手の中の音楽7〜リンダ・ロンシュタットの70年代「Living in the USA」

1970年代のアメリカを代表する歌姫の一人は、間違いなくリンダ・ロンシュタットである。1969年にソロデビューし、1974年のアルバム「Heart Like a Wheel」、シングルカットされた“You Are No Good”がそれぞれチャート1位に輝く。その後のアルバムもヒット、グラミー賞も獲得する。

圧倒的な歌唱力を基に、カバー曲、様々なソングライターの曲を歌い、そのクオリティは原曲を上回るものも多数あるが、同時にオリジナルに新たな視線を向けさせる。私も、リンダのパフォーマンス→原曲にあたるということも多くあった。

その領域は、カントリーロック、西海岸のJDサウザー、ジェームス・テイラー、ウォーレン・ジヴォン、カーラ・ボノフといったアーチスト中心から、領域を拡大させていく。70年代のリンダ・ロンシュタットの活動はそんな感じでもあった。

そして70年代最後、1978年に発表したアルバムが 「Living in the USA」である。私にとっては、前作の「Simple Dreams」と本作が、最も聴き込んだ作品として思い入れが深い。特に「Living〜」は、収録された全曲全て素晴らしく、今でもよく聞いている。

1曲目はチャック・ベリーのカバー“Back in the USA”から軽快にスタートし、2曲目はナット・キング・コールなども歌ったスタンダード曲“When I Grow Too Old to Dream”。表題通りアメリカの曲が続くが、異色が4曲目の“Alison”。イギリスのロック・アーチスト、エルビス・コステロが1977年のデビューアルバムに収録した曲である。これをリンダ・ロンシュタットは自家薬籠中のものとし、素晴らしい曲に仕上げている。

B面も、リトル・フィート、ミラクルズ(スモーキー・ロビンソン) などが並び、最後はプレスリーの“Love Me Tender”で終わる。

こうして歌の領域を広げていったリンダ・ロンシュタットが、80年代に入りスタンダード曲に踏み込み、偉大なる先人たちに挑むのは必然であったように思う。そして、それは1983年の「What's New」からのジャズ/スタンダード3部作に結実する。

彼女の来日は4度(内単独は2度)と、意外に少なく、79年に初来日。私が、観たのは2度目の来日。「California Live」として横浜スタジアムで開催された、ジェームス・テイラー、JDサウザーらとのジョイント公演である。84年はジャズ/スタンダードのコンサートがあったが、チケットを買いながら、何らかの事情で行けなかった。 

リンダ・ロンシュタット、1946年生まれ。まだまだ歌えるはずであるが、2011年体調不良により引退を宣言。進行性核上性麻痺という病気だった。残念であるが、素晴らしい歌声は永遠に残る

*Apple Music  「Living in the USA」のオリジナル曲などで作ったプレイリスト




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