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『イリュージョニスト』千秋楽の日に『ZIPANG PUNK〜五右衛門ロック III』を鑑賞する
実をいうと、私はミュージカルファンである。今まで見たミュージカルは9割がた劇団四季という偏ったミュージカルファンではあるが。
1/29、春馬くんが世界初の主演を務めるはずだった『イリュージョニスト』の千秋楽が無事成功を収めたとのこと。
春馬くんの想いを繋げて、困難な環境下で諦めることなくやり遂げてくださった海宝直人さんはじめキャスト、スタッフの皆さん、観に行かれた方々には、ただただ感謝と賛辞の想いしかない。
私はといえば、『イリュージョニスト』の千秋楽の日に、自宅でAmazonプライムで配信中の『ZIPANG PUNK〜五右衛門ロック III』を鑑賞した。
わたしのミュージカルファン歴
私がミュージカルを初めて見たのは、帝劇の『ミス・サイゴン』が最初だった。もうかれこれ30年近く前になる。
幕が開けた途端、その熱量に圧倒されて涙がぽろぽろ流れた。ステージから押し寄せてくるものすごいエネルギーを受けて、舞台というものに一瞬にして魅了された。
こんなにも、体中の血がすごいスピードで流れだし、魂を震わせるものがあったの!?と、それは感動したものだ。その後すぐに見た『コーラスライン』も、幕開けから泣きっぱなしだった。20代の頃のことである。
上の子がお腹にいる時、劇団四季の『Cats』と『ライオンキング』を見た。子供が生まれたら、絶対に見せてあげよう、そう思い、実際そうした。
うちの子供たちも幼少期から劇団四季のミュージカルに一気にハマり、それからミュージカル鑑賞は私と子供たちの共通の趣味になった。劇団四季会員にもなり、ほぼ毎月、子供たちを連れてせっせと四季劇場に通っていた。『ライオンキング』や『Cats』などは、もう10回は見ていると思う。『リトルマーメイド』や『オペラ座の怪人』や『マンマ・ミーア」や『ウェストサイド物語』や・・・子供向けではないが、春馬くんがいつかやってみたいと言っていた『ジーザス・クライスト=スーパースター』も見た。
『イリュージョニスト』で春馬くんの代役を務めてくれた海宝直人さんが出ていた『アラジン』や『ノートルダムの鐘』も見ている。海宝さんは、可愛いらしいお顔とのびやかな歌声の華のある俳優さんで、両者とも光り輝いていた。
・・とまあ、こんな感じで私のミュージカルファン歴は、ほぼ子供と一緒、子供中心で、劇団四季以外で見たミュージカルも、『アニー』『ビリー・エリオット』など子供が好きそうなものしか見ていない。
春馬くんがミュージカル『キンキーブーツ』に出ている、という話を聞いたとき、「えっ!?あのイケメン俳優の春馬くんがミュージカルできるの!?」と食指が動いた。
でも、その頃の私は、ミュージカルは子供たちと行くものだった。ドラァグクイーンが出てくる『キンキーブーツ』は、まだ子供たちには早いかな。子供たちが大きくなったら、再演や再再演で見に行こう、ってそう思っていた。これがほんとに悔やまれる・・・
『ZIPANG PUNK〜五右衛門ロック III』とは
劇団☆新感線の大人気『五右衛門ロック』シリーズ第三弾。第1弾『五右衛門ロック』(2008年)、第2弾『薔薇とサムライ』(2010年)に続き、
『ZIPANG PUNK~五右衛門ロックIII』は2012年~13年にかけて東京・大阪で上演、劇団☆新感線史上最大となる約13万人を動員するほどの大ヒット作。
誰もが狙うはジパングに隠されたお宝・・・大綱秀吉、栄華の時代、古田新太さん演じる天下無敵の大泥棒”石川五右衛門"は蒼井優さん演じる女盗賊”猫の目お銀”とともに空海ゆかりの黄金目玉像を盗み出す。
春馬くん演じる”明智心九郎”はお上直属の若き探偵。盗まれた黄金目玉像を巡る華麗な推理を繰り広げ、とうとうそのありかにたどり着くが、実は心九郎の本当の正体は・・・
天然王子役に浦井健治さん、謎の尼僧役に高橋由美子さん、堺の豪商役に村井國夫さん、天下人・秀吉役に麿赤兒さんと、超豪華キャストが歌って踊って笑わせるこれぞ新幹線流ロック活劇の真骨頂。
春馬くんの舞台俳優としての技量に度肝を抜かれた
春馬くんがいなくなった日から数々の作品を追ううちに、映像ではあるが、地球ゴージャスの『星の大地に降る涙』『海盗セブン』、劇団☆新感線 の『ZIPANG PUNK〜五右衛門ロック III』と順番に見た。今回の『ZIPANG PUNK〜五右衛門ロック III』は2回目の鑑賞となる。
当時『キンキーブーツ』の噂を聞いたとき、正直言って本当に申し訳ないが、何も知らなかった私はイケメン俳優がちょっとミュージカルに出てみた、みたいな感じなのかな、なんて思っていた。
ところがどうよ、春馬くんがいなくなってから、春馬くんの舞台の映像を見て、ほんとに度肝を抜かされた。
➀とにかく踊りがすごい!
