アメフトの悲しいニュース(その2)〜廃部措置は“臭いものにふた“
(承前)
日大の理事長は執行部会で、<「悪いことはなに一つしていない」>と言い放った。果たしてそうだったのだろうか。トップは、“知らなかった“では済まされない。
以前に書いた通り、個人の問題であれば連帯責任を取る必要はないと思う。逆に言えば、アメフト部の組織の問題ならば、組織として責任を取らなければならない。組織の問題とは、「調査報告書」では、<スポーツ部において広く犯罪行為等の不適切な行為が拡散している場合>としている。この定義の是とするならば、大学は、こうした状況ではないことを調査し判断しなければならない。
一部の情報が理事長・学長に報告されていなかったようだが、彼らが入手した情報だけでも“不適切な行為が拡散している“可能性を感じるはずである。ましてや、前回書いた通り、本件の対応にあたっていた副学長が(自首の方向となったf部員以外にも)複数名の使用の可能性を示唆していたのだから、一個人の問題では済まない可能性は認識していたはずである。
この「調査報告書」を読んで愕然としたことは、本書の表現を借りると<不祥事を起こした場合には、その事実を徹底的に調査し、その事実をすべて社会に公表し、適切な処分と再発防止策を実施する、という当然のことが理解されていなかった。>
私はかつて金融機関において、いわゆる“ガバナンス“の一翼を担う立場にいた。仮にある支店で重大な問題が発覚し、それが組織全体に波及している“可能性“があった場合に何をするか。もちろん調査であるが、最低でもその支店スタッフの全員と、支店業務から独立した立場にある人間が面談するだろう。
本件においては、理事長・学長主導のもとに、アメフト部員全員からのヒアリングを実施するのが、事実確認、原因究明、再発防止のために最低限必要なことであろう。「調査」という側面だけではなく、部員の本心に迫らずして、教育機関としての責任を果たしたと言えるのだろうか。
この調査報告書からは、大学のそうした姿勢はまったく見えてこない。8月9日に保護者会がオンラインで開催された。調査報告書から内容を抜粋すると、副学長のアクションは次の通りである;
①部員及び保護者に、後に逮捕者が出た場合は廃部になる可能性を説明
②大麻使用に関与した者、知っている者がいないか呼びかけた
結果、②について名乗り出るものはいなかった。
翌8月10日、臨時執行部会が開かれ、アメフト部の無期限活動停止処分が解除された。学校としては、本件は個人犯罪であり、部が組織として責を負うものではないと判断したのだ、大して調べもせずに。
報告書の「事実経過」は8月23日で終了しているが、大学は9月1日にアメフト部の学生寮閉鎖、再度の無期限活動停止について発表した。リリース文によると、<学生寮で2度目の家宅捜索が行われ、複数の部員が任意で取調べを受けるという事態>となり、<個人の犯罪にとどまるところではなく、大学としての管理責任がより厳しく問われている>と書かれている。
そして、10月16日、11月27日と二人の新たな逮捕者を出し、アメフト部廃部という最悪の結果を引き起こした。
これは明らかにアメフト部の責任ではなく、大学側の不適切な対応の結果である。
廃部という対応は、“臭いものにふた“にしか私には映らない。大学は不幸な過去はさっさと忘却の彼方に追いやりたい、保護者会の副学長の説明は廃部に向けて伏線を敷いていたようにも見える。そして、もっとも重要ななぜこんな事件が起きたのかの真因解明は雲散霧消するだろう。
日本大学は、教育機関の現場において起きた薬物問題の解明、大学運営改善に資する機会、社会への還元の機会をも失うことになる。
また、<事実関係を徹底的に究明する>ことなく、形式的に改善策を施しても実効性がないと感じるのは私だけだろうか。
と書いていたら、昨日(12月1日)の報道によると、大学理事会は廃部について「継続審議」としたようだ。“臭いものふた“ではいけないと気づいたか、それとも世の中の風向きを感じて迷走しているのだろうか。
12月4日に開催予定の記者会見を注目しよう
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