玉の間攻略編 ⑮:アシストと差し込みのコツ

【アシスト/差し込みの考え方】

今回の記事では、「アシスト」「差し込み」について考えていきたいと思います。初心者~中級者の方が聞くと何だかリスクがあって難しそうだぞ・・・と思うかもしれませんが、個人的には「アシスト」「差し込み」は段位戦、特に南場を勝ち抜く上で非常に有効な戦術だと思っています。段位戦を戦うプレイヤーの共通の目的、そして段位戦の勝利条件。それは「たくさん和了ってより多くの点棒を稼ぐこと!!」・・・ではなく、「半荘終了時に一番多くの点棒を持っていること」なのです。そのために、放銃という行為そのものも勝つための手段の一つとして捉える、そんな発想の転換を是非してもらいたいですね。

さて、まず初めに「アシスト」「差し込み」の定義を抑えておきましょう。

「アシスト」
 ・ターゲットは下家(のことが多い)
 ・主にチーでテンパイ完成までをサポートする(勿論ポンも可)
 ・面倒を見るのはテンパイまでで、和了りの面倒までは見ない
「差し込み」
 ・ターゲットは下家に限らず全体
 ・チー+ポンでテンパイ完成までをサポートする
 ・最終的に放銃を目指し、和了りまで面倒を見る

実際にはここまで明確な区別はないと思います。アシストの延長に差し込みはありますし、アシストをする際には最悪放銃してしまってもまぁ構わない、ぐらいの事前想定をしていることが多いですね。


【アシスト/差し込みが有効な場面】

それでは、「アシスト」「差し込み」が有効となるのはどのような場面なのでしょうか。主なファクターとしては、以下5つが挙げられると思います。

① 自分が絶対に和了りたい立場ではない
② 自分の和了りがかなり厳しい
③ 和了られたくない他家がいる
④ 和了りに前のめりな他家がいて、その他家の和了りは歓迎できる(立場、打点や速度の想定)
⑤ 切る牌が、その他家以外には安全である

《①について》
主に南場でトップ目、点棒状況に比較的余裕がある局面ですね。3900点程度の放銃であれば痛くも痒くもない立場だと、気楽にアシスト/差し込みができます。
《②について》
バラバラで打点も見えない価値の無い手牌の場合は、自分の和了り以外にマシな結果を想定し、その実現に向けてできることがないかを考えましょう。
《③について》
和了られたくない他家の代表格は「親」ですね。連荘による逆転を阻止しなければなりません。他にはラス回避争いのライバルなどが該当するケースもあります。
《④について》
南場では和了り価値が高まる局面が増え、和了り優先の手組をしてくる他家が増えます。和了られても自分にとって問題の無い他家は誰なのか、常に意識しましょう。その他家が副露仕掛けを入れたら、アシスト開始の合図です。またその際、最悪放銃となった場合にも失点が許容範囲なのか、相手の打点想定も忘れずに
《⑤について》
アシスト/差し込みしようとした牌で他家に放銃してしまっては本末転倒です。アシスト/差し込みの牌は、対象となる他家以外には安全であることが大前提です。


【アシスト/差し込みの注意点】

この「アシスト」「差し込み」という技術ですが、どうやら世間一般にはそれほど浸透していないようです。少しネット上で調べてみたところ、「麻雀におけるアシスト/差し込みはマナー違反だ!」と声高に主張されている方もいらっしゃいました。とはいえ個人的には正当かつ有効な戦術だと思っておりまして、雀豪1ぐらいの頃から段位戦でガシガシ使っております。一体どこで覚えたのかは定かではありませんが・・・。

ということで注意点その1です。自分から他家へアシスト/差し込みをする分には全く問題がありませんが、他家にアシスト/差し込みを期待するような立ち回りは基本的にしない方が良いですね。筆者はこれまで玉の間で1500半荘以上打ってきましたが、アシスト/差し込みが欲しい立場で実際に他家からアシスト/差し込みを受けた局面は、おそらく片手の指で数えられるぐらいだったと思います。『雀聖1以上のプレイヤーならひょっとすると期待できるかも・・・いや難しいかなぁ』ぐらいの感覚で良いと思います。