うちの子供たちは、趣味でバレエを習っている。私自身はまったくの運動音痴であるが、10年以上踊り畑でサポートしてきた身として見るに、春馬くんの踊りはほんとに素晴らしいと思う。ちょっと運動神経がいい人が、ちょっと練習したレベルではない。ダンサーのレベルだと思う。
ブレない芯。どんな激しい動きでも、体幹のブレが全くない。キレッキレの動きができるのは、ちゃんと筋肉がつくべきところについている証拠。
そして、指先から足の先までいき渡った神経とその優雅な動き。容姿の美しさもさることながら、動きにも「華」があるのだ。
首のアイソレーション(首を左右に動かす動き)も披露しているが、練習したってなかなかあんなにきれいにできるものではないと思う。小さい頃から身につけた柔軟性、リズム感、体幹、そしてセンス。つくばアクターズスタジオ時代からダンスレッスンをしていて踊ることはあまり好きではなかったという春馬くん。でも、幼少期に身につけたものって宝物である。
➁歌がすごい!
音程、リズム感、声量、声の質、どれをとっても予想外のレベルだった。お腹から出ている声、そして表現力。のちに歌手デビューした『Fight for your heart』の歌い方とも『Night Diver』とも違う、本物のミュージカル俳優としての歌い方だ。この使い分けのすごさったら!
➂滑舌の良さがすごい!
どんなセリフも、きっちりと聞かせる。とにかく滑舌が良い。シーンによる声色の使い分けも素晴らしく、まさに七色の声を持つ男。
④演技力がすごい!
実際の劇場でミュージカルを見る場合、前列の席でなければなかなか見られないであろう顔の表情も、映像だとよーく見える。この『ZIPANG PUNK〜五右衛門ロック III』の心九郎さまは、アップもたくさんあったので、キラリンスマイルも驚愕の表情も喜怒哀楽の表情もよく見えた。映画やドラマの時とは全く違う表現。よくもまあ、こんなに使い分けができるものだ。そして、発せられる熱量がすごい。
既に映画やドラマの春馬くんで十分すぎるほどその演技力や才能に驚かされていたが、これらミュージカルの春馬くんを見たら、「舞台こそが春馬くんの本陣だったのではないか」と思った。春馬くん、君はまさにミュージカルの申し子よ。
実際、春馬くんが一番力を入れたいと思っていたのはミュージカルだったようだ。ミュージカル好きの私が、春馬くんに引き込まれたのは、これも一つの要因だと思う。
日本ではまだ、舞台に著名人を観にくる感覚の人も多いと思うんです。だからこそ、映像の仕事も頑張っていかないといけないと思っていて。 舞台やミュージカルという産業をもっと身近に感じていただくための、一つの歯車に僕がなっていけたら ~C&Cインタビュー 2020.1.5~
『イリュージョニスト』千秋楽に想う
『イリュージョニスト』千秋楽について、キャストや見にいった方々、いろんな方がSNSでメッセージを挙げてくださっていた。当初予定していたミュージカル形式では実現が困難となり、コンサート形式でしかも日程は3日間のみという過酷な状況下で、必ず届けるという強い思いでたくさんの山を乗り越えて実現した本作品。関わった皆さんは、常に春馬くんを胸に置いてくださっていたのがよくわかる。胸が熱くなる。
だけど、私はと言えば未だ『イリュージョニスト』の公開稽古映像さえも見れていない。海宝直人さんも好きな俳優さんではあるのに、どうしても春馬くんだったら、と思ってしまうのは避けられない。ごめんなさい。
春馬くんがいなくなってから、子供たちと一緒に劇団四季のミュージカルを3本見た。『マンマ・ミーア』『コーラスライン』『ライオンキング』。春馬くんの舞台を生で見たことがないのにも関わらず、私は常に春馬くんを重ねながらこれらミュージカルを見てしまい、いつもの感動とは違う涙が溢れてしょうがなかった。舞台の春馬くんを見たかった、と思うから?この役、春馬くんだったら素敵だったろうなと思うから?
いや、本当はわかっている。素晴らしい舞台を見るほど、『イリュージョニスト』が素晴らしかったと聞けば聞くほど、「春馬くん、どうして、こんな素晴らしいものを手放してしまったの?」という疑問がよみがえってきてしまうから。
だから、ここ数日、私は胸が痛い。
いつになったら、素晴らしいものを素晴らしいと、春馬くんと切り離して見られるようになるのだろう。
まだまだだな、私。
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