手の中の音楽28〜ジェーン・バーキンの訃報そして「Au Bataclan」の歌声
俳優で歌手のジェーン・バーキンの訃報が流れた。
共同通信の訃報を見ると、歌手・映画監督のセルジュ・ゲンズブールと公私にわたりパートナーで会ったこと、その代表作として映画では「欲望」「ナイル殺人事件」、音楽ではゲンズブールとのデュエット曲“ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ“があげられている。そして、エルメスのバッグ「バーキン」の由来である。
エルメスの「バーキン」、「ジェーン・バーキンが妊娠している時に、赤ちゃんグッズが入れて持っていたバッグだったっけ? いや、それはケリー・バッグだったか」とあやふやになったので確認した。
完全に混同していた。“ケリー“は女優・モナコ公妃のグレース・ケリーが妊娠中にこのバッグでお腹を隠したことから名付けられた。
“バーキン“は、既に出産していたジェーン・バーキンが、細々したものを入れたバスケットを飛行機内に持ち込んでいたところ、中身が機内に散らばってしまった。偶然、隣に座っていたのがエルメスの会長で、バーキンから「乳児のいる母親のためのバッグが欲しい」と言われて作った製品である。
したがって、“ケリー“に比べると、“バーキン“は大ぶりのバッグになった。それにしても、高貴でエレガントなグレース・ケリー、対照的に自由奔放なイメージのバーキン、二人のイメージを見事に製品に反映したエルメスの手腕は流石である。
本題は音楽である。私は、ジェーン・バーキンのアルバムを網羅的に聴いていない。しかし、ある1枚のアルバムは繰り返し聴いていた。それは、「Jane Birkin Au Bataclan」、1987年パリのバタクラン劇場でのライブアルバム。
余談だが、バタクランは1864年にできた歴史的な建造物だが、2015年にテロの標的となった。
例によって、なぜ自分がこの2枚組CDを買ったのか、よく覚えていない。ただ、このライブに収録された全てが良い曲で、表現者としての彼女が堪能できた。私はフランス語をよく解さない。それでも、このアルバムに収められた楽曲は、言葉の壁を乗り越えてきた。
ジェーン・バーキンの歌唱は、“ささやく“といった表現が使われる。それは、“ささやくように歌う“ということだけではなく、聞くもの個人に対してささやかれているような歌なのである。
“Ex Fax Des Sixties"(邦題;想い出のロックンローラー)、"Le Moi et Le Je"、"Quoi‘、“Yestarday Yes a Day“などなど、“あの頃“を思わせる名曲揃い、それらに生命を与えるジェーン・バーキン。スタンダード曲、“Love For Sale“などもバーキンの手にかかると、まったくのオリジナルのように聞こえる。
改めて、このライブ盤のポジションを確認した。彼女は、ゲンズブールと共に7枚のアルバムを作成しているが、このライブは6枚目の作品「Lost Song」(1987年)後のもので、代表的な楽曲を収録している。この後、1990年に「Amours Des Feintes」がリリースされるが、ゲンズブールは翌1991年に他界する。
ただ、私はこうした事情をよく知らず、ただずっとこのアルバムを聴いていた。それで十分だったのである。「Amours Des Feintes」も持っていたが、私にとってのジェーン・バーキンは「Au Bataclan」だけでよかったのだ。
個々の楽曲について、コメントしようかとも考えたが、配信サービスにも乗っているので是非聴いてほしい。時代の“アイコン“的に取り上げられるジェーン・バーキンだが、純粋に音楽を聴いて欲しい。
素晴らしい表現者であることがよく分かる
RIP
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