注意点その2は、ターゲットの打点読みですね。アシスト/差し込みのターゲットとなる他家の役を予測して打点を想定し、放銃しても問題ない範囲であることを事前に確認してから発進しましょう。逆に言えば、役読みや打点読みのスキルが十分でないレベル帯のプレイヤーにはアシスト/差し込みはオススメできません(事故って高打点に放銃してしまっては元も子もないので)。

そして注意点その3、ターゲットの速度読みです。というのも、こちらが前のめりにアシストアシスト~と牌を切っても、向こうにアシストを受ける体制が整っていなければ気持ちは届かないんですよね。相手の手牌が整ってきた頃合いを見計らって、鳴けそうな牌をベストなタイミングで切ってあげるのがコツです。この辺りは、にじさんじ一の雀鬼:ルイス・キャミーの師匠でもあります牛さん(齋藤豪プロ/天鳳位)のこちらの動画がとても参考になりますので、是非ご視聴下さい。


【アシスト/差し込みの例:その1】

アシスト12

40600点持ちのトップ目でオーラスを迎えました。2着目の下家が1枚目の中をポンして打3pとした場面です。ここで、前述の5つのファクターを整理してみましょう。

①2着目の下家との点差は17300点と、かなり余裕のあるトップ目です。
②平和が見えるそこそこの手牌。
上家親の4000オールツモ→連荘が面倒ですね。
④対面下家のツモは大歓迎。また2人には満貫8000点放銃してもトップ終了です。
⑤序盤なので省略。中盤以降は親のみ警戒していきたい所。

ということで、下家の仕掛けには5 翻8000点まで放銃できます。アシスト/差し込みの頃合いを見計らいたいですね。

アシスト13

6巡目の牌姿です。9mツモで、2-5pとカン7pの平和イーシャンテンになりました。ここで下家の様子を確認します。3s8sツモ切りの後、完全安パイの中を手出しです。結構整っているように見えますよね。それでは下家の役と打点の想定をしてみましょう。

 ・ややマンズ高めの河→ホンイツ+赤5mなら高打点?
 ・役牌は白があるかも?
 ・ドラ2sのトイトイとかだと高打点?でも対面2sポンしてないぞ

放銃キャパオーバーとなる12000点の手となるのは「中白ホンイツトイトイ」または「中トイトイドラ3」のいずれかにほぼ絞られそうです。ということで、このパターンに該当しない牌であればアシスト/差し込みが可能、ということになります。具体的には・・・そうですね、高打点があり得るマンズは避ける、ソーズの3s8sツモ切り→ソーズメンツは完成してそう?と読んで、ピンズの中張牌なんかはどうでしょうか。手牌の中からだと4p6p8pが該当します

アシスト14

このプレイヤーは自身の手を進めようと真っすぐ不要牌の3mを切りました。その3mを下家が45mでチーして打1m。テンパイ濃厚と考えましょう。こうなると、なおさらピンズの中張牌が刺さりそうな感じがしませんか?トイトイは否定されましたので、「中ホンイツ赤5m」はセーフ。MAXで「中白ドラ3赤」、手牌が白白白2s2s2s赤5p(※赤5mならチーメンツに含まれそうなので否定)、みたいな感じでしょうか。ということで、ピンズは5pタンキでなければ12000点の手はほぼほぼ出て来ません。安心して4p6p8pのいずれかを差し込みにいきたい場面でした。

アシスト15

実際の下家の手牌はこちら。実は下家は筆者なのですが、まさかのクリックミスで3mポンするところを3mチーしてしまいました(笑)ということで、本来ならこうなるはずだったという手牌に加工してお見せしております。3mポン打1mで、中のみ1000点、5-8pテンパイでした。そして注目は上家親の手牌。今にもリーチが飛んできそうなドラ1のイーシャンテンです。アシスト/差し込みを渋っていると、このように親リーチがかかる最悪の展開になりかねないんですよね。(※実際に次巡親からリーチが入り、下家ベタオリで流局→親連荘となりました)こうしてみると、アシスト/差し込みの重要性、ちょっとは伝わったりしませんか?


