俺のおやじ、ミノル 【其ノ拾捌】 俺のおやじ、ミノルは死の淵から生還してもユーモアだけは忘れなかった!
俺のおやじ、ミノルは、
町工場の印刷工であった。
10年ほど前、天を仰ぎながら
「75歳まで現役を続ける!」と
慢性気管支炎で出なくなった声を
振り絞り、俺に囁いたおやじは、
ほんとに75をすぎて入院するまで
現役を貫いた、ツワモノだった。
おやじが入院したとおふくろから
電話があったときは
さすがに俺も
「ついに来るべきときが来たか」
とちょっと覚悟した。
主治医からも、万一の場合の
延命措置をするかどうかの確認を受け、
入院3日目には、肩から肺に針を通すという
体力的にも負担の大きい治療に踏み切った。
ところが、である。
この後、周囲も驚くほど奇跡的に快復に向かい
なんと1週間で退院してしまったのだ。
おそるべし、ミノル!!!
しかも、伝説はこれだけではない。
退院のあいさつで、おやじは
病院の先生やケアスタッフに向かって、
こう言い放ったのだ。⬇
「看護師の姉ちゃん、1人連れで帰っていいが?」
注)「いいが?」の「が」の発音は、謹賀の「が」ではなく、
賀正の「が」である。どうでもよいのだが。
人を笑わす天才なのか、
それともただのスケベじじいなのか!?
半端ねぇぜ、おやじ!
ぴーこ
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実家にいた頃は、俺にはおやじはいるのか?と思うくらい、夜遅くまで呑みあるっていて顔を見る機会も少なかったおやじ、ミノル。晩年は缶ビール1本を飲むか飲まないか、というレベルの酒量でしたが、それでも楽しく嗜んでいたようです。おやじへの酒代として大切に使わせていただきます。