俺のおやじ、ミノル 【其ノ拾肆】俺のおやじ、ミノルは、◯◯◯◯で足を踏んづけたことがある
おやじが印刷工の見習いだった時のお話。
東大の赤門あたりで
おやじは印刷紙をたんまり乗せた
リヤカーを引いていた。
ところが、軽い坂にさしかかったとき
ふとバランスを崩して
リヤカーがおやじの体にのしかかってきた。
うまい具合に直撃は回避できたものの
タイヤは崩れ落ちる紙を積んだまま
無惨にも足の甲を轢いていった。
重さはどれほどだったのか
今となっては墓の中のおやじしか知らないが、
紙というのは恐ろしく重い。
結果、おやじは複雑骨折し
それ以降、全力で走ることは
できなくなった。
足は土踏まずのほうにむかって丸くなり
軽いびっこを踏むようになってしまった。
もちろん、結婚するずっと以前のことであるから、
俺は知る由もない。
そんなおやじ殿ではあるが、
それから60年にわたり
印刷工として人生を貫き通した。
その職人魂に、今日は自家製の梅酒で献杯しよう。
(今日は真面目な終わり方だ。。。)
ヒロシ
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実家にいた頃は、俺にはおやじはいるのか?と思うくらい、夜遅くまで呑みあるっていて顔を見る機会も少なかったおやじ、ミノル。晩年は缶ビール1本を飲むか飲まないか、というレベルの酒量でしたが、それでも楽しく嗜んでいたようです。おやじへの酒代として大切に使わせていただきます。