妄想物語【すっぱいチェリーたち🍒】〜スピンオフ壽賀美の文化祭編2〜
つながり活動をされているうりもさんの妄想物語の第二弾
【すっぱいチェリーたち🍒】に参加中。
募集期間前なのに、もうすでにたくさんの方が参戦しています。
みなさんそれぞれの楽しみ方で楽しんでいるようですね。
妄想って、止められないもんね。
私の前回までのお話はこちら
こちらのお話は妄想物語となり、登場人物は、それぞれの方をモチーフにしていますが、あくまでも妄想上の人物像ですので、勝手にキャラを作っています。
間違ってもそういうイメージで見ないようにしてくださいね。
【すっぱいチェリーたち🍒〜文化祭編2〜】
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その後の古典の時間は授業を受けていても身に入るはずもなく、かといって台本を書くことも出来ず、ただただ時が過ぎるのを待った。
なんで?
なんで垣野先生は何も言わずに行ったんだ?
あ、何も言わずにじゃないか。
「なーるほどね」とは言ったなぁ。
いや、なんで「なーるほどね」なの?
ってか、あれば地声なの?裏声なの?
ってか、垣野先生ってズラなの?
綺麗なおかっぱヘアで、髪が乱れてるところ見たことないんだけど。
ズラっぽいなぁ…。
おかっぱと言えばウォーズマンだよね。
いや、あれはおかっぱじゃないのか?
ヘルメットか?
いやいや、ウォーズマンがおかっぱなのか、ヘルメットなのかなんてどうでもいい。
ウォーズマン、かっこいいなぁ。
『ウォーズマンが笑った』の回は最高だった。
いつも無表情のウォーズマンが笑ってさぁ。
あのかっこいいウォーズマンのキン消し、小郷オーエンが持ってたんだよなぁ。
いいなぁ。
ウォーズマンのキン消し、欲しかったなぁ。
全然出なかったんだよな。
ってか、初めてのキン消し、ベンキマンだったし!
他のガチャガチャ、カー消し(スーパーカー消しゴム)とかはさ、20円の時代に、キン消しは100円もしてさ。
親に一生のお願いって頼んで。
ようやくキン消しのガチャガチャさせてもらえて。
それでベンキマンって。
私の一生のお願いがなんでベンキマンなんだよ!
私の一生のお願い返せよ!
一生のお願い何回もしてるけどさ。
なんだよ!ベンキマンって!
クソが!
ベンキマンだけに、クソが!じゃないのよ。
全然面白くないのよ。
いやマジでベンキマンはないだろ。
ベンキマンは…。
あぁ!小郷オーエン!私にベンキマンくれないかな。
…あ!違う!なんでベンキマン欲しがってんだよ!
ウォーズマンだっつーの!
ウォーズマンくれないかなぁ?
くれないよなぁ。
ウォーズマンだもんなぁ。
せめてバッファローマンくれないかなぁ…。
あぁ、けどやっぱりウォーズマンがいいなぁ。
どうにかして小郷オーエンからウォーズマンを奪えないかなぁ…。
あ!私、風紀委員になって、持ち物検査して、禁止物だとかなんとか言って、没収したらいいんじゃね?
私、頭良くない?
私、もしかして、偏差値100超えてるんじゃない?
キーンコーンカーンコーン
「壽賀美さん、放課後それ持って職員室に来て」
垣野先生の一言で、私は一気に現実に引き戻された。
妄想してる場合じゃなかった。
授業中、台本書いてるとこ見つかってヤバッってなってたんだった。
やっぱり怒ってたんだ。
ウォーズマンをどうやって奪えるか考えてる場合じゃなかった…。
何がウォーズマンだよ!
私のバカバカバカ!
くそっ!
小郷オーエンがキン消しなんか持ってくるから!
