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「パリ・オペラ座 響き合う芸術の殿堂」〜アーティゾン美術館
ロンドンに長く赴任していたおかげで、欧州の多くのオペラハウスを訪れることができた。ミラノのスカラ座、プラハの3つのオペラハウス、ブダペスト、ウィーン、ザルツブルグ、チューリッヒ、イギリスのグラインドボーンなど。
その中で、圧倒的な豪華さと存在感を示したのはパリのガルニエ宮オペラハウスである。アーティゾン美術館で、「パリ・オペラ座 響き合う芸術の殿堂」という企画展が開催されている。行こうと思いながら、結局最終日ギリギリでの鑑賞となった。(2月5日 日曜日まで)
私の中のオペラは、18世紀後半のモーツアルトやロッシー二以降の作品。その前は、ヘンデルや、グルック、グノーの作品があって、さらに前は多くのイタリア・オペラの作品群。そのようなざっくりとしたイメージである。
展覧会の最初は、パリにおけるオペラの登場。“太陽王“ルイ14世(1638−1715年)が1669年にオペラ座を設立、イタリア・オペラを輸入して上演した。それだけではなく、踊りが得意だった王は、自ら出演した。
その後、19世紀にグランド・オペラという形式が確立、バレエのシーンを含む、豪華絢爛な世界が実現した。ヴェルディは、パリ・オペラ座の以来でオペラ「ドン・カルロ」を作るが、オリジナル版にはバレエのシーンがあった。(今はカットされている)「アイーダ」には、今もバレエ・シーンが残る。
しかし、本当の意味で「総合芸術」になるには、まだ時間が必要で、20世紀になってから、演出家、舞台装置、著名なデザイナーによる舞台衣装がオペラの世界で活躍する。
バレエの変遷についても、触れられている。パリにおけるバレエは、女性ダンサー中心のものになり一時的衰退。そこにディアギレフ率いるバレエ団「バレエ・リュス」が進出してくる。
そうした流れを見つめてきたのが、パリのオペラ座であり、本展は様々な作品・資料で、その軌跡を解説・表現してくれる。そして、数々のパリ・オペラ座の頂点に立つのが、前述のガルニエ宮である。今の天井は、シャガールの素晴らしい絵で彩られているが、展覧会ではルヌヴーによる旧天井画の最終案、現在の天井画の最終習作(1963年)を見ることができる。
また、オペラ座は上演場所というだけではなく、最上流の社交場でもあった。馬蹄形の客席は、“観客“自身が見物されるための仕掛けであり、その姿は美術作品にも残されている。
私は、いまだに馬蹄形の客席でないと、なんだかオペラを観に来た気分にならない。オペラは劇場、フォアイエでの会話やドリンク、着飾った観客なども含めた「総合芸術」である。
あぁー、オペラを観に、ヨーロッパに行きたい!! 目に毒の展覧会でした
(パリのオペラ座を巡って、私の身におきたサプライズに関してはこちらの記事)