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「高津宮」上方落語の聖地をたずねる(その1)〜「高津の富」

久方ぶりに父の墓参ができた。菩提寺は、“生魂さん“で知られる生魂神社の南にある。そして、その北には“高津さん“、高津宮(こうづぐう)がある。墓参の後、私はそちらに足を向けた。

上方落語の舞台は様々あるが、その中で重要な場所を一つ挙げろと言われれば、私は高津宮と応えるだろう。上方落語の名作「高津の富」は、高津宮が主催した富くじ(宝くじ)が噺のカギとなる。

六代目笑福亭松鶴の得意ネタだったが、道中、私はその音源を聴いていた。(私の聞いていた音源とは違うが、YouTubeに動画がアップされていた)

発端の舞台は神社ではなく、大川町、今の淀屋橋近くの宿屋町。在所から大きな商売のために大阪に出てきたという大店の主人風の男〜話の主人公と、ある宿屋の主人の会話から始まる。景気の良い話をする男に、宿屋の主人は小遣い稼ぎに扱っていた富くじを買ってもらう。

男の話は実は大ボラ、なけなしのお金を使って富くじを買い、懐はカラッケツになる。

噺の半場、芝居に例えると第二場は、高津神社の境内、富くじの抽選会場へと時空が移る。そこには、我こそが当選すると集まった人々。当たったら、あぁしよう、こうしようという妄想が広がっている。本筋から外れるエピソードだが、笑いを取る重要な場面である。

騒ぎが一段落したころ、カラッケツで街中をウロウロと歩いていた、冒頭に登場した主人公が 通りかかる。懐にある富札の番号と、当選番号を見比べる。。。。。

到着した高津宮は、勿論富くじ当日のような熱気はなく、静かな境内だったが、境内・大箱の中の札を突き、当選番号を決めていたであろう本殿を眺めながら、その様子を想像した。

本殿の中には、桂南光と当代渋谷天外のサイン色紙が飾られ、その間に両人も列席した「大当り高津の富くじ」の公演成功祈願祭の写真が飾られていた。

落語「高津の富」にヒントを得て、松竹新喜劇が芝居を作った。奇しくも、先日紹介したBS松竹東急で、藤山寛美が主演した「大当り〜」が放送されていた。ただし、こちらは富くじが重要な小道具ではあるが、落語とは全く違う物語である。

高津神社を後にし、大阪の実家まで歩いて帰るのだが、実家の近所に「とんぼ」という割烹料理屋がある。酒を愛した松鶴が贔屓にした店と聞いている。

「高津の富」が終わり、実家〜墓参〜高津神社〜実家の散歩の後半に聴いていたのは、高津神社が舞台となるもう一つの名作「崇徳院」である。

明日は「崇徳院」について

*本殿と境内

*大戦の戦火でほとんどが消失したが、唯一残ったのがこの神輿庫。松竹新喜劇の舞台背景にも使われている

*六代目が贔屓にした「とんぼ」


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