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とてもお元気な矢野誠一「我が朝食」〜日本経済新聞に載ったエッセイ

6月30日の日曜日、日本経済新聞の朝刊最終面「文化」に矢野誠一のエッセイが掲載されていた。

矢野誠一さんと言えば、寄席芸能・演劇評論のレジェンド。私も何冊か著作を読み、勉強させていただいた。一時、神田伯山がラジオで噛みついていたのも記憶に新しい。

そんな矢野さんが何を書いたのかと読み始めると、「我が朝食」と題した日常の様子であった。出だしはこうである。

<50年連れそった同い年齢(どし)の荊妻(けいさい)が一期を終え旅立ってから、はやいもので九年目になる>

“荊妻“は、広辞苑第七版によると<自分の妻の謙称。愚妻>とある。ある奥さんが質素に荊(イバラ)のかんざしをつけていたという中国の故事から来ている。“愚妻“という言葉は好きではないのだが、“荊妻“というのは良い。なにか、矢野さんの亡妻に対する愛情が感じられる一文である。

一人暮らしを余儀なくされた矢野さんの朝食は、ほとんどがパン食。デパート地下のパン屋で<バゲットを二センチ斜め切りにしてもらい>冷凍しておく。調剤されている薬のほとんどが朝食後なので、食事は欠かせない。

パンに添える目玉焼きは、<目玉焼き用のゴム製の輪>を使うのだが、<あらかじめ白身と黄身を分けておいて、白身を先に投入し透明から白色に化したあたりで黄身を落す。見た目抜群にきれいに焼きあがり、「これぞサニーサイド」と歓声をあげたくなります>。今度やってみよう。

ドリップパックを使って入れたコーヒーを飲まれるようで、なにか充実した朝という感じだ。なお、矢野さんは私の母と同じ1935年生まれ、今年で89歳。母も元気だが、矢野さんも元気そうである。

極めつけは、<朝食にどうしてもほしいのがビールで、缶入りの三五〇ccを愛用している>! ちょっと心配するが、ご本人は<昨年一二月に十日間ほど入院した際アルコールなしで過ごしたので、アルコール依存症でないことには確信を持っている>と、私の心配を解消してくれている。

後段は、朝食を起点として日常に触れているが、とにかく驚いたのは、<仕事柄年に二〇〇本近く芝居を観ているが>とされているところ。私も、芝居・舞台・寄席が大好きだが、週に二日入ると「ちょっと多いな」と思うことがある。もちろん、矢野さんはそれが本業で、私は余業という違いはあるが。

矢野さんが行く公演は、ほとんどがマチネ(昼公演)らしい。かつては平日のマチネは珍しかったが、今や普通になっている。それだけ観劇者が高齢化しているということだろう。

それにより、矢野さんは6時前には起床し、遅くとも7時には朝食を食べ始めている。

お元気な日常を共有させていただき、少し元気と気合とアイデアを頂戴した。もっとも、朝ビールはやめておくが


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