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手の中の音楽10〜メンデルスゾーン「ピアノ三重奏曲1番 Op49」
イギリスに、若い音楽家の為の室内楽アカデミー「Pro Corda」という教育機関がある。画家コンスタブルが描いたサフォーク州にあるLeiston Abbeyという古い修道院、その遺跡の敷地内に施設がある。
ここでは、5歳から25歳の音楽家向けに、室内楽のコースが開講される。コースは年代別になっており、私の娘二人も参加していた。1週間泊まり込み、参加者がグルーピングされ、それぞれが課題曲に取り組み、最終日にはコンサートが開かれる。ロンドンから車で2時間半程度の道のり、初日に送り届け、最終日に再び訪れ、コンサートを鑑賞して連れて帰る。娘はそれぞれ別の年代のコースに参加するので、最低でも年4往復はした。
クラシック音楽は好きだが、室内楽というとあまり馴染みがなかったが、娘の演奏を通じて、触れることとなった。そんな曲の中で、好きで今もしばしば聞いているのが、長女が取り組んだメンデルスゾーンの「ピアノ三重奏曲1番」(1839年)である。
室内楽と言われてもピンとこない方、あるいは難しい曲をイメージしている方は、是非聞いて欲しい。ちなみに、この曲について、<シューマンは「ベートーベン以降に書きあげられたもっとも偉大なピアノ三重奏曲」と絶賛している>(「クラシック名曲ガイド④ 室内楽曲」音楽之友社)。
第一楽章は、ゆったりとしたチェロで始まるが、この“歌”が素晴らしい。そこにバイオリン、ピアノが絡んできて、豊かでドラマチックな曲へと展開していく。第二楽章は、ピアノの“歌”で始まり、各パートが主旋律をキャッチボールしあいながら、オペラの三重唱のように進んでいく。
第三楽章は、早いテンポのスケルツォ楽章。チャーミングで、軽快なリズムに思わず体が動く。フィナーレは、再び劇的な楽章となるが、ここでも美しい“歌”が時折顔を見せる。
全編美しいメロディで親しみやすく、“良い曲だなぁ”としみじみ思う。
私は、アイザック・スターン/ローズ/イストミンのCDをよく聴いていたが、Apple Musicには、現代の巨匠パールマン/ヨーヨーマ/エマニュエル・アックスhttps://music.apple.com/jp/album/mendelssohn-piano-trios-op-49-op-66/350650543?l=en
歴史的演奏家としてカザルス/ジャック・ティボー/カザルス/コルトー、ハイフェッツ/ピアティゴルスキー/ルービンスタインなどの録音がある
*こちらは、ジョシュア・ベル/マイスキー/キーシンの演奏