手の中の音楽18〜「フォリナー」のイアン・マクドナルド
「キング・クリムゾン」のイアン・マクドナルドが、今月9日逝去した。彼は、最近も来日した「キング・クリムゾン」の創設メンバーとして有名である。
ただ、プログレッシブ・ロックには傾倒しなかった私にとっては、「フォリナー」のイアン・マクドナルドである。 「フォリナー」は1977年、同名のファースト・アルバム(邦題「栄光の旅立ち」)をリリースした。
当時、日本の音楽誌やレコード販売プロモーションにおいては、“元キング・クリムゾンのイアン・マクドナルドらが結成した“といった惹句が使われていたと記憶する。そのことで騒いでいた同級生もいたように思う。
私はクリムゾンに思い入れはなかったが、なんだか凄そうな新バンドが誕生したと、ファースト・アルバムを購入した。
1曲目の“Feels Like the First Time“は、最初にシングルカットされビルボード4位まで到達した。これが良かった。ストレートなラブソングで、軽快で耳障りが良い。ボーカルのルー・グラムも私の好みだった。そして2曲目の“Cold As Ice“。ちょっとひねりが効いていて、洗練された楽曲である。
こうして、シンプルなロックと、少し複雑なアレンジが上手く融合し、飽きのこない良質なアルバムに仕上がっており、私は繰り返し聴いていた。商業的には、アルバムもビルボード4位とデビューアルバムにしては上々の滑り出しである。
イアン・マクドナルドは、メンバーの中からミック・ジョーンズと共に協同プロデューサーとしてクレジットされており、ギター、キーボードのほかサックス・フルートとマルチプレーヤーとして、厚みのある音作りに貢献したと思われる。
1978年、2ndアルバム「ダブル・ヴィジョン」をリリース、ビルボード3位まで到達する。良いアルバムだとは思ったが、前作に比べると単調な感じも受けていた。そして、同年初来日を果たす。
大阪公演に行ったのだが、ステージ上のフォリナーは、ミック・ジョーンズが仕切り、ルー・グラムがメインボーカルとして前面に出る。そして、イアン・マクドナルドはステージの端で地味に演奏する。印象的だったのは、“Starrider“のイントロのフルート演奏。イアン・マクドナルドは、まるで孤高のアーチストのように吹いていた。
1979年サードアルバム「ヘッド・ゲームス」をリリースするが、私の気持ちは離れつつあり、このアルバムを買ったかどうかもよく覚えていない。そして、イアン・マクドナルドはバンドを脱退、フォリナーは4作目「4」でビルボード10週連続1位、押しも押されぬスタジアム・バンドとなる。
一方で、私的にはもう“Feels Like the First Time“という気持ちにはならず、人気が頂点を極めつつある中、フォリナーからは離れていった。
イアン・マクドナルドとバンドの溝が深まるにつれ、バンドの音楽の面白みが薄れていき、それと共に私も離れていった。彼の訃報を目にして、そんなことだったのかもしれないと考えていた。
RIP
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