ナチス側として戦った人と、反ナチス側として戦った人が共存する国、ウクライナ
プーチン政権によるウクライナ侵攻から4ヶ月が経過した。
東部では激戦が繰り広げられる様子が報道され、停戦の面影は見えない。
今回は、ロシアがウクライナに侵攻した際、プーチンが口実の一つとした「ウクライナいるネオナチ」について、歴史的背景から記したい。
そもそも「ネオ(新)ナチ」とは、ヒトラー率いるナチス党によるユダヤ人の虐殺などを正当化しよとする人々や考え方、というのが簡単な説明だろうか。
プーチンはウクライナ侵攻に際し、「ウクライナの政権はネオナチである。故に、打倒しなければならない」と説明した。
「プーチンは突然何を言っているのだろうか」と思った方もいるかもしれない。
しかし、ウクライナにネオナチは存在する。
歴史的に、東ウクライナはロシアに、西ウクライナはヨーロッパに統治されることがしばしばあった。そのため、それぞれの地域では統治国の要素が色濃く残っていた。
第2次大戦中の1939年、ソ連がポーランドに侵攻し、ポーランド領だった西ウクライナはソ連に併合された。
そんな中、西ウクライナを中心に、ウクライナの政治家であるステファン・バンデラを指導者として、ウクライナ独立運動が高まった。
バンデラは第2次大戦中、ウクライナ独立を掲げ、ナチス・ドイツと協力し、ユダヤ人やソ連派を虐殺していった。
その結果、ウクライナはナチス側で戦った人と、ナチスと戦った人とが共存する国となった。
バンデラの思想は今も引き継がれている。
プーチンが指す「ウクライナのネオナチ」や右派は、今もバンデラを崇拝している。バンデラの思想を持った人もバンデラ主義者とも呼ぶ。
一方で、親ロシア派からは「ファシズム」や「裏切り者」とされている。
さらに、上段で述べたように東西ウクライナでは言語も宗教も異なる。
東ウクライナではロシア語話者が多いのに対し、西ウクライナではウクライナ語が主だ。
さらに、東ウクライナではロシア正教が信仰され、西ウクライナはカトリックでだ。
ウクライナは実に複雑な国だ。
*「プーチンはアジアをめざす」NHK出版 下斗米伸夫
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