“ユーミン万歳!“〜デビュー50周年記念ツアー「The Journey」(その1)
昨年、初めて松任谷由美のコンサートに行き、そのことは記事にもした。一度は観ておこうと思い観ることとなった「深海の街」ツアーは、ウクライナ戦争を受けて製作された新アルバムの性格もあってか、想像したユーミンのコンサートとは違っていて、松任谷由美というアーチストを深く考えさせられた。簡単に表現すると、素晴らしいステージだった。
松任谷由美のデビューは1972年、昨年10月には50周年を記念したベストアルバム「ユーミン万歳!」を発表、今年の5月からはツアー「The Journey」が始動。チケットがうまい具合に当選、6月17日の有明アリーナ公演に行って来た。
有明アリーナは、東京オリンピックのために建設され、バレーボールなどが行われた。収容人数は15,000人程度で、昨年の私が行った「深海の街」ツアーの会場、東京国際フォーラムと比べると3倍程度のキャパである。
よく出来たコンサートだった。チャンスがあれば、是非行かれることをお勧めする。
私の中では、松任谷由実には2つの顔がある。ひとつはエンターテイナーとして、J-Popの女王としての姿である。もう一つは、“文学少女“的な内向きで内省的な側面である。彼女はこの二つを兼ね備えているからこそ、50年もの間、トップのポジションを維持し続けてこれたのではないか。
今回のコンサートは、この両面がバランスよく発現されており、松任谷由美の全体像を感じることができるステージだったと思う。
「深海の街」ツアーでは、後者の側面が強く強調され、それが故に私の心に深く刺さったのだが、今回の「The Journey」をもって、松任谷由美というアーチストのコンサート体験が完成したように感じたのだ。
エンターテイメントとしての完成度は十二分であり、これで1万円程度の入場料は極めて良心的である。一方で、歌われる楽曲は、彼女の口から今まさに紡ぎ出されたように広がり、それは観客の一人一人に対して個人的に語りかけてくる。
全体のバランスも、計算されつくされているのだが、コンサートの終盤からエンディングにかけての、聴く人の気持ちに訴えかけるような構成は、“エンタメ“といった軽薄な言葉を排除するかのような、打ち寄せる名作の波だった。
明日は、もう少し具体的に、つまりネタバレとなります。“瞳を閉じて“いたい人は、見ないでくださいね