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『ミセス・クルナスvsジョージ・w・ブッシュ』試写会
シリアスなことを、ユーモアに包んで表現されることに、自分がいかに慣れていないかを思い知らされてしまった。
9.11が起こった時代背景も手伝って、ドイツ在住のトルコ移民一家の息子・ムラートさんが、旅先のパキスタンで突如アメリカに拘束され、グアンタナモに収監されてしまう。この無実の息子を救うために行動を起こした、母・ラビエさんのお話。
そもそも、こういう史実があったことを知らなかった…。
敗戦を経て復興を進める中、労働力として移民を招待したドイツ。まさか住み着くとは思ってなかった誤算ゆえの、政治的なジレンマもあったらしい。
自ら招いた移民の方を邪険にもできないけれど、疑いのある人を助けたように見えてしまうことへの懸念。アメリカが解放すると言っても、ドイツ側がすんなり受け入れなかった背景は、トークショーの解説を聞いて納得した。
4年半以上の拘束を経て、ムラートさんは解放されたけれど、疑いがはれたわけではなく、いまだ名誉は回復していないという。星空を眺めつぶやく言葉の重さに涙が滲んだ。
事実だけを抽出したら、どれほど深刻で、過酷な出来事だったかと思う。そしてたぶん、少なくとも日本人には、それがいかに過酷だったかを描いた方が、ウケがいい。
でも、いかにも御涙頂戴で、深刻なことをさも深刻に描かなくても、社会問題として強く提言することは可能なんだ。これはそういう作品。
トークショーによると、実際の母・ラビエさんも、共に戦った弁護士さんも、この映画のようなお人柄なんだそう。むしろ史実に忠実に描かれた作品ってことになる。
TBS報道特集で、交通事故の加害者家族が「笑ってはいけないと思って生きている」と話したのを思い出す。
大変なことがあったら、大変な顔をしなくてはいけない、みたいな空気が日本にはある。でも、生きている私たちは目の前の生活を生きなくてはいけない。気持ちのコントロールの難しさは、私自身も日々感じるところはあるけれど、どんな背景を抱えようと、自分の人生を楽しむことは、誰に咎められることでもない。
ジョージ・W・ブッシュと、どんな風に対決するのかと思っていた部分だけは、若干肩透かしをくらった気分でしたが、とても勉強になりました。
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Wikipediaに掲載されている、グアンタナモ湾収容キャンプの写真は、実際に映画の中でもチラッと出てくるのだけれど、なんと恐ろしいことか…。