手の中の音楽16〜あの人たちのクリスマス・アルバム
12月も10日を過ぎると急に慌ただしくなる。年賀状を出す程度なのだが、なにか気がせく。世間に広がるクリスマスの飾りつけも気分を追い立てる。
この気分に合わせるように、外出時にiPhoneから流す音楽はクリスマスしばりにする。クリスマス・アルバム、かつてCDで買い集めていたが、今や配信でおびただしい数の作品が聴ける。
私がクリスマス・アルバムを集めていた頃、1987年の「A Very Special Christmas」は、ブルース・スプリングスティーン、U2始めとしたそうそうたるアーチストが参加し、クリスマス・ソングを録音している。ただし、複数アーチストのコンピレーション・アルバム用であって、彼らは“アルバム“は発表していない。
ロック系のアーチストにとって、クリスマス曲を発表するのと、自身の作品としてクリスマス・アルバムを出すのでは、大きな違いがあり、アルバムを出すには、それなりのハードルがあるのではないかと思う。それを乗り越えて発表している2人のロック・レジェンドがいる。ボブ・ディランとエリック・クラプトンである。
クラプトンは、2018年「Happy Xmas」というアルバムを発表した。クリスマス・ソングをブルース調を中心にアレンジし、クラプトン・ワールドに変換した作品である。クラプトンらが作った新曲も含まれ、その他の選曲もアレンジとの相性を考えてなされているように思える。
結果は、クラプトンの優しい声とクリスマス・アルバムは十分な親和性がある上に、あくまでもクラプトン作品として出来ており、カッコ良い。
さて、ボブ・ディランである。2009年に「Christmas in the Heart」という作品をリリースしている。このアルバムをプレイすると、最初に流れる曲が“Here Come Santa Claus“である。偏見だと思うが、ボブ・ディランとサンタクロース、親和性が全く感じられないが、おじいちゃんが孫に歌ってあげ多様な曲に仕上がっている。
ディランのアルバムは、“O Little Town of Bethlehem“のようなクリスマス・キャロルで歌われるようなクラシック、メル・トーメらによる"The Christmas Song“のようなポピュラー音楽の名曲など、王道の曲が多く含まれる。
さらに、こうした曲は最小限のアレンジで、極めて素直に歌われる。ディランと言えば、自作であっても換骨奪胎し、原曲が分からないほどの変化をほどこして演奏する人である。それなのに、“普通”なのだ。
ただし、70歳に近づいていたディランの声は、ビング・クロスビーや、ナット・キング・コールとは全く違う。美しいとはとても言えない声で歌われるクリスマス・ソングは、アレンジの力などを借りなくとも、全てをディランの色に染めている。
出典を見つけることができなかったのだが、Wikipediaにはディランのコメントが掲載されていた。なぜ“普通“に演奏したのかについて。
<他に演奏する方法などなかった。これらの曲は、フォーク・ソング同様、私の人生の一部だ。あなたも“真っ直ぐ“に演奏しなければいけない(拙訳)> アルバム・タイトルの、「Christmas in the Heart〜心の中にあるクリスマス」である。
二人の偉大なアーチストによるアルバム。全く違うアプローチだが、どちらも味わい深い
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