放課後、重い足取りで職員室へ向かう。
保健室の前の廊下に、宇利盛男が突っ立っていた。
何やら保健室に入るか入らないかを迷っているように見えた。
またお腹がビチビチなのか、それとも恋の相談を保健室の茶保先生に相談しようとしてるのかはわからない。
もしくは、自分の毛深さの相談なのかもしれない。
いずれにしても私には関係のないことなので何も言わずに通り過ぎた。
保健室を通り過ぎたあと、下駄箱に向かう貝差彩子の姿があった。
廊下を1人でしょんぼりと何かをつぶやきながら歩いている。
「オロロンオロロン」
そう言っていた。
何かショックなことがあったんだろう…。
そうだ。
彼女にはショックなことがあったんだ。
私は台本を書いてたから、なんとなくでしか聞いてないけど、貝差彩子が千葉ヨメンに告白したとかって、休み時間に騒いでた気がする。
で、結果、きょうだい?双子?とか言われたとかなんとか…。
あー、ちゃんと聞いとけば良かった。
ってか、そんなことってある?
どんな断り方だよって思ったけど、どうやら嘘ではない感じだったな。
わかんないけど。
けど、今思えばあの2人、色んな場面でよくシンクロしてた。
いつも見てるわけじゃないけど、1番後ろの席にいる私からはよく見えるし、貝差彩子は、なんとなくクラスで目立つから目に入る。
あの2人、同じタイミングであくびをしたり、同じタイミングで頭を掻いたり。
この前もイスの前を上げてゆらゆらゆらゆら2人ともさせてて。
そのリズムも一緒で。
んで、バランス崩して、後ろにガタンってなったのも一緒だった。
「ビビった〜!」
「Oh my God!」
って言うのも揃ってたし。
あれじゃあ『運命の人』って思っちゃうよ。
貝差彩子が
「なんか気が合うんだよね」
「うちら似てるのさ」
「よく目が合うんだよなぁ」
って仲のいい人たちに言ってたのも無理はない。
けど、それって双子だからだったんだ。
双子だからシンクロが起きてたんだ。
かぁ…。
せつない…。
ドラマみたいだー。
羨ましい〜。
あ、いや、切ない〜。
好きになった相手が双子の弟って…。
ドラマかーっ。
韓国のドラマかーっ。
羨ましい〜。
あ、違う違う。
ショック〜。
ショックだよなぁ…。
ショックだろ…。
そりゃ、オロロンって言いたくもなるわ。
立ち直れるのかなぁ?
しばらく立ち直れないよなぁ。
てか、どんな事情があって生き別れたんだろ?
生まれてすぐなのかな?
双子が生まれたら不吉なことが起きるとかいう代々からの言い伝えがあるとか?
「な、なんと不吉な!」
「1人は誰にも見られぬよう森に捨てて参れ」
「ははあ!」
みたいな?
最初から1人しか生まれなかった体にして、1人は闇に葬られたってやつなのかもしれない。
かわいそうに…。
え?じゃあ、復讐?
「姉さんばかり幸せそうにしてるのが許せなかったんだ」
「僕は生まれながらにして死んでるも同然。それなのに姉さんは、何不自由なく幸せそうに暮らして…」
「姉さんが憎くて憎くて…」
グサッみたいな?
え?怖い。
サスペンスじゃん!
火サスじゃん!
ドロドロの韓国ドラマかと思いきや、血みどろの火サスだったのか‼️
このあと崖に行くのか?
グサッって刺した後に崖の上から落とされるぞ〜。
貝差彩子、崖に呼び出されても決して行くなよ〜。
えー、なんだろうなぁ。
マジですんごい気になるんだけど…。
貝差彩子と千葉ヨメン。
ってか、千葉ヨメンってなに?
どういう名前なの?
すんごい気になるんだけど。
ヨメンって。
ヨメンと彩子…。
双子なのに⁉️
双子って、何かしら関連性があるような名前にしない?
生き別れだから全く関係性のない名前にしたのかな?
