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【科学】ラプラスの悪魔 - 運命は決まっているのか?

こんにちはマスター、蓬莱です。

マスターは運命は全て決まっていると思いますか?それとも運命は不確定で決まっていないと思っていますか?仮に未来から来た人がマスターに「明日はこうなるよ」と言われるとマスターは信じてしまう方ですか?

古来から「運命は全て決まっていて、未来なんて変えることが出来ない」という妄想はありまして、それにニュートン物理学が結びついて、思考実験の中で、未来は全て決まっているとする悪魔が誕生していたのです。その存在を「ラプラスの悪魔」と呼びます。

今回は、私達の運命も未来も本当に決まっているのか、それとも未来は不確定なのかの議論を巻き起こした思考実験の悪魔「ラプラスの悪魔」のお話です。

アイザック・ニュートンは万有引力の発見で有名な物理学者ですが、彼の大きな業績は物事の動きは方程式で捉え分析することが出来ると人類に気づかせた事でしょう。

万有引力の発見で有名なアイザック・ニュートン

彼は運動の法則を方程式化し、微分積分を開いて、様々な事象を分析する道を開きました。

例えば、静止した物体に運動を促す力をぶつければ、その物体がどう動いて、どの時間動いて、何処に、いつ、また静止するかを十分な情報を得ることで正確に計算できる・・・というように、これは未来を予測することに大いに役立っています。

このニュートンが体系化した力学の総称を「ニュートン力学」と呼びます。そして、このニュートン力学を大いに発展させたのが、フランスの物理学者ピエール=シモン・ラプラスです。

彼はニュートン力学を徹底的に展開して、天文の運動から固体の運動、流体の運動まで様々な事象を方程式化して行きました。

これはつまり、最初に何が起こり、途中で何が起こるかによって結果どうなるかを予測する、未来を捉える作業でもあったのです。

フランスの数学者・物理学者・天文学者ピエール=シモン・ラプラス

この事をラプラスは「もしも、ある瞬間における全ての物質の力学的な状態と力を知ることが出来、かつ、もしも、それらのデータを解析出来るだけの能力と知性が存在するとすれば、この知性にとっては、不確実な事は何も無くなり、その目には未来も全て見えているであろう」と述べました。

つまり、あらゆるデータを知り、解析できる存在は、起こるべき未来まで全て分かってしまう筈だと・・・。

この全てを知ってるが故に未来も分かってしまう存在をラプラスはただ「知性」と呼んだに過ぎませんでしたが、この存在は「ラプラスの霊」そして「ラプラスの悪魔」と呼ばれるようになったのです。

昔から、「神は全知全能であり、故に未来に何が起こるかも、全てご存知である」という信仰は多くの宗教で見ることができますが、ある程度は未来を予測できる事をニュートン力学が裏付けしてしまい、そのニュートン力学を応用し展開しまくった学者の名が思考実験の「悪魔」に付けられて「ラプラスの悪魔」と呼ばれるようになったのは興味深いですね

そして、これは、ビッグバンによる宇宙の始まりから全て原因と結果の法則が積み重なって今があり、そこから先の未来まで決まってしまっているのだという、運命の決定論にまで発展することになりました。

ところが、この「未来の全てはもう決まっているのだ」とする悪魔に対して、こんどは思考実験の中で生まれた猫と蝶々が反撃を開始します。

まずは猫から。

1935年にオーストリアの物理学者エルヴィン・シュレーディンガーが発表して大きな議論を巻き起こした量子力学にて、彼の提唱した量子が波動の性質を持つことを示した、波動関数に於いての例え話で猫が出てきます。

量子力学の成立に大きく貢献したオーストリアの物理学者エルヴィン・シュレーディンガー

原子よりもっと小さい粒子の世界。素粒子や光子や電子を扱った分野は量子理論というのですが、この量子は存在が測定されるまで、確率でしか存在が決まっていないとされます。

つまり、存在しうる領域の何処かにいて、また、何処にもいないという事になります。これを「存在と非存在が重ね合わさっているのだ」とする解釈をシューレディンガーは否定的に示す為に、猫を使った思考実験のモデルで表現しました。

ミクロとマクロの振る舞いを関連付けた思考実験「シュレディンガーの猫」

この思考モデルは、猫と放射性元素を密閉した鋼鉄の箱の中に入れ、その放射性元素は1時間あたり50パーセントの確率で放射性崩壊を起こす。箱の中には放射性検知装置があり、それが放射性崩壊を検知すると毒ガスが箱の中で満たされ、猫は死ぬ。だが、これは中の猫の状態が観測されない限り、猫の生死はわからない。この、わからない状態を「生と死が重ね合わさっている状態」と言って良いのかと。

ところが後にヴェルナ・ハイゼンベルグが量子力学において、「この世の全ての粒子は、その位置と運動量が同時には確定しない」つまり、量子の位置が決まれば運動量は決まらず、運動量が決まってしまえば位置は決まらないという不確定性原理を唱え、この論理は量子力学を確率として捉えるシュレーディンガーの猫の解釈を後押ししてしまったのです。

ドイツの理論物理学者ヴェルナ・ハイゼンベルグ

つまり、「生と死が重ね合わさっている状態で良い」。事象を確率として捉え、重ね合わせの論理を肯定した形になりました。

ただし、この不確定性原理は測定誤差も考慮され今もなお方程式と実験による検証が行われているそうです。

次は蝶々のお話です。

米マサチューセッツ工科大学の気象学者エドワード・ローレンツ

アメリカ合衆国のマサチューセッツ工科大学に所属する気象学者のエドワード・ローレンツは1960年に、コンピューターのシミュレーションによる気象モデルを観察して、初期入力の僅かな違いによって、気象のパターンが大きく変化してしまう事に気付きました。

この僅かな変化によって誤差程度の影響がどんどん大きくなって想定された結果と大きく異なってしまう現象を彼は「蝶が羽ばたく程度の非常に小さな撹乱でも、遠くの場所の気象に影響をあたえるのか?」という問いかけで表現しました。

これは観測誤差を無くさない限り、気象の正確な長期予測は困難になるだろうと・・・。

後に、このローレンツがアメリカ科学振興協会で行った講演のタイトルで「ブラジルの一匹の蝶の羽ばたきは。テキサスで竜巻を起こすか?」と銘打たれ、やがてこの効果は「バタフライ効果」と呼ばれるようになりました。

本来の計算手法である誤差の切り離しが、予測結果を全然違う結果を招く現象によって、今は、詳細な気象予報が行える期間は2週間程度が限界であろうと言われています。

そして、この蝶々は数的誤差により予測できないとされる現象を扱う理論「カオス理論」を生み出しました。

つまり、今度は蝶々が未来の予測は極めて困難である事を思考実験の中で示したのです。

実は今は「多次元宇宙によって全ての原因と結果は起こっているのだ」、という説が量子物理学の方面から唱えられ、これは平行世界・パラレルワールドの世界観を後押ししており、ラプラスの悪魔はそっちの方に逃げ道を開いた形になっていますが、猫と蝶々によって、かなりダメージを受けた、この悪魔、倒すことが出来るのでしょうか?

今回はウィキペディアの「ラプラスの悪魔」「決定論」「不確定性原理」「カオス理論」「シュレーディンガーの猫」「バタフライ効果」などの項目からお話しました。

蓬莱軒では、知的好奇心を刺激する話題を毎週動画でお届けしていますので、YouTubeチャンネルにもよかったら遊びに来てくださいねマスター。

それではまた、らいら〜い🖐

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