【独自研究】「リリスは投げ以外の崩しがないから弱い」は正しいか
「リリスは投げ以外の崩しがないので弱い」という言葉自体は、世の中に広く出回っているものだと思っている。たしかに、高速中下段やガード不能のセットプレイ、強力なコマンド投げなどを持っているわけではないので、通常投げをより中心に据えて使っていく必要のあるキャラだということは分かる。
ただ、よく聞くこのフレーズは本当なのだろうかとふと疑問に思った。そんなに崩せないはずのキャラと対戦していてなぜチェーンルミナスをあんなに食らっているのだろうか?また、本当に崩しの乏しさが弱さに繋がっているのか?という点についても考えてみたくなった。ここから派生して、セイヴァーにおける「崩し」とは何か、という点についても考えることができる。
「投げしかない=弱い」は正しいのか
そもそもの話として、投げ以外の崩しがないと言っているが、セイヴァーには投げ一本で食っているキャラもいるはずだ。「投げ以外の崩しがない」と粒立てて言うのは、その投げに問題があると考えているからではないだろうか。
通常投げ中心で戦っているのにその点を問題視されないキャラの最たる例はガロンだろう。ガロンのK投げに怒ったことのないプレイヤーは有史以来ひとりもいない。そのぐらい投げだけで試合を支配できるキャラなのに、「ガロンは投げ以外の崩しがない」とは言われないのは何故だろうか。これは、そもそも投げの強さが全く違うことが理由だろうと考えた。
ガロンのK投げの性能は大まかにいうと以下のようになっている。
自動二択になる(=ジャンプで回避できない)
一回で画面端まで運べる
対の選択肢が強い(中足ESビースト)
投げ間合いは12ドット
投げ抜けされてもガロン側が大幅有利(+7F)で運ぶ距離も変わらない
ではリリスはどうだろうか。比べてみるとこうなる。
自動二択:一応なる
運び:ほぼなし
対の選択肢:かなり強い(チェーンルミナス)
投げ間合い:12ドット
投げ抜け後:リリス側がマイナス2F
つまり、ガロンのようなキャラが相手をポイポイ投げているのは、投げた後の状況が常にガロン有利で、再度起き攻めをすることが容易だからといえる。一方でリリスは、一度でも投げ抜けされると、背負った2Fの不利をどうにか解決するところから始まってしまい、起き攻めどころではない。つまり、この「投げ抜けされると不利」という投げの弱さこそが、リリスの崩し手段に対する評価を下げている。
リリスが投げに来て何度か投げられたとして、どこかで投げ抜けさえしてしまえばその後の展開はどうにでもなるため、投げを食らってもトータルで見て痛くないと感じられる。投げ以外に選択肢がないことが問題なのではなく、投げがほぼ唯一の選択肢であるはずなのに、投げても試合が良い方向に傾かない、という部分が問題の焦点なのだろうということが、こうして考えてみると分かる。
”投げしかないから弱い”のではない。”投げが弱い”のだ。
投げ以外の崩しはないのか
次に、本当にリリスに投げ以外の崩しはないのかを考えてみる。結論から言うと少なくとも2種類ある。
ひとつは、ほぼすべての2D格ゲーに共通して存在する、表裏2択という選択肢。相手をダウンさせて起き上がりに密着し、表から攻撃を重ねる場合と裏回ってから攻撃を重ねる場合の2択で、前後のガード方向を揺さぶる方法。移動起き上がりの読み合いがあるうえ、正確な操作が必要なので実行する難易度は高いが、ガード切り替えに必要なレバーの移動距離が長いので、見てからガードすることはほとんどできない。
もうひとつは、セイヴァー特有の選択肢として、空対地での空中チェーンによる2択というものがある。セイヴァーはジャンプ中でもチェーンコンボが出せるため、一度のジャンプで複数段の攻撃を繰り出すことができる。この際、しゃがんでも当たる技で空中チェーンを構成すると次のような2択になる。
1.ジャンプ攻撃1段止め→着地して下段・・・ジャンプ攻撃2段のタイミングまで立っていると着地下段を食らう
2.ジャンプ攻撃2段チェーン・・・着地下段のタイミングでしゃがむと2段目を食らう
特に、飛び込まれる側としては最終段にアドバンシングガード(AG)をかけるなどして防御しようと考えるため、最後まで立ってガードしようとすることが多く、AGを意識すればするほど1を食らいやすくなる。加えて、リリスはジャンプ大Pの判定が非常に強いため、それを盾にして対空を封じることができ、ガード以外の選択肢を取れないことが多い。
つまり、リリス側に自由に攻めさせた場合、操作精度の問題はあるにしても、厳しい2択を迫ること自体はできるといえるだろう。
リリスの崩しは机上の空論なのか
