NICU③|突然の来客
初日の面会を終え、妻を見送り、「幸せな気持ち」で私も帰路に着いた。
しかし、実は息子について一つ “気になること” があった。
それは、息子の “右足の向きが不自然” ということ。
(気のせいだ…)と自分に言い聞かせるが、家に着いても頭から離れず悶々とする。
息子が取り上げられた瞬間の写真をもう一度見ても、やはり変な方向を向いている。
そして思い出せば、息子と初めて対面した時にも、局部はわかるが、なぜか「右足」にもタオルが掛けられていた。
ただの偶然かもしれないが、感動の瞬間の中に、ちょっとした違和感があったことを思い出し、 “何かあるのかもしれない” とさらに疑り深くなる。
そして、やはり気になるので、まず自分で調べてみることにし、
「新生児 足 変形」
と検索を掛けてみたら、真っ先に出てきた病名が一つあった。
[先天性内反足]
という病名だった。
その症状の画像を見たが、 “息子の右足と全く同じ形” をしていた。
さらに深く掘り下げると、
などということも出てきた。
これがもし該当しているのであれば、息子は「二つの先天性疾患」を持って生まれたことになる。
「心臓」と「右足」という二つのハンデを背負って人生を歩んでいくことは、当然親として喜ばしいことではない。
そして、「何ゆえ、この『運命』を背負って生まれてきたのだろう」ということも考えた。
よく「乗り越えられる試練しか、神様は与えない」と言うが、私もそれに縋る思いだった。
ただ、あくまで私が勝手に調べたことであり、これに一喜一憂せず、きちんと医師の見解を聞こうと次の面会時に質問することにした。
そして、一夜明けて8月24日。
この日の面会は、15時頃から行くことになっていた。
そして、そろそろ家を出ようかというタイミングで突然、着信音が鳴る。
兵庫県に住む、私の「叔父」からだった。
(私の叔母(父の妹)の旦那さんである)
(出産のお祝いの電話かな?)と思いつつ、通話ボタンを押す。
「おーう! 今、○○(私の名前)の家の前と思われる所に着いた。家おるか?」
「え!?」
と盛大に声に出して驚いてしまった。
そして、窓から家の外に目をやると、見知らぬ車が一台… 本当に叔父が来ていた。
職業柄、定期的に出張がある叔父ではあったが、流石に「家の前にいる」は予想外だった。
「えーホントにいる! 今から降ります!」
と慌てて、マンションの階段を降り叔父の元へ向かった。
今日は仕事で都内に来ていたとのことだった。
そして、叔父と会うのは数年ぶりで、私たち夫婦の結婚式依頼。
厳密に言えば “私の叔母の旦那さん” であるため、純粋な血の繋がりというのはないが、そういったことは関係なしに、私たちのことをずっと気にかけてくれて、凄く可愛がってくれる叔父である。
そんな “愛と男気溢れる叔父” が、私たちの息子のお祝いで、わざわざ駆けつけてくれたことが、何より嬉しかった。
仕事の合間を縫って来ていたため、5分ほどで仕事に戻ることになってしまったが、息子が手術を乗り越え元気になった時に、改めて会わせたいと心から思った。
そして、叔父を見送り、私も妻と息子の面会に向かった。