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「こんなの誰が読むんだろ…」と思うときこそ
「こんなの誰が読むんだろ…」
と、途中まで書いた文章・漫画をどこにも出さず、お蔵入りすることがよくありました。
前回の記事も。数年前の自分なら「こんなのは売れてる作家さんが書くことだから、自分みたいな中途半端な作家が書いたって誰も必要ないでしょ」とお蔵入りしてたはず。
ーでも、2年ほど前にある編集さんからもらった言葉のおかげで、
自分のために書いて、置いておく。それがもしかしたら誰かのお役に立てるかもしれない。と思えるようになりました。
「言葉にしたくても上手く言葉にできない人がたくさんいる」
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そのある編集さんとは3年ほど前に「吉本さんの人生を振り返る書籍を作りませんか?」とお声がけいただき、出会いました。
最初はそんなオファーがすごく嬉しくて、ワクワクしていたのですが、いざ原稿を書き始めてみると
「ぼくのエッセイ?読みたいと思ってる人なんているのか…?」
そんなことばかり考えてしまい、なにを書けばいいかわからなくなり、書いては消して書いては消して。ずっと編集さんを待たせてしまっていました。
気がつけば1年近く経っていて、あまりにも待たせすぎて連絡すらできず。申し訳ない気持ちと、気まずさに飲み込まれて「もう忘れててくれないかな」と思ってしまうこともありました。
その後、他の仕事が落ち着いて気持ちに余裕が生まれたタイミングで、もう一度挑戦してみたいと思い、編集さんに連絡することにしました。すると「一度雑談しましょう」と返事をいただき、オンラインで話すことに。
その場でこの1年近くの書けなかった時の気持ちを正直に話しました。
「ぼくのエッセイを読みたいと思ってる人なんているのか…と考えると、なにを書いていいかわからなくて」
すると編集さんが
「言葉にしたくても上手く言葉にできない人がたくさんいるんです。だから吉本さんが感じたことをそのまま言葉にするだけでも、きっと誰かにとっての「そうなんだよ、言葉にしてくれてありがとう」になるんですよ。」
「言葉や漫画にできるって、すごいことなんですよ」
と言ってくれました。その瞬間にぼくの中にあったモヤモヤは全て消えてなくなり、そこまで書いてきた30ページほどの原稿を読み返してみることにしました。
すると、役に立とう/わかりやすくしようと思ってもないことを入れたり、自分をよく見せようとイヤな部分を隠しながら書いてることに気づき、すべて削除して書き直すことにしました。
それから原稿が一気に進むようになりました。
自分の見た景色、感じたこと、願っていることを素直に書くだけ。
役に立とう、こう言った方がいいかもって気持ちは一旦横に置いて、乱雑でもまとまってもなくても、結論が出てなくてもいいから、とにかく全部出しました。最低だな自分って思う気持ちも。
その後、編集していただき、自分でも整えて、すごくいいものができたと思っています。おかげで、自分でも気づけてなかった気持ちや感情に気づくこともできました。
本としてはまだ製作中ですし、葛藤の渦中のまま結論づかない感情もたくさんある。けど。
ぼくの中では幼少期から引きずってきた父親への想いも、ずっと抱えてきた劣等感や自分自身へのネガティブな感情も、全部見え方変わり、心がひっくり返ったかのように軽くなりました。
『まるねこププ』を描き続ける理由
この気づきは、ぼくがSNSで『まるねこププ』を描き続けている理由にもつながっています。実は、ププを描きはじめたきっかけも「役に立たなければ」という考えに捉われていたからでした。
***
『まるねこププ』を描きはじめたのは、2023年12月に発売された書籍『あした死のうと思ってたのに』を知ってもらうためでした。
その本に収録された『ただそこにいただけで』という作品のスピンオフとして、物語を考えて描きはじめたんです。当初はSNSで30話ぐらいアップして終わるつもりでした。
ーでも、10話、20話と描き、ププのことを知っていけばいくほど、"物語を考えて"創るという感覚は無くなっていき、気づけば、ププが自らの意思で走り出していくのを追いかけ、観察しながら日記を描いているような感覚に変わっていたんです。
「今日はププになにが起きて、ププはどう感じるんだろう…」僕の知らないププを見ることができるんじゃないかと、ワクワクしながら描いてたんです。不思議なんですけど。
そして、そんな観察日記を読んで、ププを愛で、応援してくださる方が増えていくに連れ、僕の中の「ウチのププかわいいでしょ?もっと知りたいですよね?ね?ね?」という気持ちが湧き上がっていきました。
それが僕にとっても楽しくて嬉しくて、1冊の本になるまで続けることができました。こんなにも自分の描くキャラにのめり込み、好きになったのははじめてで、自分でもビックリしています。
***
ーと、これは書籍『まるねこププ』のあとがきに書いた文章なんです。
このププの書籍化の話をいただいたとき、本が出たら『まるねこププ』は終わりにしようと思っていました。
もともとキャラクターに対して愛着を持つことがないんです。
なので、ププに対して可愛い〜大好き〜みたいな湧きあふれるような感情がなくて(もちろん可愛いとは思っていますが)、自分のタイプ的には日々の中で感じたことを消化していくようなドロっとした作品を作る方が合ってると思っています。
なので、ププを見た同業者からは「もっとププ可愛い〜って感じのキャラ萌え漫画にした方が売れそうなのに」と言われることもありましたし、もっとププにフォーカスした可愛い漫画を描いた方がププを楽しみにしてくださる読者さんは喜んでくれると思うんです。
なので、今の群像劇チックな作風でププを描き続けていくのは、自分の良さを活かしきれてないんじゃないか…とか、読者さんにとっても嬉しいものではないんじゃないか…と悩んできました。
それでもずっと続けてきているのは、ぼくの中での挑戦だと思っているからです。作風が合ってないからと、諦めるにはまだ早いというか。描いている中で変わっていく気持ちも、気づくこともまだまだいっぱいあると思っています。
実際に宣伝のために描き始めたププに対して、少しずつ「我が子を見守る」のような感情が芽生えてきたように、これから変化していくものもたくさんある気がするので、そんな変化のため、自分のために描き続けています。
役に立たねばという考えに捉われていたんだと思います。漫画でも、文章でも、このnoteでも。
そもそもなにが役に立てるのかもわからないし、役に立つかどうかと判断することで面白さを切り落としてしまったり、自分らしさみたいものがなくなってく気がします。
なので「自分なんかが書いてもな…」と思うときこそ、自分のために書いて、置いておく。それがもしかしたら誰かのお役に立てるかもしれない。
それをたくさん続けていくだけ。でいいんだなと思っています。
質問や「これ聞いてほしい」などあったらマシュマロから送ってください!
ぼくでよければnoteでお返事させてもらいます。
マガジン『60点クリエイターの「気づき」置いときます(仮)』
描くことを仕事にして12年。突き抜けた技術がないからこそ、生きていくために考え、試行錯誤してきました。その中で気づいたことを置いていきます。創る人にとって、ちょっとしたヒントになれば嬉しいです。
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