上で「リリス側に自由に攻めさせた場合」と書いた。では、現実的にリリスが一方的に攻めている場面というのは対戦で起こり得るのだろうか。
一方的にマウントを取って起き攻めを仕掛けるためには、まず相手をダウンさせなければいけない。リリスがダウンを取る代表的な方法は以下の3つだろう。
(A) 通常投げ
先述した通り、これは弱い。投げ抜けされてしまうと攻めを継続できない。
(B) チェーンコンボ(大足締め)
実のところ、リリスが弱いのは投げだけではない。しゃがみ大Kの性能も地味に低い。小技先端当てだろうがチェーンで確実に繋がるようなキャラと比べると、発生の遅さが災いして連続ヒットしない場面がとても多い。画面中央のリリスが4ヒットチェーンをしゃがみ大Pで締めている場面があなたもたくさん思い浮かぶことだろう。
(C) 昇竜拳(GC含む)
これはキャラ固有の選択肢だが、ESGCなら初段がガード不能だったりもするので、モリガンと比べて性能が微妙だとしてもそれなりに信頼できる。ただし、立ち回りの昇竜拳は空中ガード可能なこともあり、思ったよりも当たらない。高度な予測と正確な入力精度が必要なため、難易度は高い選択肢と言える。
つまり、リリスは攻めについては光るものを持っていると言える。歩き速度は速い部類であるため表裏2択をかけやすく、空中攻撃も便利なものが揃っており空中チェーンでの飛び込み2択もやりやすいはずだ。しかしながら、そうした状況を作るまでの過程に耐えがたい困難がたくさん待ち受けている。
これこそがリリスの弱みの正体ではないだろうか。
もしも投げを抜けられなかったら
実は、ここまでの内容はすべて「通常投げは抜けられる」という前提で書いている。つまり投げを抜けさせなければこの前提を崩すことができる。そのためにはどうしたらいいだろうか?
ヴァンパイアセイヴァーの投げ抜け(正確には投げ受け身)は、投げ技を食らった時に前or後ろ要素 + 中or強ボタンを入力する、という仕組みで、入力受付は投げで掴まれてから7フレームとなっている。投げられたのを見てから抜けるということは物理的にできず、予測で入力する必要がある。
投げ抜けのみを目的にボタンを押すことはあまりなく、大抵はAGの入力が投げ抜けとの複合になっていて抜けているケースがほとんどだろう。つまり、ストリートファイターシリーズにおける遅らせグラップのように、打撃をガードするタイミングでAGを入れておけば自動で投げも抜けられる、という仕組みになっている。
これを打ち破るためには、AGに大きいリスクがあると印象付け、AGを入力させないようにするしかない。つまりズラしから最大コンボを叩き込む必要がある。ズラしとは、AG入力時にガード状態でなかった場合は通常技が漏れることを利用して、数フレームだけ遅らせて技を重ねることによりタイミングをずらし、AG失敗の通常技を出させてその発生前にこちらの技をヒットさせるというテクニックのこと。
一瞬待って技を出すだけといえば簡単そうだが、セイヴァーの速い展開の中で移動起き上がりの読み合いを制したうえできちんと相手に技を重ね、そのうえで数フレームずらすかどうかの駆け引きを仕掛けるというのは、なかなか簡単なことではないはずだ。しかも、先述した通りリリスは大足の性能も低い。ダウンしないチェーンコンボなんて大した脅威には感じられない。となると、チェーンコンボからルミナスイリュージョンまで入れるしかないだろう。こうなるとどれほど練習が必要かは言うまでもない。
つまり、「投げ抜けさせない攻め」を繰り出すだけでもとても難しいといえる。それを習得するまでには大変な修練が必要になることだろう。そうしているうちにも、サスカッチやガロンやフェリシアの甘い誘惑が待っている。もっと簡単に勝ちたくないか?と囁きかけてくる。果たしてあなたはその誘惑に打ち勝てるだろうか。悪魔は誰しもの心の中に潜んでいる。
リリスは弱いのか
記事タイトルに戻ってみる。出発点は「リリスは投げ以外の崩しがないから弱い」は正しいのか?という視点だった。
まとめてみると結論としてはこうではないかと考えている。
投げ以外の崩しはあるが単純に難しい
崩せるシチュエーションを作ること自体も難しい
強みはなくはないが難しすぎて発揮されない
つまり、難しいから弱い。たとえ強みがあってもそこまでたどり着かない。こんなに人気のあるキャラのはずなのになぜここまで高難易度になってしまったのか。悲しい話だと思う。リリスは弱い。
いままでキュービィのしゃがみ中Pでシャイニングをスカしまくって申し訳ないと謝罪してこの記事の締めくくりとしたい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?