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2018年のブルース・スプリングスティーン〜盟友の死・自伝・自伝・そして弾き語り

2009年、ハイドパークでの“歴史的な“コンサートについてずっと書いてきました。正確には、当時書いた記事を再掲してきました。その後はどうなったのでしょう。

スプリングスティーンにとっては、重大なことが起こります。それは、盟友のサックス奏者クラレンス・クレモンズの死です。ブルースのバンド、E Street Bandはこれまでも様々な岐路に直面してきました。

メンバーが年齢を重ねるにつれ、健康問題がクローズアップされるようになります。2008年、オルガン等のダニー・フェデリチが死去します。“4th of July, Asbury Park (Sandy)“のアコーディオンは、彼のシンボリックな演奏で、同年ロンドンのエミレーツ・スタジアムで同曲が彼に捧げられて演奏されました。

そして、クラレンス〜“Big Man“が他界します。ロック史上に輝くアルバム「Born To Run」のアルバム・カバーに象徴されるように、スプリングスティーンの側には常にクラレンスがいました。

こうした悲しみを乗り越えて、“Big Man“が亡くなった翌年、2012年には新作「Wrecking Ball」を発表、サックスにはクラレンスの甥っ子、ジェイクを起用してツアーをスタートします。

さらに、2016年には自伝「Born To Run 」(邦題『ボーン・トゥー・ラン ブルース・スプリングスティーン自伝』は村上春樹も取り上げています)を上梓、その内容も踏まえながら、ブロードウェイでの異例のロングラン公演を始めます。

2017年10月、ニューヨーク、ウォルター・カー劇場で幕を開けたステージ「Springsteen On Broadway」は、ブルース・スプリングスティーンが一人でステージに立ち、アコースティック・ギター一本での弾き語り、曲の合間には、彼の人生における出来事などを話しました。

週5回の公演は1年の限定でしたが、結局1年以上続きました。私は、2018年の5月16日、NY出張の際に観ることができました。チケット転売サイトで相応の値段を払いましたが、不適切な行為とは考えていません。

盟友の死をきっかけに、スプリングスティーンに変化が訪れたように思えます。これまで以上に、先人・友人そして自分の過去に向き合い、将来に向けてそして次の世代に向けて何を伝える必要があるのかを意識し始めたのではないでしょうか。

その一つの表現が、「Springsteen On Broadway」だったと思います。

2011年、クラレンス・クレモンスがバンドを永久脱退した時、スプリングスティーンは61歳でした。私と彼は一回り違いなので、今その歳を迎えています。だから、よく分かるような気がします。六十代に入ったスプリングスティーンは、自分の人生を振り返った上で、発信を始めたのです。


尚、ブロードウェイでの公演の様子は、Netflixで配信されています。また、音源はCD化・配信されています



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