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「文藝春秋」のエマニュエル・トッドと「毎日新聞」〜世界はどうなるのか(その1)

文藝春秋5月号の巻頭に、フランスの歴史人工学者、エマニュエル・トッドのインタビューが掲載されている。タイトルは、“日本核武装のすすめ“。これで拒否反応を示す方もいるだろうが、中身はウクライナ情勢と今後の世界をどう見るかである。

ロシアのウクライナ侵攻は暴挙であり、忌むべき行為である。そして、一刻も早い停戦・終結を願う。その為に、世界が日本が何をできるかが重要であることは間違いない。ウクライナであれどこであり、国際的なルールを無視した暴力行為で、人の命が犠牲になるのは断じて許せない。

ただし、それは眼前にある問題の解決であって、世界が直面している根本的な問題は解消しない。その意味で、トッド氏のインタビュー含め、一歩身を引いて、事態を俯瞰することが重要である。

トッド氏は、感情に流されず<「地政学的・戦略的思考」>も重要であるとし、今回の戦争の責任は<米国とNATOにある>と語っている。“責任“という言葉が適切かどうかは議論があるが、ロシアの今回の行動の背景の一つは、ウクライナのNATO加盟への動きにあったことは間違いない。

ロシアの立場からすると、これは従来から警告してきたレッドラインであり、ウクライナがNATO加盟の方向に動き、しかも米国始め西側諸国が軍事面でウクライナを強化し続ける状況は、脅威でしかなく、それに対して先制攻撃を仕掛けたという構図である。

4月14日付の毎日新聞では、千葉大教授の酒井啓子氏が、“『侵攻』をめぐる二重基準 ゆがめられる国際規範“と題した論文で、米国のアフガニスタン侵攻と、ウクライナ問題を<歴史の連鎖>とし、米国のそれは「良い介入」、ロシアは「悪」とする<二重基準>、ダブル・スタンダードを論じている。

米国が、対テロ戦争としてアフガニスタンに軍事介入し、酒井氏の表現を借りると<割にあわない>として放り出したことは事実である。こうしたことを踏まえ、酒井氏は<国際規範が無力なのは、それがただの大国の武力による利益追及を正当化する口実でしかないと、矮小化されているからである>とする。

一方で、トッド氏のインタビューによると、米国にとって、<米国には対抗できない従属的な地位にロシアを追いやること>の為に、ウクライナは重要な国であり、今回の問題は米国の覇権を維持するためにも、<「死活問題」>である。つまり、米国がウクライナを支援し、ロシアに制裁を加えているのは、あくまでも自国の利益のためと見ることもできる。

ロシアのウクライナ侵攻関連の国連決議において、多くの国が「棄権」に回った。ロシアとの関係性もあるが、米国・NATOの理屈、強者の論理だけで世界秩序を保とうとすることに対して、単純に「是」としない国も沢山あるということであり、その事実は頭に留めておかなければならない。

そんなことを考えていると、今週月曜日の毎日新聞朝刊、「風知草」で山田孝男特別編集委員が、“ウクライナ 別の視点“というタイトルで書いていた。そこには、トッド氏のインタビューにも言及されていた。

明日、もう少し続ける



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