
手の中の音楽24〜やっぱり「ビーチ・ボーイズ・クリスマス・アルバム」
今年は、映画「ブライアン・ウィルソン 約束の旅路」、旧作ではあるが「ラブ&マーシー」について書いたので、クリスマスを目前にして、ビーチ・ボーイズが1964年にリリースした、「ビーチ・ボーイズ・クリスマス・アルバム」を紹介しよう。
1964年、いわゆる“ブリティッシュ・インベイジョン“で、ビートルズを始めとする英国勢がアメリカのポップ・チャートを席巻する中、ビーチ・ボーイズはアルバム「オール・サマー・ロング」からシングル・カットされた“I Get Around“で、遂にビルボード1位を獲得。
そんな中で、発売されたアルバムである。前年の1963年、フィル・スペクターは名盤「クリスマス・ギフト・フォー・ユー・フロム〜」を制作、ブライアンの自伝「I Am Brian Wilson」<注:英語版から拙訳>によると、スペクターはブライアンにピアノを弾いてみたいかと尋ねる。曲目は“Santa Claus Is Coming to Town“。スペクターは<一つだけ>注文を出し、<強く(Hard)演奏してくれ>。それを受けて、ブライアンはできる限りの力でピアノを弾くが、スペクターからは、<この曲に君は必要ない>と言われる。敬愛するスペクターからの要請に興奮していたブライアンは、当然落胆するのだが、翌年の自身のアルバムへとつながっていく。
1曲目から5曲目までが、ビーチ・ボーイズのオリジナル曲なのだが、これが素晴らしい。これぞブライアン・ウィルソンという楽曲そしてアレンジである。1曲目の“Little Saint Nick“は、ブライアンによると“Little Deuce Coupe“のクリスマス・バージョンだそうである。
そして2曲目の“The Man with All the Toys“は、<サンタクロースを描いた素晴らしい楽曲で、絵葉書のようだ。もしサンタが彼の工房で働いているところを目にしたら、こんな光景が見られるだろう>と自画自賛。その歌詞を自伝に掲載している。
後年、ブライアン・ウィルソンはソロ・アーチストとしてクリスマス・アルバムを出すが、この2曲は再録している。クリスマス・アルバム作りは、ブライアンの好物である。彼とビーチ・ボーイズのメンバーは、少年の頃、クリスマス・キャロルを散々コーラスしている。そんな思い出にもつながるのだろう。
オリジナルに比べると、アナログ盤B面に収録されたスタンダード曲は、やや面白味にかける。これらのアレンジは、フォーフレッシュメンのアレンジャー、ディック・レイノルズに任されていたようだ。ブライアンは、彼と仕事ができたことを喜んでいたようだが、普通によく出来たクリスマス・ソングになっている。
もちろん、全体としては楽しいクリスマス・アルバムであり、私はシーズンに1回はこのアルバムを聴いている。
今年のクリスマスは土・日曜日。明日は鶏を焼きます! Merry Christmas!!