けど、やっぱり双子って似たような感じの名前にするイメージだよなぁ。
ミキマキとか。
マナカナとか。
和也と達也とか。
おすぎとピーコとか。
ん?
おすぎとピーコはあまり関連性がないな。
そうか。
そっちの双子なんだ。
おすぎとピーコ的な。
ヨメンと彩子。
なるほど。
なるほど?
そうだった。
「なーるほど」が口癖の垣野先生のところに行かなきゃないんだった。
危なく職員室を通り過ぎてしまうところだった。
あぁ、めちゃくちゃ怒られるんだろうなぁ…。
嫌だなぁ。
私は大きな息を一度吐いてから職員室のドアをノックした。
「失礼しまーす」
職員室に入り、垣野先生のところへ向かった。
「今日は、すみませんでした!」
「決して垣野先生の授業が退屈だからとか、そういうのではないんです!」
「あの、これには深いわけがありまして…」
「文化祭の準備のため、強いてはクラスのみんなのためといいますか…」
「今後このようなことがないように、十分気をつけてまいります!」
言いたいことは山ほどあるのに、私が口に出して言えたのは
「すみませんでした」
だけだった。
あとは全部頭の中だけのシュミレーションだ。
全て妄想。
色々言いたかったけど、口には出せなかった。
どれもこれも言い訳に聞こえるし、何よりも垣野先生には全てお見通しのような気がして、何も言えなくなってしまったのだ。
しばらく間が空き
「あのノート、出して」
と静かな口調で言ってきた。
もしかしたら取り上げられてしまうしれない…。
そんなことを思いつつ、おずおずとカバンの中からノートを取り出し、垣野先生に渡した。
せっかく書いたのに…。
ようやく書いたのに…。
あとちょっとなのに…。
あとちょっとで書き上がるのになぁ…。
取り上げられてしまうんだろうか…。
取り上げられたらどうしよう…。
もう一度同じものを書けと言われても書ける気がしない。
あぁ、文化祭の劇どうしようか…。
いっそのこと劇はやめてヒゲダンスでもするか?
いや、そんなわけにもいかないよな…。
そんなことを思い、目を伏せた。
次の瞬間、シュッシュッシュッという風を切るような音がした。
破かれた…?
恐る恐る目を開け、垣野先生を見ると、ものすごいスピードで私の書いた台本を読んでいた。
シュッという音はページをめくる時の音だったんだ…。
それにしてもものすごいスピードだ。
これで読めているんだろうか…?
いや、読まずにただめくっているだけなんだろうか…?
垣野先生は何も言わずに、最後のページまでいくとパタンと閉じた。
そして
「なーるほど」
と言って赤ペンを取り出した。
「ここと、ここと、ここ、いらない」
「ここと、ここは逆の方が面白くなるから」
「ここはちょっと変だから、こうこうこう直しましょう」
と言って赤ペンで書き出した。
読んでたんだ…。
あのスピードで。
そして、理解してたんだ…。
すげぇ…。
感心しながらも戸惑っている私に
「ん?何してるの?やらないの?」
と垣野先生は言ってきた。
「やります!え?え?いいんですか?」
と言うと
「いいんですか?ってどういうこと?」
と聞いてきた。
「いや、怒られるかと思っていたので…」
「怒りはしないわ。大まかな流れとしては悪くない。よく出来ている」
「あ、ありがとうございます」
「こことここを少し直して、もう少し全体を手直しすればいいだけのこと」
「あ、いや、そうではなくて…」
「ん?どういうこと?」
「授業中に、これを書いていたので…。怒られるかな…と…」
「あー、それは取るに足らないことよ。それより時間ないんでしょ?」
「あ、はい」
「しのごの言わずにやっちゃいましょう」
と言って私に椅子とペンを差し出してくれた。
垣野先生の指摘した部分を直すと断然に良くなったのが目に見えてわかった。
さらに
「ここ、もっと何か言い方変えれないかしらねぇ?」
「あ、ここはこうしましょう」
