葉として「スペシャルティコーヒー」が日本でも使われ始めました。「〇〇農園産 」や「〇〇さんのコーヒー」といった、誰が生産したのかがわかる生豆が一般的に流通し始め、生豆の品質が飛躍的に進歩した、そんな時代です。
 私たち焙煎業者(ロースター)が生豆の品質を鑑定する際も、「おいしさ」につながる品質のポジティブな面を重視するようになりました。特徴的な風味(キャラクター)が明確な生豆には特に高い評価を与えるようになったのです。こうした 姿勢は、クリーンな風味を損なう不良な生豆など(「欠点」といいます)の混入といったネガティブな面のチェックに力点を置いてきた「スペシャルティ」以前とは対照的です。
 生豆を生産する側もこれに呼応するように、高付加価値市場=スペシャルティ市場に参入すべく、より細やかな作り込み、差別化を図る取り組みがなされました。高品質な生豆が多様に生まれ、「サードウェーブ」という言葉が流行した 2010 年代中盤には、素材の品質という観点ではスペシャルティコーヒーは隆盛を極めました。

2013年 エチオピアへの産地訪問時 農家の子供たちと


スペシャルティコーヒーの変調

 しかし、生豆の品質が現在も一方向的に向上を続けているかというと、そうとも言えません。
 最近はロースター側が味わいのクリーンさよりも「特徴」に付加価値を見出す傾向をさらに強めています。風味のキャラクターやインパクトを重視するあまり、クリーンさを損なう欠点を軽視し、欠点由来の風味すらも個性の一部ととらえる風潮さえ出てきました。
 その結果、本来求めるべき「おいしさ」という観点が置き去りにされることが多く発生しています。
 ポジティブな要素を積極的に評価しようとして発展してきたのに、ネガティブな要素の排除という基礎となる部分を疎かにしてしまう。そうした逆説的な課題にスペシャルティコーヒーは直面しているのです。今はそんな時代だと私はとらえています。


堀口珈琲の信念

 本当に高品質な生豆とは、欠点が徹底的に取り除かれており、その結果として風味上の個性が自然に浮かび上がってくるものです。堀口珈琲はそういった生豆を得るために、良い環境を探し、コーヒーの木を健康に管理してもらい、完熟したコーヒーの実からできるだけダメージを与えないように種子(生豆)を取り出してもらい、かつ日本まで運んでくることに心血を注いできました。
奇をてらったことをしようとはしていません。当たり前のことをやりきる。これが本当のおいしさに繋がると確信して、当たり前をやり切ろうとチャレンジしています。
 現在のスペシャルティコーヒーの世界では、クリーンなコーヒー、繊細な風味のコーヒーは失われつつあります。こういった時代だからこそ、堀口珈琲はこれらを大切にし、一つの基準とされるような、「最後の門番」と言われるような、そんな存在でありたいと思っています。

Profile
若林 恭史(わかばやし たかし)
1980 年埼玉県秩父市生まれ。2005 年堀口珈琲に入社し、焙煎・ブレンディング・生豆調達の担当者として経験を積む。生豆事業と焙煎豆製造・流通の各部門の統括者を経て、2020年7月より現職。
コーヒーを仕事にしてしまったので、趣味と呼べるものはないが着物が好き。画像の和装は、新春に合わせてつけた半襟をベースに所有の着物から選んだ。どちらも新潟県産の反物で、羽織は十日町、着物は塩沢のもの。

▽ 5月6日更新:コーヒーコラム第2回を更新しました


このコラムは2021年1月13日配信のニュースレター「HORIGUCHI COFFEE Letter No.1」を再編集したものです。