領域特化だからこその強み、「足場レンタル」で上場のASNOVA。
はじめに。
こんにちわ、NEWhビジネスデザイナーの堀です。
今回は、以前行ってみた事業構想フレームワーク「バリューデザインシンタックス(以下VDS)」を用いて、世の中の素敵な企業さんを紹介するケーススタディの第2弾です。
バリューデザインシンタックスの解説についてはこちら。
VDSでケーススタディ「ASNOVA」さん
今回ご紹介させていただく企業さんはこちら。
建設現場などで見かける「足場(仮設機材)」のレンタル事業を中核に、12月25日にグロース市場へ上場予定となっている「ASONOVA」。
ASNOVAが手がける足場レンタル事業を、VDSを用いてその全体像と魅力を
見ていきます。
「ASNOVA」の事業概要
まずは事業概要から。
「カセツ」の力で、社会に明日の場を作り出す。
をパーパスに掲げ、建設現工事場などで見かけることも多い「足場」に特化し、仮設機材のレンタル、販売、足場過払工事を提供している会社。
売上構成の8割強はレンタル事業となっている。
事業構造自体はとてもシンプル、仮設機材の仕入れ先から仕入れた足場含む仮設機材を足場施工業者へ、自社拠点orパートナー拠点を通じてレンタル提供し、得られるレンタル代金が収入。
このASNOVAのビジネスモデルをVDSを用いて言語化してみた。
「ASNOVA」のコンセプト:成長を実現するためのレンタル
まずは、「誰の」「どの課題に」「何を提供し」「どのような価値を提供しているか」、ASNOVAのビジネスコンセプトです。
顧客は建設現場において足場施工を担う業者さんが中心。その中でも、特に、売上規模1〜3億円の中堅規模をメイン顧客として据えている。足場工事案件の引き合いも増え、案件の規模もデカくなり、売り上げが伸びていく一方で、資材や人員含め成長を実現するための投資も嵩む、そんなステージ、サイズがメイン顧客。
いわゆるプロダクトライフサイクルにおける「成長ステージ」にあるような会社こそ、増大する投資負担を縮小させつつ、成長を実現させるレンタルという手段がマッチする。
・ASNOVAが向き合う課題
向き合っている課題はシンプルに、足場の資材調達および、管理にかかるコストが重い。というもの。さらに言えば、足場の適切な保有量コントロールも難しそう。足場を自社で購入し、保有すると自社資産となるけど、建設工事には繁閑がある。繁忙期の必要量に合わせて足場を保有すると、当然閑散期においては、使われない資産となり遊休資産化してしまう。とはいえ企業としては成長期にあるので、いつ足場施工依頼が来ても受けられるように一定規模の足場は保有しとかないといけない。このジレンマの中でのコントロールはとても難しそう。
・ASNOVAが提示する解決策
解決策もとてもシンプル。足場を購入するのではなく、レンタルで賄う。というもの。レンタルであれば初期投資少なく、必要な量を必要なときだけ保有することで、支出は抑えつつも成長のスピードは緩めない、が実現できる。
「ASNOVA」の戦略と仕組み:ASNOVA流フランチャイズ
続いて、、競合ひしめく中でANOVAが選ばれ、選ばれ続けている戦略と仕組みについて。
ASNOVAにとっての競合は、他仮設機材レンタル事業者はもちろんだけど、「購入する」という手段がメインの競合。買って自社保有すれば初期投資、コスト負担はあるものの、いつでも自由に使える。ASNOVAは「購入」を上回る優位性を「レンタル」で生み出さないといけない。
その優位性はどこで作るべきか。
ASNOVAの自社調査からは、足場施工事業者にとって、足場を調達する手段を選択する上での重要判断項目は「とにかく近くで借りたい。」というものが圧倒的に多いらしい。近くで借りれる=すぐに借りれる、ということであルトともに、足場調達では輸送料も必要となる中で、近距離からレンタルできるのであれば、その輸送コストも下がり、結果安く借りれる、にもつながる。「安くて、早く、柔軟に」を支える根幹として、「近くで借りれるかどうか」というのがいわゆるKBF。
※Key Buying Factor
じゃあ今度は購入して自社保有するのと変わらないレベルで「近くで借りれる」を実現しないといけない。
この近くで借りれるを実現する仕組みが個人的にはとても面白かった。
