スーパーボウル、宴のあとで〜色々と歴史に残る戦いでした
米アメリカン・フットボールのクライマックス、スーパーボウル(以下、SB)、カンザスシティ・チーフス(以下、KC)vs サンフランシスコ・49ers(以下、SF)の一戦が終了しました。今年は、テイラー・スウィフト効果で、例年以上に日本で報道されていたように思います。
今回の会場はラスベガス、SFの元QBでSB4回制覇、キャリアの最後はKCに在籍したジョー・モンタナ、NBAロサンゼルス・レイカーズのレブロン・ジェームス、俳優のレオナルド・デカプリオなどなど、いつも通り、“セレブ“が観戦に訪れていましたが、TV中継におけるテイラー・スウィフトの抜かれ方は、これまでには見られなかった状況でした。
試合そのものはKCが制し、19シーズンぶり史上9チーム目の連覇となり、こちらも歴史に刻まれました。さらに、最初のスコアは、SFのフィールドゴール(以下、FG)は55ヤードでSB最長記録。SF10−3のリードで迎えた後半第3Q、SFの強力守備陣に抑え込まれていたKCがなんとか追いすがったFG、こちらは57ヤードでSB最長記録更新。
この後、試合を大きく左右するプレイが起きます。引き続き、両チームの強力ディフェンス陣が踏ん張り、前進できない中、KCのパント。蹴られたボールが、レシーバーの前方に位置し、味方を守っていたSFの選手のかかと付近に接触し、ルーズボールとなりKCがリカバー。敵陣16YDという絶好のポジションを得たKCが、最初のプレイでQBマホームズからのパスが通りタッチダウン(以下、TD)。デザインされたプレイが、的確に実行された時には、守備は無力にならざるを得ないという見本でした。
これでKCが13−10と逆転、流れは傾いたかと思われましたが、次の攻撃でSFはQBパーディーからのパスを中心に前進、最後はWRジェニングスが受けて技ありのTD。しかーし、また一つここでドラマが生まれます。エキストラポイントを狙ったルーキーのキッカー、ムーディーの蹴ったボールは、KCのブロックに阻まれ失敗。1点を取り損ないます。決まっていればSF17ー13。FGの3点では追いつけないシチュエーションでしたが、16−13にとどまりました。誰もが、嫌な予感を感じました。
このように、試合全体はディフェンシブなものになりましたが、攻撃陣もここぞというところでは本領を発揮、キッキング・シチュエーションを担当するスペシャル・チームも見せ場を作るという、両チーム全体が素晴らしいパフォーマンスを示した名勝負と言えます。さて、この後はKCがFGを決め同点、SFもFGを成功させ19−16と再度リードし、最終第4Q残り1分53秒となりました。
ここからのQBマホームズを中心としたKC攻撃陣の落ち着きは、さすが王者という貫禄でした。着実に前進し、SFゴールへと迫ります。これはお決まりのKC逆転劇かと思いましたが、LBフレッド・ワーナーを中心としたSF守備陣が意地を見せました。終始手堅い試合運びをしたKCはギャンブルせず、FGをしっかりと決めて延長戦(OT)突入となりました。
これで新たな記録が発生します。OTのルールについて、レギュラーシーズンとプレイオフ以降のポストシーズンでは異なるものとすることが、2022年に承認されました。この新しいルールが適用された、最初のSBとなったのです。
簡単に言うと、レギュラーシーズンのOTは、最初に攻撃権を持ったチームがTDすれば勝ち、FGの場合は相手チームに攻撃権が移ります。一方、ポストシーズンの場合、最初の攻撃でTDを取られても、もう一方のチームに必ず攻撃権が与えられます。
OTのコイントス、SFが勝ち、先攻を選ぶか後攻を選ぶか注目されましたが、先攻を選択しました。これについては、結果論で色々言われていますが、SFの守備陣に明らかに疲労が見られていたので、先に攻撃を選んだのは正しいと私は思います。
先攻のSFは、FGで先制。このドライブRBマキャフリーの鬼気迫る走り、KCディフェンスの痛恨のペナルティなど、しびれる展開でした。こうして、3点差でKCの攻撃を迎えました。
このドライブも歴史に残るものではないでしょうか。今シーズンのKCを象徴するかのように、WRの判断ミス発生、多くのスナップが低いなど、ギリギリの状態でなんとかSFの強力ディフェンスをこじ開けて行きました。第4ダウン、失敗したら負けの状況でのマホームズのランプレイ(おそらくケルシーへのパスとのオプション・プレイ)、そして最後のTD。これらも、プレイ選択・デザイン・その執行が美しく決まった芸術作品のようなものでした。
なお、残り時間について解説者が話題にしていましたが、新しいルールでは時間的な制約はないので、時計の秒数についてKC側は全く気にする必要はありませんでした。
これでKCは前人未到の三連覇に挑戦する権利を得ました。ペイトリオッツのQBトム・ブレイディと比較されるマホームズですが、来季優勝すれば、文句なくGOAT(Greatest Of All Time)の仲間入りでしょう。
勝利後のインタビューで、マホームズが「これは始まりだ。我々はやり遂げていない。(中略)我々は若いチーム、前進し続ける」と話していたのが印象的でした