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誕生⑦|書類祭り
妻を入院部屋に見送って、息子の状況報告を受けるため、またひとり待合室で待機していた。
改めて、妻も無事である旨を義母を始めとする家族に連絡。
「元は丈夫だから(笑)」
と、義母は笑って返信をくれたが、内心気が気ではなかっただろうと思う。
そして、16時を回ったところで、看護師から伝達を受ける。
「新生児科の医師より説明がございますので、NICUへお入り下さい」
とのことで、体温を測って入室する予定だったが、なんと計測すると「37.8℃」…
私自身、全く体調も悪くなく、特に暑さも感じなかったが、なぜかこの時だけ異常な数値が計測された。
(棟を移動するときにモニターで計った際は「36.2℃」だった)
元気だとしても、病院ルール的に入室は出来ないとのことで、そのまま待合室で新生児科の医師から説明を受けることになった。
・低出生体重児(2,167g)
・新生児呼吸窮道症候群の診断
・完全大血管転位症(ⅰ型)の確定診断
・肺がしっかり膨らまない状態
→気管挿管、人工呼吸管理、[人工肺サーファクタント]気管内投与
・チアノーゼも重度で、[SpO₂]も40%後半(最低80%は欲しい)
・[心室中隔裂開術(BAS)]を行い、酸素、NO吸入療法で対応
■人工肺サーファクタント
未熟な肺に注入されることによって、「肺胞」をしっかりと袋状に維持し、酸素と二酸化炭素を交換することを可能にする。
■SpO₂
心臓から全身に血液を送り出す動脈の中を流れている赤血球に含まれるヘモグロビンの何%に酸素が結合しているか(酸素飽和度)、皮膚を通して(経皮的に)調べた値。
■心室中隔裂開術(BAS)※以下「BAS」
先端にバルーンを取り付けたカテーテルを卵円孔を通して左心房の中まで進め、そのバルーンを膨らませて、勢いよく右心房まで引くことにより、心房中隔の孔を広げる。
この手順により、酸素を豊富に含んだ血液が全身に送り出されるようになる。
やはり、容態は良くなく、「BAS」をやらないと生命維持が難しいということだった。
ただ、妊娠中から「BAS」に関しては、やる可能性は結構高いという見解だったので、一喜一憂はせず、比較的冷静に受け入れていた。
また、医師はしきりに「肺の機能が特に弱い…」と言う。
「早産」でよくあるケースのため、その可能性が高いが、それにしても弱いとのこと。
この時は深く考えなかったが、この「肺の弱さ」が最終的に “息子の命を左右する” ことになってしまう。
BASは本日「18時頃」から行い、手術時間は大体2時間となることを案内され、医師の説明は終了。
また、手術に向けての保護者同意書が必要ということで、さっそく書き始めた。
何十枚もある書類の記載がようやく終わった頃、別の看護師が待合室にやってきた。
「小児循環器科より説明がございますので、案内してよろしいですか?」
とのことだったので了承し、すぐに説明を受けることになった。
出産後は、新生児科もそうだが、手術以降は主に「小児循環器科」で「完全大血管転位症」の経過を見ていくことになるとのことだった。
そして、今回の「BAS」の手術内容と、後日行われる「完全大血管転位症」の手術の説明を改めてして下さったが、この大学病院で話した医師の中で一番説明がわかりやすかった。
この女性医師の方は、非常に人柄が良く、この後の入院生活でも息子に対しても優しく、様々な配慮をして下さった。
(ちなみに最期の「死亡診断及び宣告」をして下さったのもこの医師であり、これもご縁かなとも思う)
「BAS」に対して理解できたことにより、不安も少なからず軽減された上で説明は終了。
そして、また数枚の同意書を書くことに…
書類も書き終え、腱鞘炎になるんじゃないかと思い始めた頃、妻が入院している部屋から看護師が小走りでやってきた。
「奥さまの面会時間が『17時まで』なので、今から行っちゃいましょう!」
時刻は16時25分。
面会時間は「13~17時、1日30分まで」ということで、今がベストということだった。
どうやら、説明が終わるのを遠くからずっと見張っていたようで、終わるや否や速攻で案内しに来たとのこと(笑)
そして、案内されるがまま入院部屋の窓口へ向かった。