玉の間攻略編 ⑰:副露後の守備力を意識しよう(その2)
今回は「副露後の守備力を意識しよう(その2)」がテーマです。その1のアーカイブはこちら。
今回も、実際の段位戦牌譜を例に、副露のポイントを押さえていきましょう。キーワードは「守備力を確保してから副露発進!!」ですね。副露後の放銃が怖くてなかなか仕掛けが入れられない・・・といったプレイヤーには、(あくまで筆者個人の副露に対するスタンスですが)参考になれば幸いです。
ケース1:副露後の守備力①
ケース2:副露後の守備力②
ケース3:安全なタンヤオ1000点進行①
ケース4:安全なタンヤオ1000点進行②
ケース5:安全なケイテン狙い
なお、本記事の思考のベースとなる筆者のプレースタイルはこんな感じです。低和了&低放銃のやや守備寄り、副露率は普通、リーチ率やや低め、といった雀士です。ご参考まで。
【ケース1:副露後の守備力①】
東2局、平和ドラドラが見える良い形のリャンシャンテンです。789の3色が見えるので、この9pをチー、打5mという3900点の仕掛けを入れました。面前でも十分行けそうな手ではありますが、河2段目に入るところでスピード不足を感じての仕掛けでした。さて、この仕掛けの是非は一旦置いておいて、このチーの後の守備力を考えてみましょう。
@上家→現物9sが2枚
@対面→現物8sが1枚、8sワンチャンスの9sが2枚
@下家→現物8sが1枚、8sワンチャンスの9sが2枚
どうでしょうか。ソーズ上のブロックを持っていることで、鳴いた後の守備力もそこそこありそうですよね。道中で9sを字牌に交換できれば、さらに安全度が増します。
こんな感じで、対面親からリーチが来てもしっかりオリ切れます。副露仕掛けを入れるときには、手元に残るメンツ/ターツを構成する数牌が他家の現物(or安全牌)となるように意識すると、副露後の守備力を保つことができます。副露は手牌の枚数を少なくする行為であるために、面前の13枚持ちの時には持てる「攻撃面で機能していない安全牌(※例:1枚切れ字牌)」を持つスペースがありません。そのため、攻守兼用となる数牌を持つ意識が非常に重要になります。
【ケース2:副露後の守備力②】
東3局で僅差の展開。配牌は・・・バラバラで涙が出てきますね。面前での先制リーチはかなり厳しそう、とはいえ他に役も見えない。役牌の重なりを期待するしかなさそう。
さて、河1段目も終了。愚形多目で、相変わらずリーチにはたどり着けなさそう・・・と、ここでほんのすこーし役が見えてきませんか?そう、鳴いての789三色です。ということで、鳴き789三色を見据えた打牌選択をしていきます。5巡目は三色に不要な2枚目の打7m。6巡目のツモ4sで「789で3メンツ」「雀頭候補が7s」、残る1メンツをドラのカン2pもしくは3-6sリャンメンで考えます。役牌は重ねる必要が無くなりましたので、安全度で1切れの白を残し打東とします。一時的に6ブロックに構えた形ですね。
そして、この鳴き789三色ルートを選ぶ前に必ず行ってほしいのが、「副露後の守備力の確保」です。なんせカン2pが埋まらなかった場合は最悪1000点の手で他家と相対する必要がありますので、しっかり撤退できるような退路を残しておきたい所。今回は、こんな感じで副露発進しても大丈夫そうです。
@上家→9mと1pが現物
@対面→1切れの白、7sワンチャンス9s、8m早いので9mも?
@下家→9sと白が現物
さて、7巡目に対面がドラ2pをポン。そして同巡、上家から7pが切られました。これを89pでチー。当然薄くなったカン2pターツを払う選択になります。対面はまだイーシャンテンと読み、危険な3pから先に処理。しつこいようですが、1pと白は両脇の安全牌です。そしてタンヤオ風味の対面にはオリる牌は豊富にありますので、今の所安全な進行ができています。よーし、これで両脇からいつリーチが来ても大丈夫だぞ!!