【アシスト/差し込みの例:その2】

アシスト03

南3局で45800点持ちの余裕のあるトップ目です。下家が字風の西をポン、その後上家親も南ポンで続きました。その1と同じように、前述の5つのファクターを整理してみましょう。

①点棒に余裕があり、このまま和了らずとも放銃さえしなければトップ終了が狙える立場です。
②現状メンツ0、愚形だらけで打点も見えません。
上家親の連荘さえ阻止して局消化できれば、オーラスは配牌オリすらできそうな状況です。逆に親に2000オールツモられたりすると、決着が長引いてやや面倒な展開になりそうです。
④下家は2着確保に必死。仮に下家に3900は4200点放銃しても、オーラスは自分41600点vs下家28300点で、満貫ツモの親被り圏外の点差です。
⑤上家対面はさすがにまだノーテン、切る牌の安全度は考えなくてもよさそうです。

どうでしょうか。まさにアシスト/差し込みにもってこいの局面と言えますよね。ということで、メンツをぶっ壊して下家がチーしてくれそうな中張牌をバシバシ切っていきます

アシスト04

・・・残念ながら、対面から早いリーチが入ってしまいました。アシスト/差し込みのプランは失敗に終わりましたが、とはいえラス目である対面が和了ってくれる分には何の問題もありません(むしろ局消化ができて大歓迎)。上家親にだけは放銃しないように気を付けつつ、しっかり対応しましょう。

ちなみにターゲットとなる下家の速度感についてですが、下家の河は2s→發→白と、端牌を中心に切られています。これは手牌の不要牌を整理している=まだ整っていない段階と想定できますよね。よって、中張牌を切るのは相手の手牌が整いそうな数巡後がベスト・・・だったかもしれませんね。


【アシスト/差し込みの例:その3】

アシスト05

南2局で僅差の2着目、下家が白ポンで仕掛けています。ダントツのトップ目でもないこの場面、「アシスト/差し込みなんてとんでもない!」と思われがちですが、実はこれもアシスト/差し込みにもってこいの局面なんですよね。同じように、前述の5つのファクターを整理してみましょう。

①点棒に余裕があるとはいえないし、現状2着なので和了れるに越したことはない立場です。
②メンツ1つ、愚形だらけで打点も見えません。自身の和了りは絶望的。
現状ラス目の対面親さえ流してしまえば、ラス回避はほぼ確実。またトップ争いライバルの上家には和了られたくない。
自分以外で一番和了られてもOKなのは、消去法で下家となります。しかもドラの北に反応が無いので、ピンズのホンイツでなければ打点もかなり安そう?
⑤上家対面の速度はまだまだの様子なので、気にしなくて良さそう。

どうでしょうか。こんな感じで、自身が余裕のあるトップ目でなくても、アシスト/差し込みが有効になる局面って結構あるんですよね。注目は④、下家に1000点2000点和了られても全然OKなことに気づけるかが大事です。現状、自分のこの手牌から和了りはおろかテンパイも厳しそうな訳ですし、極端な話ノーテン罰符の1500点を払うことと下家に2000点放銃すること、ほぼイコールだと個人的には思います。

アシスト06

さあ、それではどんどん下家にアシストをしていきましょう。注目は下家の河、9s8sとターツを落としてきているのが分かりますでしょうか。愚形ターツを払う余裕がある、つまり高確率でリャンメン待ちで手牌が整っているサインです。よって、中張牌をバシバシ切っていきます。狙い通り4sチー。

アシスト07

その後も4p→5mと放銃覚悟で中張牌を切り続けます。道中、下家がドラ北をツモ切りしたこともしっかりチェックしましょう。これでドラ雀頭のケースが無くなりますので、ほぼ1000点~赤1枚で2000点の手と想定できますね。

しかしここで状況が一変します。対面の親が東をポンしてきました。3p6mと中張牌が手出しされていますので、かなり手牌は整っていると予想できます(最低イーシャンテン~テンパイの可能性も?)。ここからは、⑤のファクター「切る牌がその他家以外には安全である」を強く意識しましょう。具体的には、仕掛けてきた対面親への放銃をケアしながらの立ち回り、つまり「対面親には100%安全+下家に刺さりそうな牌」をチョイスする、ということですね。対面親の和了→連荘は歓迎できませんので、この意識はアシスト/差し込みには非常に重要です。親に放銃なんてしたら、それこそ大失態ですからね。

アシスト08-02

こんな感じで、東ポン以降は「対面親の現物」かつ下家が欲しそうな牌、を徹底して切り続けます。(※6m3p4sは現物、3sは上家が切った3sに合わせ打ち)そして4sが無事に下家にロン。白のみ1000は1300点の放銃となりました。ちなみに下家ロンの時点で対面親は2-5mテンパイ。まさに間一髪のタイミングでしたね。ふぅ。。。

