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AI時代に必要なクリエイティビティはプロデュース能力だ

クリエイティブな仕事に求められる能力は、今や大きく変化している。
これまでクリエイティビティといえば、斬新なアイデアを生み出すことが重要視されてきた。しかし、AIの進化により、創造性の役割はより広く、より深く進化している。その鍵となるのが「プロデュース能力」である。

クリエイティブのスマイルカーブ化とは何か?

クリエイティビティの世界は、今やスマイルカーブと呼ばれる形で表現できる。スマイルカーブとは、価値が最初と最後に集まり、中間が比較的低くなるカーブのことだ。

製造業におけるスマイルカーブ例

AI時代のクリエイティブも同様だ。
曲線の最初には、人間が発する「問い」が位置する。例えば、「どうすればこの製品をもっと魅力的に見せられるのか?」といったインスピレーションの段階だ。

次に、カーブの中間にはAIが入る。AIは具体的な提案やプロトタイプ、デザインの作成などを迅速に行う。そして最後に、もう一度人間が登場する。人間はその中から価値のある選択肢を見つけ出し、全体を統合して完成させるのだ。

AIスマイルカーブ

この流れを見れば明らかだ。
創造的なプロセスの中心にあるのは、もはやひとりで完璧なアウトプットを生み出す力ではない。むしろ、最適な問いを立て、AIの力を引き出し、結果を評価し、目的に合わせて全体をプロデュースする能力が重要になっている。

デジタルは失敗を許容する

デジタル技術の特筆すべき点は、その失敗への許容度である。
たとえば、バーチャルリアリティを活用した建築プロジェクトを考えてみよう。設計者はVR空間で仮想の建物を何度でも建て直すことができる。初めての試みが成功する必要はない。むしろ、何度も失敗することで新たな発見が生まれるのだ。この「失敗の許容」は物理的なプロジェクトでは考えにくいが、デジタルの世界では可能である。

バーチャルリアリティを活用した建築プロジェクト

同じことがクリエイティブなプロセスにも当てはまる。AIを活用した広告キャンペーンのプロデュースでは、膨大な試作品を短時間で生成できる。数十、数百のアイデアを生成し、その中から有望なものを選び出し、さらに磨きをかけていく。このアプローチが可能になるのは、デジタルだからこそである。

新しいルールはバーチャルから生まれる

さらに注目すべきは、こうしたプロセスが新しいルールややり方を生み出す点だ。たとえば、AIが生成するアートや音楽は、従来のクリエイティブの枠組みを超えている。人間が思いつかないような視点やスタイルを提供し、それを基にした新しい表現が次々と登場している。これらは、最初は奇妙に見えるかもしれないが、やがて「普通」や「トレンド」になるのだ。

このように、バーチャル空間でのトライアルから現実世界に通用するアイデアが生まれる。このプロセスを制御し、結果を引き出す能力こそが、プロデュース能力の本質である。

AI時代のプロデュース能力を日常でどう活かすか?

では、プロデュース能力をどうすれば日常生活や仕事に活かせるだろうか。以下に3つのポイントを挙げる。

1. 良い問いを立てる訓練をする
日常的に「なぜこの方法を選んだのか?」と問い直す習慣を持とう。AIに仕事を任せる際も、良い問いを立てることで有用なアウトプットを得る確率が高まる。

2. AIを試す環境を作る
例えば、無料のAIツールを使って小さなプロジェクトに取り組むことで、デジタル環境で失敗し学ぶ経験を積むことができる。家庭での料理のレシピや趣味のデザインにAIを使うのも良い練習だ。

3. 結果を評価し、目的に結びつける練習をする
AIが提供する結果をただ受け取るのではなく、「この結果は目的にどう役立つか?」を考え、必要ならば他の手段と組み合わせて最適な成果を引き出す。この習慣がプロデュース能力を向上させる。

AIは人間の創造性を奪うものではなく、むしろ拡張するものである。ただし、それを最大限に活かすには、新しい時代のクリエイティビティの中心に立つ「プロデュース能力」が求められる。この能力を磨くことで、AI時代において価値ある存在となるだろう。

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