・・・本当に両脇から2軒リーチが飛んできました(笑)しかし守備力は確保してあります。上家リーチの一発目、ド急所のカン8sをツモってイーシャンテン。現物1pを安全に切ることができました。そして下家リーチの一発目、これまたド急所のカン8mツモでまさかの789三色テンパイ、しかも待ちは3-6sリャンメンです。そしてテンパイ打牌は下家現物の1枚切れ白、これぐらいなら勝負!!
これが最終結果です。下家親がカン7m一発の4000オールツモ。そして対面も2pポンの時点でカン3sテンパイでした。今回は8s→8mのツモ運が良くテンパイまでたどり着きましたが、仮にそうならないまま両脇のリーチが来ていたとしても、事前に守備力を確保してから副露発進することで、リーチに対して安全に撤退する(オリる)ことができますよね。
【ケース3:安全なタンヤオ1000点進行①】
東4局でトップ目、4巡目の牌姿です。中張牌多目で守備力低め。対子が4つあるので、のんびり七対子を狙う人も多そうですね。ところが筆者は、下家から切られた6sをポンして1000点のタンヤオに向かいました。
「おいおい、トップ目なのにわざわざ安手の仕掛けしなくても良くない?」と思ったそこのアナタ!!勿論その通りなんですが、リードしている時にもサボらずに局参加し、他家の勝負手を安手で蹴っていく「局消化の意識」は着順のキープにおいて極めて重要です。
さて、この6sポンにはどのような意味があるのでしょうか?ここでもやはり「副露後の守備力」という目線で残った手牌を考えてみましょう。注目は、手元に残った対子の8sです。この8sは上家親の現物、かつポンした6sのワンチャンス壁で全体に非常に安全な牌であることが分かりますでしょうか。しかもこの局面、よく見てみると直前に上家から切られた8sはスルーしているんですよね。これは8sをポンすることで親の現物を消費してしまう&手元に残るのが安全でない6s対子になってしまうからなんです。よって8sはスルーするけど6sはポンする。この選択によって副露後の守備力を確保することができました。
ちなみに、このあと仮に2枚目の8sが他家から切られても、もちろんスルーになります。たかがタンヤオ1000点の和了りのために、みすみす貴重な安パイを2枚消費するのは馬鹿馬鹿しいですからね。
9巡目、なかなか字牌などの安パイを引けずにいたところにツモ1p。対面の現物&19牌なのでさすがに安全度は高いかな?ということで、ここで2mと入れ替えます。
11巡目、上家から切られた8p。これはチーしても良いかなと思います(筆者はスルー)。チーして打1p、チーして打5m、スルー、の順で積極的な選択になりそうです。ちなみに、道中で4枚目の6sが上家から切られていますので8sはノーチャンスになっています。さらに1pは上家の現物にもなったので、手牌の安全度はグンとアップしていますね。
8pスルーの後、7mを暗刻にして、15巡目にツモ5p。5mを切って3-6mリャンメン、タンヤオ1000点のテンパイを入れました。他家の捨て牌も19字牌多目で、攻め込んで来そうな気配はあまりなさそうです。
これが最終結果です。見事に6mツモでタンヤオのみ1000点の和了。トップ目から貴重な局消化を達成しました。副露後の安全度を確保しつつ、こういう地味な和了りを拾えると大きいですよね。
【ケース4:安全なタンヤオ1000点進行②】
南1局で微差の3着目です。河2段目に入るところで現状メンツ0、愚形だらけで打点も見えません。さすがにここから面前で先制リーチ・・・というのは高望み過ぎますよね。とはいえ1000点でも和了って局消化する価値はそれなりにあります。そこで、速度をアップするためにここから喰いタンをイメージします。
