天地真理の呪い〜家庭内いじめはいつまで
私が小学生の頃、三人娘と言えば、美空ひばり・江利チエミ・雪村いづみではなく、小柳ルミ子・南沙織・天地真理だった。3人とも1971年のレコードデビューである。
こうしたトリオがメジャーになると、子供の間で話題になるのは、「お前、3人のうちで誰が一番好き?」というものである。
小柳ルミ子は宝塚出身で、デビュー曲「わたしの城下町」で日本レコード大賞最優秀新人賞。翌年の「瀬戸の花嫁」で日本歌謡大賞と、歌の上手さは抜群だった。逆に、子供心にはアイドルというようより、プロ歌手という存在だった。
南沙織は、デビュー曲「17才」を初め、筒美京平作曲の楽曲がモダンで好きだったが、本人の印象が薄く、ちょっと陰がある印象だった。
天地真理はと言えば、ドラマ「時間ですよ」に登場し、楽曲も子供に親しみやすく、上記の質問に対して私は、「天地真理」と答えていた。おそらく、当時の小学生の大半は同じ答えであったと思う。現に、“マリちゃん自転車“は存在したが、“ルミ子自転車“や“シンシア自転車(注:南沙織の愛称、吉田拓郎/かまやつひろしの楽曲「シンシア」もこの愛称から来ている)“はなかったと思う。
天地真理ファンと答えていたことが、数十年後に呪いとなって自らに振りかかり、家庭内いじめの原因となるとは、小学生の私はつゆほども思っていなかったのである。
テレビ東京が得意としているが、いわゆる昭和歌謡の番組を時々観る。最近では、昭和には限らないが「3秒聴けば誰でもわかる名曲ベスト100」という番組を観ていた。この手の番組を観ていると、隣の妻から必ず攻撃が来る。“この家に天地真理が好きだった人がいるんだよねー“、“自分の夫が天地真理ファンだったなんて、信じられない“等々と、私のことをいじめにかかる。
小学校を出ると、天地真理からも卒業した。中1の時、大阪にもあったソニービルに南沙織が来て、友人と見に行った。至近距離で見た南沙織は、いたく美しく、天地真理ファンだったことはすっかり忘れた。
そして、長ずるに及び、天地真理ファンだったことは何とはなく葬り去りたい過去になった。南沙織の楽曲を聴くことはあるが、天地真理の楽曲を聴くことはない。
しかし、忘れたい過去は、妻の言葉によって、否応なしに蘇り、家庭内のいじめにつながっていく。私はいつどうして、この黒歴史を妻に伝えてしまったのだろう。“覆水盆に返らず“である。女性というものは、覚えておいて欲しいことはさっさと忘れ、忘れて欲しいことはきっと覚えている、そういう生き物である。
いっ時のブームに乗り、その後は彼女のことを顧みなかったことが悪かったのだろうか。私は、これを「天地真理の呪い」と呼んでいる
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