玉の間攻略編 ⑦:BestではなくBetterを意識しよう(その1)

【BestではなくBetterを意識する】

麻雀は4人でやるゲーム。つまり、ほぼ同レベルの人間が卓を囲む場合、自分が和了ることのできる確率は単純計算で1/4です。つまり、残りの3/4、75%は和了ることができないんですね。(※実際には流局もあるので和了の確率はもう少し小さくなります)「いきなり何偉そうに言ってんだ、そんなの当たり前だろ」というツッコミが秒で飛んできそうですが、実はこの残り3/4をどう意識するかが麻雀の成績を大きく左右するのでは?、と自分は考えています。

簡単な説明のために、麻雀の盤面で起こり得る事象を以下5つの要素に分解してみることにします。

「いつ」
「誰が」
「誰に」
「どのように」
「どうした」

はい、中学の英語の授業みたいですね。これに麻雀の盤面で実際起こる具体例を追記してみます。

「いつ」
 →東1局、東2局、東3局、東4局、南1局、南2局、南3局、南4局
「誰が」
 →トップ目の自分、2着目の自分、ラス目の自分、トップ目の親、
  ラス目の親、ラス回避争いの子、横一線の子、トビ寸前の他家
「誰に」
 →トップ目の自分、2着目の自分、ラス目の自分、トップ目の親、
  ラス目の親、ラス回避争いの子、横一線の子、トビ寸前の他家
「どのように」
 →満貫を、跳満を、役満を、1000点の安い手を、3900を、
  リーチで、ダマで
「どうした」
 →和了った、放銃した、テンパイ流局した、ノーテン流局した

こんな感じで、麻雀の盤面で起こり得る事象はいくつかの要素の掛け算でできているんですね。そして実際には、局の終盤になるにつれて実現可能性のある要素の数はどんどん少なくなっていき、従って起こり得る事象のパターンもいくつかに限られてきます。

ここでもし「自分が和了する」という事象(=Best)の発生確率が限りなく0に近いとき(例:河2段目終了時にまだリャンシャンテン、親リーに対して愚形愚形のイーシャンテン、対面と下家が3副露...など)、残りの3/4、75%として起こり得る事象の中から自分にとってマシ(=Better)なパターンはどれなのか?そしてそのパターンの実現に向けて自分ができることは無いのか?ということを意識して立ち回る。これこそが麻雀における押し引きの根幹であり、意識すべきポイントである、というのが今回のnoteで主張したい点ですね。

参考までに、筆者である私はこんな感じで毎局毎局目標設定をざっくり4パターンに分けて行ってから対局に挑んでいます。

目標A:最高/Best  「最高の結果!(だけど実際には難しそう)」
目標B:現実/Better 「まぁ、現実的にはここを目指そうかな」
目標C:最低限/Bad 「この結果までならギリギリ許容できる」
目標D:最悪/Worst 「この未来だけは絶対に避けなければ!」


【Betterな選択肢の見極め:問題】

それでは、具体的な牌姿を用いて考えていきましょう。例えばこんな場面。
(※『全体牌図作成くん』ツールを利用させて頂いております)

better02最終

南3局0本場、自分は18500点持ちの3着目。トップ目の下家がタンヤオ風味の副露を2つ入れた後、たった今ラス目で後がない対面の親がドラの中をポン、打西としました。続く上家が9sを手出し、自分は9sをツモりました。手牌は愚形多目のリャンシャンテン。さて、この手牌から何を切りますか?

 (1)中
 (2)9s
 (3)1m
 (4)3s
 (5)5p
 (6)上記以外

さて、何切るを考えるための材料として、まずは現在の状況を整理してみましょう。

《点棒状況》
・対面の親が4000オールをツモるとラスに転落してしまう。
・仮に自分が2000-4000をツモっても、2着目の上家とは7000点差でオーラス。つまり1300-2600ツモ/出和了り7700以上、とやや厳しい条件が残る。

《他家の動向》
・対面の親はドラをポンしていて12000確定。
・上家は字牌と19牌を処理している最中で、かなり手牌進行は遅そう。
・下家はタンヤオ濃厚、そんなに打点は高くなさそう。
・自分は喰いタンにいっても愚形ばかり、打点も2000点しかない。