アシスト09

1300点放銃して局消化、南3局次点での点棒状況です。

・トップ目親が和了っても、余裕のある2着目をキープ。
・ラス目対面の2000-4000ツモなら、トップでオーラス突入。
・下家の2000-4000ツモでも、2着目でオーラス突入。
・もちろん、自分で和了ればトップでオーラス突入。

こう見ると、ラスの心配はほぼほぼ無くて連対は結構固そう、トップも全然見える感じがしませんか?・・・アシスト/差し込みも結構使えるやん!!(謎アピール)


【アシスト/差し込みの例:その4】

アシスト01

4つ目は、下家以外へのアシスト/差し込みの例です。南1局で2着目、ラス目の下家が親番です。河2段目後半で自分はまだリャンシャンテンと、和了りは結構厳しそう。親の4000オールツモなどが起こると、とたんにラス回避争いが混とんとしてきます。ここは仕掛けを入れているトップ目の対面にサクッと局消化してもらいたいところ。

ここで対面の役と打点を予想します。捨て牌は典型的なタンヤオ風味の河。役牌は・・・白發中南と全て切れています。ドラは9m、タンヤオであれば絡まないので、タンヤオのみ~赤1枚でせいぜい2000点の手であることが読めますよね。であればノーテン罰符とほぼ同じ出費、親リーチが来る前に積極的に差し込みにいきましょう。ソーズはメンツが完成してそうなので、ピンズの中張牌4p5p、もしくはマンズの残り筋2m5mあたりでしょうか。

アシスト02

実際の手牌はこちら。タンヤオのみ1000点、2-5-8m待ちのテンパイでした。2-5-8mは手牌に無いので、ここは4p5pあたりを切っていきたいですね。対面への放銃を恐れて現物の9pや安全そうな西などをのんびり切っていると、そのうち下家の親からリーチが来てしまいますよ。注意しましょう。


【アシスト/差し込みの例:その5】

アシスト10

5つ目も、対面へのアシスト/差し込みの例です。南3局、上家親が東をポン。その後、トップ目で余裕がある対面が白をポンしてきました。さて、この場面でも前述の5つのファクターを整理してみましょう。

①やや余裕のある2着目です。
②自分はまだリャンシャンテンです。
上家親の連荘さえ阻止して局消化できれば、オーラスはじっくりとトップ狙いの手組みができそうです。
対面の和了りはもちろん、下家の和了りも全く問題ありません。下家もラス回避に必死なので、2000点~3900点ぐらいの放銃なら被害も少ないでしょう。極端な話、7700点を下家に放銃しても2着目でオーラスです。
⑤上家親の河も濃く、テンパイ想定で動きたいところ。よって上家に危険な牌をアシスト/差し込みしないように注意です。

ここで注目なのは対面の仕掛けです。自分で和了りにいかなくても良いトップ目にも関わらず白ポンの仕掛けを入れています。そして河を見ると手出し4m→8s→4s。相当整っている手牌と予想でき、テンパイの可能性もかなり高そうです。一方、上家親はソーズが高い河で8sが手から出て来ました。こちらもかなり河が濃く、最低イーシャンテン~テンパイ想定として動きたい所。

アシスト11

ということで、⑤のファクター「切る牌がその他家以外には安全である」を強く意識しましょう。具体的には「上家親には安全+対面に刺さりそうな牌」をチョイスしていきます。親に高いソーズは当然切らないとして、上家親の筋で2枚持ちの8m、現物の6pが候補になります。2枚持ちの8mから切ってみたところ、ラッキーにも対面のシャンポン待ちに放銃。2000点の出費で局消化をすることができました。ちなみに親は2p發のシャンポン待ちテンパイ。差し込みが間に合って一安心・・・。


ということで、以上アシスト/差し込みの例を5つ挙げてみました。放銃イコール悪、点棒を失う事はマズいこと・・・そんな固定観念を、今回の記事を読むことで払拭してもらえたら幸いです。数多あるであろう段位戦を勝ち抜くテクニックの内の一つとして、是非トライしてみて下さいね。

それでは、次回のnoteをお楽しみに~。

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