キッチンはアトラクション〜浅草「ヨシカミ」
5月2日、浅草公会堂「談春五夜」の開幕を控え、早目の夕食。朝から、どこに行こうか検討を重ねたが、結論は洋食の名店「ヨシカミ」、“うますぎて申し訳ないス!!”というコピーの店である。
夕方5時過ぎに到着したが、平日とはいえGW中、店前には数人の人で、20分ほど待つとの掲示。「ヨシカミ」は、店内で名前と人数を申告するシステムなので、入店すると、幸い1人なのでカウンター席が空いていた。
ビールの小瓶を注文し、一応メニューを眺める。“一応”と書いたのは、今日は白身魚のフライにメンチカツをトッピングと決めていたからだ。メンチカツ、コロッケなどは“ちょい足しメニュー”として1個単位で注文できる。
……ところが、卓上に“ヨシカミのおすすめ料理”という小さな紙があり、そこには<ハヤシライスやオムライスだけではありません!>とし、ポークソテイ、ビーフシチュー、ビーフステーキの三品が紹介されていた。
惹かれたのはポークソテイ、<やわらかな豚ロースのステーキ>、<工夫のお醤油ベースで焼き上げます!>、<とても好い香り!>と説明されている。
ここで急遽心変わりし、ポークソテイ、そしてトッピングのメンチカツを注文する。
目の前はオープンキッチン。決して広くはないスペースに、多くの料理人が動き回る。3口ある火元の一つではステーキが焼かれている。肉をトングで挟んで持ち上げ、脂身のところだけをフライパンにあて、脂を流していく。その後、肉を焼き始め、豪快にフランベし仕上げている。
焼き終わったと思いきや、フライパンがあった場所には、奥からビーフシチューの入ったポットが持ち込まれる。仕上げの温めをほどこし、用意してある器に入れていく。
目の前では、ボウルにキャベツなどの野菜が入り、塩をふりかけ少しもみ、ドレッシングと和えている。器に盛り付け、ホワイトアスパラを並べ、マヨネーズを落とし、コンビネーション・サラダの完成である。
こうした名人芸とも言える動き・調理を見ているだけで楽しくなる。GWでなくとも楽しめる、アトラクションである!
私の注文とおぼしきポークソテイは、両面をフライパンで焼き付けたあと、オーブンに投入して熱を入れている。味を想像しながら眺めていると、メンチカツがサーブされる。洋食店には欠かせない、デミグラスソースがかけられている。
小判型のメンチカツは、お箸で食べるのが丁度良く、肉汁とデミグラスがよく調和する。デミグラスは、もちろん変な甘さはなく、凛とした味である。
そして登場したポークソテイ、決して大きすぎないが立派なロース肉。表面はカリッとし、中はしっかりとして歯応え。醤油ベースのソースも主張しすぎず、肉を引き立てる。赤ワインがすすむ。
卓上のカラシを少しつけて味変を楽しむ、うんうん。さらに、メンチカツの皿に残っているデミグラスソースに浸してみる。これもオツである。
外はにわか雨が降ってきたようだ。お店の人は外で待つ人に、「雨の中で待つ必要ないよ。20分ほどしたら戻ってきて」と声を掛けていた。
こうした心遣いも、多くの人を引きつける魅力なのだろう