【Betterな選択肢の見極め:解答】

それでは考えていきましょう。この場面において、というより通常ほとんどの盤面においての最高(=Best)なパターンとは、自分が和了することですね。ですが既に他家2人から仕掛けが入っていて、なおかつ自分の手牌が愚形残りのリャンシャンテンという今回のケースではなかなか厳しいでしょう。それではその真逆、この場面において最悪(=Worst)なパターンはどんな未来でしょうか。言わずもがな、ラス目の対面親が4000オールをツモ和了りすることですよね。その場合、点棒状況は以下の通りになります。

 @現状
  自分18500/上家35500/対面6000/下家40000 3着目で残り2局
 @Worst = ラス目対面親の4000オールツモ の未来は? 
  自分14500/上家31500/対面18000/下家36000 ラス目で残り2局

なんとしてもこの未来だけは避けなくてはいけません。しかし自分のこの手牌から和了りに向かうのは厳しいし、かといって上家の河を見るとかなり手牌進行は遅そうです。さてどうしよう・・・。

ここで注目すべきなのが、下家の存在です。現状トップ目のやや余裕のある立場から2副露を仕掛けています。最低イーシャンテン、テンパイである可能性も高いです。では下家の役と打点を考えてみましょう。役牌を数えてみると、ドラの中は勿論、白發+南北がすべて見えています。一通も無し。また3mが4枚見えのため234三色という可能性も否定されます。ついでに3sも3枚見えなので、激レア役・三色同刻の可能性もゼロですね(笑)赤ドラはどうでしょう。対面の河に赤5p、自分の手牌に赤5s。。。

そう、盤面を見渡せば、下家の手牌はMAXでもタンヤオ+赤5mで2000点の安手である、ということに気づくことができます。ここまでくればもうお分かりですね。この場面における自分にとってマシ・現実的(=Better)なパターンとは、下家が安手で和了ってくれることです。よって、和了りが絶望的な自分がすべき立ち回り、それは「対面親の和了りを全力で防ぎ、下家の和了を全力でアシストする」ことになります。極端な話、安手であることが分かっている下家には放銃さえ許容すべき(自分にとって最低限(=Bad)なパターン)ということですね。ちなみに仮に下家に2000点の放銃をしたとしても、対面とは10500点差、つまり満貫ツモでも届かない差でオーラスに臨むことができます。

 @現状
  自分18500/上家35500/対面6000/下家40000 3着目で残り2局
 @Worst = ラス目対面親の4000オールツモ の未来は? 
  自分14500/上家31500/対面18000/下家36000 ラス目で残り2局
 @Better = 下家の500-1000ツモ の未来は?
  自分18000/上家35000/対面5000/下家42000 3着目で残り1局
 @Bad  = 自分が下家に2000放銃 の未来は?
  自分16500/上家35500/対面6000/下家42000 3着目で残り1局


さて、それではそれぞれの選択肢を見ていきましょう。

(1)中
2人の仕掛けにビビって完全安パイの中を切ってはいけません。上家のリーチに備えるという意味でも中は温存しておきましょう。
(2)9s
上家が今切った9sに安全に合わせつつタンヤオ移行を目指す、という気持ちも分かりますが、そんな悠長に構えている時間はありませんよ。
(3)1m
和了りに向かうには明確に不要な牌ですが、対面には無筋なので危険です。
(4)3s
リーチ手順を目指して3sを切る選択肢も、対面には無筋です。
(5)5p
これが正解となります5pは対面の現物であり安全。下家の副露はソーズ下とマンズ下ですので、ピンズのブロックが残っていそうですね。鳴いて手を進めてもらうも良し、最悪放銃しても2000点なので許容できます。
(6)上記以外
5pと同様の理由で、対面の現物である3pや8sも正解となります。ピンズのブロックの他、ソーズ上でも1ブロックあるかもしれません。


以上、いかがでしょうか?実は上記のような打牌選択の過程は、「差し込み」と言われる麻雀技術の変化形とも捉えることができます。可能性の非常に低い自分の和了を追い求めるよりも、(被害を最小限に留めることができるのであれば)より確実性の高い放銃を選択することが自分にとって『BestではないがBetterな』選択となる、そんな一例です。局面によっては非常に有効な戦術となりますので、是非頭の引き出しに入れておいて下さいね。

ただし、差し込みは一歩間違えると大惨事にも繋がります。差し込み相手の打点予測は、どうかくれぐれも慎重に・・・。

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