手の中の音楽34〜山下達郎「ビッグ・ウェイブ」40周年とビーチボーイズ
先週日曜日(6月30日)のFM「山下達郎サンデー・ソング・ブック」は、アルバム「ビッグ・ウェイブ(BIG WAVE)」の40周年記念特集だった。
このアルバムは、同名のドキュメンタリー映画のサントラとして作られた。アナログA面は山下達郎のオリジナル曲だが、歌詞は全て英語。英語版の“悲しみのJODY“も収録されている。
そしてB面の中心がカバー曲。ビーチボーイズ(The Beach Boys)とその中心であったブライアン・ウィルソンに関係する曲である。
ある意味、山下達郎のビーチボーイズ的な部分が詰まった作品であり、そのこだわりから歌は当然として、ほとんどの楽器を自身で演奏し多重録音で仕上げている。
A面最初の“ビッグ・ウェイブのテーマ“も好きだが、B面のビーチボーイズ“Girls On the Beach"、ハリー・ニルソンが作り、ブライアン・ウィルソンが愛した曲“This Could Be the Night“なども素晴らしい。
この番組を聴きながら、ビーチボーイズを想った。以前にも書いたが、私は遅れてきたファン。大学に入って、ようやく念願の「アメリカン・グラフィティ」(1973年 ジョージ・ルーカス監督)を東京の名画座で観ることができた。ビデオが出始めた頃、観たい映画は名画座での上映を見つけるしかなかった時代である。この映画のエンディングで流れる、ビーチボーイズの“All Summer Long“にいたく感動した。
中古レコード屋で、買い求めたのは2枚組ベスト盤の「Endless Summer」(1974年)。ネットで発表作品を調べることなどできない時代、知っている曲が多くいて、カバーの絵が素敵だったアルバムを手に取ったのだ。
後になった分かったことだが、1970年代から私が遅れて来たファンとなった80年代初めにかけては、ビーチボーイズにとっては難しい時期であった。一方の私は、「Endless Summer」を聞き込み、ガールフレンドにも聴かせていた。もっとも、それは今の妻だが。
このアルバムに入っている楽曲は全部素晴らしい。山下達郎が「ビッグ・ウェイブ」に収録した“Girls On the Beach“、“In My Room“、“Don't Worry Baby“などのスローテンポの名曲。“Fun, Fun, Fun“などのノリの良さ。そして、アルバム全体からほとばしる、美しいコーラス。
ずいぶん長い間、私はこの「Endless Summer」で満足していた。レコードを買う資金は限定的だったし、ジャズに手を出し始めていた時期だった。
それから、数年を経て名作「ペットサウンズ」を手に取り、その他のビーチボーイズ作品を聴くようになり、「ビッグ・ウェイブ」所収の“Please Let Me Wonder“や“Darlin'"のオリジナルを耳にすることになる。
どこまでも遅れて来たビーチボーイズ・ファンだったが、それはそれで良い。
“夏だ!海だ!タツローだ!“、“夏だ!海だ!ビーチボーイズだ!“