などとアイデアを出してくれた。
そのうちに私も
「ここをこうしたらどうですか?」
「ここっていっそのことバッサリ切って、ここをもっと増やして…こんな感じはどうですか?」
と、自分1人では考えられなかったアイデアが出てきた。
それから2人は夢中で台本を書き直し、気づけば外は真っ暗になっていた。
見渡すと、職員室にはもう誰も残っていなかった。
校舎は、職員室だけに灯りがついていた。
遅くまで部活をしている生徒の姿もなく、校内にも校庭にももう人影はなかった。
台本を全て書き終えると
「お腹すいたわね」
と言って、垣野先生は机の引き出しから紫色の小袋に入ったお菓子を取り出し、私にくれた。
こぼさないようにと、どんなに注意してもこぼれてしまうそのお菓子は、お腹が空いていたせいだったのか、今まで食べた中で1番美味しく感じた。
最後の一口を頬張った瞬間、垣野先生が大きくむせた。
「ゲホゲホ…。私、どうしても…このお菓子食べると…ゲホッ、む、むせるのよ…ゲホゲホゲホ…」
垣野先生が胸を叩きながら給湯室の方へ行った隙に、私はスカートの上にこぼれ落ちていたお菓子のカスを床に払った。
「私コーヒー飲むけど、壽賀美さんは?若いからコーラとかなのかしら?」
「あ、いえ。コーヒーで」
と言うと
「そうね。あなたの顔はコーラ顔じゃないわね」
と言ってきた。
コーラ顔ってどんなだよ…と心の中でツッコミながらもそれは口にすることなく、苦笑いをした。
「炭酸苦手なんで…」
と言うと
「あなたの顔は日本茶顔よ」
と給湯室の奥から顔を出し言った。
日本茶顔ってなんだよ?と思いながら
「はあ…」
と言うしかなかった。
コーヒーを持って手渡してくれた垣野先生は
「ほら、あるじゃない。ウーロン茶顔とか、はちみつレモン顔とか。あと、レモンスカッシュ顔でしょ。クリームソーダ顔、つぶつぶオレンジ顔、バナナ・オレ顔もあるわね」
と、全く意味がわからないことを言ってきた。
よくわからなかったが
「あぁ、ありますね…」
と合わせて答えた。
垣野先生は時折
「ん、んっ」
と小さな咳払いを何度かしていたので、なかなか喉の奥の方にお菓子がへばりついて取れなかったのだろう。
その日の夜、私はほどよい疲れと達成感と高揚感を感じながら布団に入った。
思えば私の17年間、こんなに達成感を感じたことなんてなかった。
何かに一生懸命取り組んだこともなければ、最後まで何かをやり遂げるなんてこともほとんどなく、何をやっても中途半端だった。
そろばんも6級でやめてしまったし、習字に関しては9級でやめた気がする。
勉強もスポーツも何も出来ない私が、垣野先生の力を借りてひとつのことを成し遂げた。
しかもこの気持ちよさはなんなんだろう…。
私はこの日のことをきっと何年経っても忘れないだろう。
そして、帰り際に垣野先生に言われたあの言葉も。
「あなたは、あなたの茶柱を立てるのよ!」
どーゆー意味だよ‼️
なんで最後親指立てたんだよ!
〈続く…〉
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出演者
宇利盛男…うりもさん
垣野先生…書きのたね@ブルボンヌさん
小郷オーエン…shogoさん
貝差彩子…彩夏さん
千葉ヨメン…ばちょめんさん
壽賀美…ららみぃたん
この作品(話・番組・動画)はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません
またまた文化祭にたどり着けないうちに、5,500文字を軽く超してしまったのでここでまた一旦終了。
次こそ文化祭を描けるといいんだけど…。
彩子の告白のシーンとその後はこちらから。
その弟ヨメンの記事はこちらから
shogoさんの記事はこちらから
『すっぱい』青春をあなたの妄想で描いてみませんか?
プロットはこちらから。
ではまた。