「メディア王〜華麗なる一族」のいさぎよさ〜山崎豊子との差異
米HBO作成のドラマ「メディア王〜華麗なる一族」、エミー賞、ゴールデングローブ賞の様々な部門で受賞を果たしているシリーズ。現在、シリーズ3まで製作され、日本ではU-NEXTで配信されている。(DVDレンタルもあり)
これを観終わって、「いさぎよい」ドラマだと思った。TVチャンネルや、娯楽施設を運営する、メディア・コングロマリットのウェイスター・ロイコ社。その創業者ローガン・ロイを中心とし、その3人の息子コナー、ケンダル、ローマン、そして長女のシヴォーン、そしてそれを取り巻く人々の群像劇である。
ウェイスター・ロイコ社の業界内での地位は盤石とは言えず、常に買収の機会を探ると共に、他社からのターゲットにもなる。こうした企業間買収・投資家との攻防の中にありながら、創業者のローガンは高齢になり、その後継者についても注目の的になっている。
原題は「SUCCESSION」、まさしく企業経営の継承がドラマの中心テーマである。そして、これがまぁー醜い。ローガンは、トップの地位を譲るつもりはサラサラなく、子供たちを上手く利用しながら、企業グループを切り盛りする。
一方の息子と娘は、それぞれの立ち位置を築こうと、互いに牽制しあい、父親とも宥和・対抗の両方を天秤にかけながら行動する。そして、その周囲でうごめく人々、シヴォーンのパートナー、トム。ローガンの甥、グレッグ、ローガンの妻や元妻、そして企業の幹部たちなどなどの思惑。
“華麗なる一族“という表現にはそぐわない、まぁー下品なロイ家の人たち。アメリカの金持ちって、こうもメチャクチャなのかと思っていまう。権力欲ならまだしも、行動に品性のかけらもないのである。まぁ、それがこのドラマの面白さとも言えるし、コメディとして見ることもできる。中でも、三男ローマンのキャラクターが最高で、演じるのはキーラン・カルキン。映画「ホーム・アローン」で子役としてデビュー、主役のマコーレー・カルキンの弟である。
副題も見ると、山崎豊子の「華麗なる一族」を想起する。 こちらも、一代で企業グループを創業した万俵家の物語で、親子の確執もテーマである。何度か映像化もされている。
しかし、「メディア王」は山崎豊子とは全く違う。簡単に表現すると、「いさぎよい」。「華麗なる一族」でも、企業買収や生き残りがテーマとなるが、その裏側にある、企業の戦略、経営者としての事業に対する展望が描かれる。一方、「メディア王」では、経営者として、事業家としてビジネスをどう作っていきたいかは、殆どと言って表現されない。
話題の中心は、「いさぎよい」ほどに個々の欲望であり、ローガン始め企業価値の想像といったことには、興味がないかのようである。ましてや企業の社会的責任などへの関心はゼロである。
気持ちがよいほどシンプルに欲望を全面に出したことが、このドラマの成功の秘訣のように思う。
観て損はないドラマである。ただ、日本人に受けるのか?
私は、ようやくNetflix「ストレンジャーシングス」のシリーズ4、そして「ピーキー・ブラインダーズ」のシリーズ6に進める
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