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ICU⑧|絶対的信頼


息子の身体を考えると、“古い点滴の管の交換” は避けられない。

これは私も理解していたし、種類は違うがECMO装着時にも古い管の交換自体は経験済みだ。


だが、なぜか今回は “胸騒ぎ” がする…


そしてそれはすぐには消えず、説明を受けながらも悶々としている自分がいた。


「肺から離れている分、影響が出る可能性は低いんですよね?」
「“刺激” というのは、どれくらい身体に影響出るものなんでしょうか?」
「今日行わないと他のリスクも大きいんですよね…?」

自らを安心させるため、いくつも質問をする。
おそらく、これまでで1番多くの質問をしたであろう。

ただただ、“大丈夫” というその言葉が聞きたかったのだ。


また、この日は土曜日ということもあり、万が一の時の体制が整うのかという不安もあった。

これまで、出産や手術、そして離脱時も、“平日と休日では体制の差がある” ことを医療チームからも度々言及されていたこともあり、余計に不安に駆られる。


そんな中でも、医師にも丁寧に1つ1つ回答してもらい、徐々に不安も解消されていったが、私たち夫婦の中で、どうしても “最後の部分” の不安が払拭されなかった。


ただ、正直、その理由は私たちも薄々わかっていた。

“外科医がその場にいない”

ということである。


新生児科、小児科、循環器科、外科、整形外科、看護師… とあらゆる専門家が集結したのが医療チームであり、それぞれが専門の処置をしているのは理解している。

何より、最初から最後まで素晴らしい仕事をしてくれていたのは間違いない。


そして当然、外科医が全ての処置を行うわけではないだろう。

もう、これは “気持ちの問題” だ。

息子の手術前面談の時から、基本的にはずっと外科医から説明を受けており、手術以降も、離脱など “何かしらの処置” を施す時は、いつも必ず外科医から説明を受けていた。

正直、勝手ながら私たち夫婦としても、外科医…  というよりこの1人の医師に「絶対的信頼」を寄せており、今この場にいないことが、どうにもこうにも不安だったのだ。


そんな私たちの不安を察したのか、この日の担当看護師も、

「交換も “痛み止め” も使いながら、万全な体制で対応していきますからね^^」

とフォローをしてくれた。

またその後も、“名前の由来” について聞いてくれたり、コミュニケーションを図ってくれたりしたことで、私たちの心も少しずつ落ち着きを取り戻していった。


落ち着きを取り戻す中で、再び息子にも声をかける。

「凰理、新しい管に交換するからね」
「先生たちを信頼して落ち着いていこうね^^」
「みんなついてるから大丈夫よ」

心のどこかで、自分自身にも言い聞かせていたのかもしれない。

だが、これまでだって、誕生、2度の手術、ECMOの離脱という、幾多の困難や危機に直面しても、息子は全て乗り越えてきた。


(今回もきっと大丈夫…)

そう自らに言い聞かせ、“地に足がつかなくなりそうだった心” を今一度落ち着かせる私であった。



つづく

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