ナゴルノ=カラバフ情勢を巡る新たな展開—3号2023年4月20日
ナゴルノ=カラバフを巡る情勢に新たな展開があった。アルメニアの首相パシニャンが係争地をアゼルバイジャンの領土として認める用意があるという趣旨の発言をした。長くナゴルノ=カラバフを巡り争ってきたが、アルメニア側が譲った形となる。
理由は2つあると考えられる。
1つはロシアとアルメニアの関係が悪化していたことだ。パシニャンとロシアのプーチンはウマが合わなかった。外交の多様化を進めるパシニャンはプーチンにとって悩みの種だった。2020年の戦争でもロシアは軍を展開しなかった(CSTOによって義務が発生)。さらに、ロシアによるウクライナ侵攻によってロシア軍は余裕がなくなりこれ以上頼れる同盟国ではなくなってしまった。
アルメニアとイランの関係は良好だ。経済的にも結びつきがる。しかし、イランは昨年の大規模デモの鎮圧や核問題など国際社会からの評判が悪いので頼ることができない。アルメニアをサポートする国がいなくなってしまった。事実、パシニャンも「誰もサポートしてくれない」と議会で発言している。
もう1つはロシアがトルコ・アゼルバイジャンとの関係を悪化させたくないのだろう(理由は自明)。それゆえにロシアはトルコ系民族の2国に対し配慮した外交を展開していた。昨年から続く「環境活動家」によりラチン回廊封鎖をディスパースさせないのはそれを象徴するものではないだろうか。さらにロシアにとって最悪なのは、NATOの一員であるトルコ軍がアゼルバイジャンに展開し、NATOとさらに国境を接することである。それゆえに慎重外交を行っていた。
そんな中、絶対的に両者の力関係が変化し、アゼルバイジャンは領土を奪取するため侵攻しない理由がなかった。2025年にはロシア平和維持軍の駐留が任期を満了する。ウクライナの侵攻によりエネルギーの脱ロシア化を進める欧州はカスピ海に眠る石油資源が必要だ。アゼルバイジャンの経済は指数関数的に増加し、欧州からの指示も今後は得られにくいかもしれない。そのような状況下でパシニャンは問題をこれ以上棚上げすることは得策ではないと考えたのではないだろうか。それが今回の決定に繋がったのではないだろうか。(知らんけど)