あらたな物語へ「エヴァンゲリヲン新劇場版」〜“エヴァをめぐる冒険”(その4)

TVシリーズから約10年の時を経て、2007年「エヴァンゲリヲン新劇場版:序」が公開された。繰り返しになるが、当時私はアニメ全体を含め、あまり興味がなかった。詳しいことは初回に記したが、そんな私が今になって改めてTVシリーズから見始めた。

過去の記事:(その2) (その3)

「序」に続き2009年「破」、2012年に「Q」が公開された。今回は、この3作についてである。「エヴァ」シリーズは、1997年の「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」で一旦結末を迎えた。以下、これを旧世紀版とする。

ただそれは余韻を残す終わり方でもあった。したがって、「新劇場版」ができるのは、必然であって、リアルタイムで観ていたファンはさぞかし待ちくたびれただろう。

まず「序」である。これは、意外にも旧世紀版を素直に踏襲したように見えるが、枝葉を刈り込みつつ、分かりやすさも意識して作られている。制作スケジュールに追いまくられたであろう旧世紀版と比べると、当然ながら整理整頓が行き届き、洗練された導入部になっている。アニメとしての品質の向上は言うまでもない。

「破」においては、少し様子が変わってくる。新しいキャラクターの登場、重要な設定の変更など、徐々に旧世紀版から乖離していく。

乱暴な比較をすると、この「破」までが旧世紀版が描いた世界とオーバーラップする。旧世紀版は、ここで物語を一旦完結させるが、新劇場版はその後の世界を表現する。それが「Q」である。

上手いなぁと思うのは、「エヴァ」のような作品においてはオリジナル至上主義的なファンも相応にいると想像され、「序」においてはそうした旧世紀版からのフォロアーをしっかりキープしている。その上で、「破」において新しい物語につなぐためのお膳立てをしっかり整えて、「Q」によって全く新しい次元にテイクオフしている。

「エヴァ」シリーズの予告編で、アスカが「サービス、サービス!」と発するが、庵野光秀は“サービス“精神旺盛な人だと思う。ファンを意識しながら作品を作っている。さわり部分だけが提示され、解答が提示されない多くの箇所も、彼なりのファン・サービスではないか。

旧世紀版という習作を経て、完成形としてサービスが凝縮された作品が新劇場版である。したがって、「エヴァンゲリオン」の世界を体験することは、新劇場版を観ることで実現できる。Amazon Prime Videoで見られることも、メリットかもしれない。

まずは新劇場版を観て、その背景にある、「エヴァ」の世界が出来上がった過程を知りたい人は、旧世紀版を観るというのが良いのではないかと思う。

「Q」によって、物語を閉じるための方向が見え始めてくる。 残るは、「シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇」である


献立日記(2021/10/28)
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