ちなみに、筆者はここから和了りを目指す副露を始めるのですが、個人的にはかなりキワドイ仕掛けなのでおススメはしません(汗)あくまで参考程度に、お願いしますね。
赤で枠を囲った5ブロックがベースになります。注意点としては、ほぼ間違いなくタンヤオのみ1000点になることが濃厚なので、守備面にかなり気を付けながらの進行にしましょう。上家と下家には2枚ある1pが現物ですね。対面に現物が無いので、早い段階で1枚持ちたい所です。まずはここから打2m。
次巡、1mツモ。待望の対面の現物です。1pと入れ替えて絶対に手元に残しましょう。そして9巡目にはツモ北。対面の現物かつ2枚切れなので、1m1pよりも安全です。よって1mと1pの比較、1pは上家下家2人の現物なので1pを残して打1mとします。
同巡、上家が2sをポン(※サイズの都合で切れてしまっていますゴメンナサイ)、急所の5sが切られました。勿論46sでチー、より安全な北を残して1pを切ります。「あれ、安全牌が北1枚になっちゃうけど大丈夫なの?」と思ったそこのアナタ、河を良く見て下さい。この1巡で、下家が8mを切っていますよね。これにより下家親への守備力はかなり確保されました。上家は2sポン副露でリーチは来ない、そして対面には2枚切れの北。何とか凌げそうですよね。
10巡目、上家からまたまた急所の3pが切られました。24pでチーして、切るのは北・・・とはしません。自身はまだイーシャンテン、ここで北を切ってしまうと対面に対して完全に無防備になってしまいます。ラス回避争いをしている対面に放銃をしてしまうと事実上のゲームセット。そうはさせじと、受けは狭くなりますがここは上家現物の打7mとします。
ここで意識したい点としては、(和了れればラッキーだけど)自分が絶対和了らなきゃいけない場面ではない、ということですね。局消化自体は嬉しいですがたかが1000点、ラス回避率が劇的に上がるわけではありません。とにかく防ぎたいのはライバルである対面の和了り。それ以外、例えば仕掛けた上家が和了ること自体は局消化もできますので悪くありません。下家親からリーチが来ても、トップ目が走る分には全然OK。連荘となった次局で好配牌が来るかもしれませんよね。
その後、対面が7mをリャンメンでチーの仕掛けを入れてきました。そして11巡目、2sポン以降ツモ切りを続ける上家から3mが切られました。これも45mでチーして打北。待ちは良いとはいえませんが、それでもなんとかテンパイに辿り着きました。そして残した8mは下家親の現物、かつ6m7m3枚見えダブルワンチャンスで全体にもそこそこ安全そうです。最悪の場合の撤退もできそう。そしてこちらの仕掛けに対しても脂っこい牌をどんどんツモ切ってくる上家は、テンパイ濃厚として対応したい所。
これが最終結果です。上家から出た8mを捉えて、見事タンヤオのみ1000点の和了りです。対面は西の対子落としが見えていたので、ケイテン狙いで迂回した?という読み。そして上家の待ちは4-7pあるいは5-8pと読んでいたので、それらの牌が来たら8mで撤退、そんなバランスでした。こんな感じで、絶望的な配牌からでも副露を駆使して安全に和了に結びつけることができたりします。その際には、自分の手牌価値をしっかり判断して副露後の守備を意識しましょうね。
【ケース5:安全なケイテン狙い】
南3局、下とは点差がかなり開いた2着目の親番です。配牌・ツモともに振るわず、10巡目で早くも和了りは絶望、オリ濃厚の進行です。といっても、放銃さえしなければオーラス上家と勝負でワンチャントップも見えます。そこまで無理に和了りに行かなくても良い、上手く副露を混ぜてケイテンを取れればラッキー(親連荘できる)、そんな局面ですよね。
ということで、ここでは一旦和了りではなくケイテンを目指すという方向性で考えていくことにします。・・・123の三色ですか?今回は我慢して下さい(笑)