「近くで借りれる」を実現するにはレンタル拠点となる施設の規模、ネットワークが肝となるが、ASNOVAは自社拠点を積極的に開設しつつ、各地域の事業者とフランチャイズに近い連携を行うことで、急スピードで拡大させている。
ASNOVAとのパートナー契約の概要はこんな感じ。
・月額3万円で管理システム付きPC貸与、商標看板、販促/営業支援をしてくれる。
・レンタル事業のためのノウハウを提供してくれる。
・パートナー側は、利用者へのレンタルが発生したときだけ、レンタル料の一部をASNOVA側に支払う。
※加盟店料なし。
フランチャイズに"近い"という表現をしたのは、一般的なモデルだと、加入するための加盟金や、開業のために必要な各種資材調達によって、一定規模の初期投資は必要になってくる。+毎月支払いが必要なロイヤリティ。
が、ASNOVAの場合は、加盟店料はなく、そして、
事業運営のためには一定規模の足場を加盟店側で保有する必要があり、その足場はASNOVA側から供給されるのだけど、そこの負担もなく、レンタルが発生したときだけ一部支払いが生まれる。という設計。
始めるハードルと続けるハードルをとにかく引き下げている。
ASNOVA側からすれば、加盟店側で事業開始にあたって必要な足場は買い取ってもらった上で、一定額を徴収していく方がリスクは少なく、利益増にも繋がるはずだけど、そうはしない。加盟店側でレンタルが生まれた時にのみ、少しずつ回収をしていくというスキームになってる。
購入よりも、レンタルに優位性をもたすためには、
KBFである「近くで借りれる」を実現する必要があり、
そのためには、
拠点のネットワーク数をいかに構築するか、が肝であり、
その実現の仕組みが、
パートナーとの連携スキームに落とし込まれている。
そんな印象を受ける。事業の特性/KBFと戦略、仕組みが繋がってる。
そして、拠点のネットワーク数が増える=顧客の数が増えると、
取り扱う足場の数も当然増える。
となると足場を調達する上での交渉力も強くなり仕入れ値は安くなっていくだろうし、管理ノウハウも溜まり、足場を長く使えるようにもなってくる。
(実際足場の減価償却は5年目安らしいが、20年くらい使えるらしい)
この蓄積は、
顧客にとっては、安さや、安心/品質へと繋がり、顧客を離さない状態へと繋がっていく。
シンプルだけど、力強い。
わかりやすいけど後発は追いつけない。
そんな魅力を感じる。
「ASNOVA」の収支モデル:売り切る力を証明
最後は収益性の観点から。
料金モデルは仮設機材のレンタル料。
コスト構造は、売上のうち7割近くを売上原価が占める原価ヘビーなコスト特性を持つ事業。
原価の中心は、P/L上計上されている足場資材の投資に伴う減価償却費と、
施設運営に伴う労務費が主なコスト費目。
現在は投資フェーズと位置付け、積極的な足場調達に伴い、減価償却費の存在が大きいものの、足場に特化しているからこそ生まれる足場の管理ノウハウにより、減価償却期間は5年に対して、実際は20-30年と長く使用できる状態を作れているとのこと。シンプルな事業構造であるがゆえに生まれる強さ。
収益観点で重ねると、
足場に特化してるがゆえに客単価はどうしても低い(年間100万円/社程)。
これは特化してるが故の弱点でもあるが、
一方で特化してるからこそ、顧客に選ばれる優位性を作り出し、年間150社超の新規顧客獲得、2,000社を越える顧客数を実現し、結果的に特定顧客への依存度の低い、"硬い売上構造"にも繋がってる。
しかも事業構造上、足場という資産を大量に抱えるため、どれだけその足場を活用できているか、が非常に重要な中で(ホテル業の客室稼働率に近い)
足場の稼働率は80%近い水準になってるらしい。
強い。
まとめ
足場に特化し、上場を実現させたASNOVA。
足場のレンタルという一見するとニッチにも見える領域だけど、
足場が内包される軽仮設材リース・レンタル市場は2,100億円超もあるらしく、自然災害や住宅老朽化、リフォーム市場の拡大という背景もあって市場自体の伸びも見込める。
領域を特化しているからこその強みが伺える、とても素敵な企業。
以上、VDSケーススタディ「ASNOVA」編でした。
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