ようやく読了した「心淋し川」〜初めての西條奈加
旧聞に属するが、2021年上期の直木賞は、西條奈加の「心(うら)淋し川」が受賞した。直木賞受賞作、気にはしつつ、興味を惹かれたものだけ読んでいる。西條奈加の作品、読んだことはなかったが、「心淋し川」は好みかもしれないと思い購入していたが、しばらく寝かしていた。
ようやく読んだこの小説は、江戸は千駄木の一角、淀んだ水が流れる心(うら)川沿いの町が舞台。心川の本当の名は、“心淋し川”。長屋に住む、うら寂しい人々を描く、連作短編集である。登場する人々は、何かしらを抱えながら生きていて、そのことが長屋に巣食う人々をつなぎ合わせる。
各編は独立した形を取りながら、根っこが絡まり合っていて、エンディングに繋がる。著者は、2005年作家デビューで、多数作品を送り出しており、吉川英治文学新人賞なども受賞している作家。当たり前だと思うが、最後はちょっとしたミステリー仕立てになっていて、「上手いなぁ」と感じさせられた。
直木賞の選評を見たかったので、探していると、非公式に直木賞のページを作成している人がいた。とても便利なページである。選評を見ると、この「上手さ」を積極的に評価する選考委員と、完成度の高さゆえに、推すことに慎重な委員がいたのが面白い。
ただ、「時代小説」というくくりの中で、この作品を評価しているコメントがいくつかあったが、ちょっと違う気もする。確かに時代小説ではあるが、現代に通じるところが多々ある、「今」の小説でもあると思った。
読後見つけた、著者のインタビュー記事も興味深い
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