誕生⑧|親となった私たち
NICUに関わらず、基本的に入院部屋に入る際は「体温測定」がある。
例に漏れず、妻の入院部屋に入る際も体温を測らなければならないが、先ほどのようなことが起きるんじゃないかと脳裏をよぎる。
NICUの時は、“医師説明” だったため、待合室でも対応してもらえたが、今回は “面会” であり、しかも本日妻と直接会えるタイミングはもうここしかない。
人生でこんなにも “ビクビクしながら” で体温を測ったことはない。
そして、少し待って音が鳴り、いざ確認してみると…
「36.9℃!!!」
(ほらー! やっぱりさっきのおかしいって!)
と、NICUの体温計が異常だったことが証明できた気がして、少しばかり “勝ち誇った顔” で入室した。
(しかし「37.0未満」が基準値なのでギリギリではある)
そして「17時まで」ということを伝えられ、妻のいるベッドに案内された。
改めて落ち着いた状態での対面。
麻酔以降の感覚の無さ、手術室での女子トーク、生まれる時に「L'Arc〜en〜Ciel」の曲を流してくれたこと…(妻はファン歴 “20年” 以上)
楽しいエピソードも多く、比較的リラックスしていたそうだが、やはり「絶対に生きて帰る」という “強い意志” と “これまでにないほどの覚悟” を持って臨んでいたのことだった。
そして「我が子が産声を上げた瞬間」は、感動のあまり自然と涙が溢れ出てきたようだった。
「心疾患」ということもあり、生まれた瞬間 “声を上げられないんじゃないか?” という不安もあった分、声が聞けて込み上げるものがあったと妻は言う。
命がけで闘ってくれた妻に、夫として、父親として、本当に心から感謝でいっぱいだった。
また、先ほど手術室に迎えに行った際、主治医と看護師から
「生まれた瞬間の写真が撮れなかったみたいで… 申し訳ありません」
と謝罪されていたが、それを妻に言ったところ
「え、写真撮れてるよ?」
と言って、5-6枚ほど「取り上げた瞬間の写真」を見せてもらった。
「帝王切開」のため、私は立ち会いが出来なかったが、妻にとっても “本当に感動の瞬間” だったであろうことが、容易に想像できる。
そして、私が撮った写真や動画も改めて二人で見直し「初めての子どもの『愛おしさ』」を共有し合った。
30分という面会時間の限りがある中で、もう一つ共有しなければならないのが、この後の息子の「手術」。
後の「ジャテーン手術」ほどの大手術ではないものの、新生児という身体ではどんな手術も負担は大きい。
もちろん、お互い不安は0ではない。
しかしながら、激動の日々を闘い抜き、今日無事に出産することが出来た私たちにとって、「息子を信じる」という思いはより強固なものになっており、
「俺たち(私たち)の子は大丈夫!」
と、お互いが一切の疑いもなく、息子を心から信じ切れていた。
そして、その後も将来のことを話したり、時には涙も流しながら、二人でだいぶ長いこと話していたが、気づけば 17時30分となっていた。
私たちは、 “お互いおしゃべり” なため、夫婦の会話が本当に尽きない(笑)
30分も時間超過していたが、おそらく帝王切開当日だったからか、見逃してくれていたのだと思う。
そして、さすがに長居しすぎだなということで、看護師に申し出て入院部屋を後にした。
※妻の「Instagram『出産レポ』」に、手術室内での詳細が書いてあります