さて、自身の手牌を5ブロックに分けて、それぞれの安全度について考えてみましょう。
◆マンズ1m2mのブロック=安全なターツ
1mは対面下家の現物、2mも現物と筋でそこそこ安全
◇マンズ5m6m6mのブロック=危険なターツ
6mは下家の現物だが、5mは全体に危険
◆ピンズ1p2p2pのブロック=安全なターツ
2pは上家の現物、2pワンチャンスで1pも全体にそこそこ安全
◆ソーズ1s3sのブロック=安全なターツ
3sは上家の現物、3sワンチャンスで1sも全体にそこそこ安全
◇ソーズ4s6sのブロック=危険なターツ
全体に危険
いかがでしょうか。2枚切れで安全牌の西を除くと、「安全なターツが3つ」と「危険なターツが2つ」に分類できますよね。副露手では、この「各ターツの安全度の事前評価」が非常に大事です。この安全度と自分の手牌価値を踏まえて、副露を仕掛けていきます。
大前提として、今回は自分の和了りが絶望=ケイテン目標なので、大きなリスクをとることは言語道断です。安全度を最優先に副露を入れたい所。ということで、こんな方針ではどうでしょうか?
●危険なターツ2つは、鳴いて手牌から離れてしまっても問題ない
●安全なターツ3つは、なるべく鳴かずに手牌に残しておきたい
ということで、10巡目に下家から切られた6mはポンでどうでしょうか。5m6m6mのブロックは危険なターツなので、鳴いて手牌から離れてしまっても守備力は下がりませんからね。もう1つの危険なターツである4s6sの部分=カン5sも、上家から出たらチーで良いと思います。
逆に、対面下家にかなり安全なターツである1m2mの部分は、ギリギリまで鳴くのを我慢したい所(ペン3mチー)です。また、上家に安全なターツである1p2p2pおよび1s3sのどちらかも、同様の理由で鳴かずに手牌に残しておきたいですね。
13巡目にツモ3p。マンズ/ソーズが愚形だらけなので、縦引きも採用できる+安パイ西を抱えたいのでここから打2pとし、ピンズメンツを確定させました。運良く河3段目まで粘れましたので、ここからはケイテンを目指してマンズ/ソーズを鳴いていっても守備面は大丈夫そうです。
次巡に2mツモ。雀頭ができて、ソーズのカンチャン2つのイーシャンテンです。他家からはまだリーチが飛んできていません。3m引き123mメンツ完成も見据えて、打西とします。安パイの西を手放しても、安全なターツが3つ残っているので守備面に不安無し!さあ、ケイテンまでもう一息ですね。
・・・残念、トップ目の上家からリーチがかかってしまいました。とはいっても自身の手牌には上家に安全なターツが2つも残っていますので、何の問題も無くオリることができます。対面下家から追っかけが来ても大丈夫ですし、なんなら上家からチーができてケイテンもあるかも?(※結局上家ツモ)
なお、こんな感じの「和了りが絶望的な場合、河2段目ぐらいからケイテンを意識して動く」というムーブ自体は、雀傑~雀豪なりたてぐらいのレベル帯のプレイヤーには(リスクもありますので)おススメはしません。くれぐれも取り扱いにはご注意下さいね。
【まとめ】
◆鳴いた後に安全牌を引けるかはツモ運次第
→ 各ターツの安全度を事前評価し、守備力を確保して副露発進しよう!
◆字牌ではなく「数牌」で他家の現物を持つ
→ 他家に対する安全牌をメンツに組み込む手組を意識しよう!
◆打点の無い鳴きは、道中でスリム化を(対リーチの退路確保)
→ 逆に打点のある鳴きは、思い切って受け入れMAXにするのもアリ
この記事が勉強になったぞ~、というそこのアナタ!!
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